Project/Area Number |
22K07559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52030:Psychiatry-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田上 真次 大阪大学, キャンパスライフ健康支援・相談センター, 特任教授 (40362735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉山 顕次 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20426498)
森 康治 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40775318)
池田 学 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60284395)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | アルツハイマー病 / アルツハイマー病バイオマーカー / アミロイドβ42 / APL1β / プレセニリン / γセクレターゼ / タウ蛋白 / アミロイドベータ / バイオマーカー / ガンマセクレターゼ |
Outline of Research at the Start |
プレリミナリーなデータは、AD患者群においてCSF中APL1β28高値群はCSF タウ蛋白がより高い、つまり神経細胞障害の程度が大きいことを示唆している。CSF中APL1β28の値と、採取一定期間後の認知機能低下の程度との間に関連性があれば、CSF中APL1β28を病態進行予測マーカーとして利用できる可能性がある。本研究では、臨床経過を追跡することが可能な症例に関して、CSF採取時から3~13年間後の認知機能 (MMSEやADAS)やCDRの変化を調べ、 CSF APL1β28がアルツハイマー病態進行のバイオマーカーとして有用であるかどうか結論付ける 。
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Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)バイオマーカーとして血液中のAβ42の低下が世界的に注目されている。しかし脳に蓄積し絶対量が増加するAβ42がなぜAD患者の血液や脳脊髄液(CSF)中では低下するか不明であり、血液やCSFでのAβ42の低下が超早期の病態を正確に反映しているとは言い難い。AβはβAPPがBACEとγセクレターゼによる2段階切断を受けて産生される。我々はこの反応はβAPPに限った特異的なものではなく普遍的なものであると類推していた。そしてβAPPファミリー蛋白の一つであるAPLP1がBACEとγセクレターゼによる2段階切断を受けてAPL1βが産生されることを発見した。APL1β分子種のうちAPLβ28産生とAβ42産生との間には正の相関がある。APLβ28はAβ42とは異なり、凝集を起こさない。従って、APLβ28はAβ42を上回る病態診断力を持つ可能性が高い。
CSFバイオマーカ―でAD病理が脳内にあると推定される症例(Aβ42比率減少、タウ蛋白増加、n=~50例)中のAβ42,Aβ40,タウ蛋白、APL1β25,27,28各分子種の定量をELISA法またはLCMS/MSを用いて測定と解析を進めた。重要なことにAD患者CSF中APL1β28と神経変性を反映するタウ蛋白との間に正の相関がある可能性を見出した。一方で同一サンプル中のAβ42とタウ蛋白の間には逆相関の関係にあり、既知のデータと比べて大きな逸脱がないと考えられた。この結果からAD脳内においてAβ42比率の上昇はタウ蛋白量の増加と関連している可能性が示唆された。
さらに研究室が保有するCSFサンプル中でAβ42比率低下なし、タウ蛋白増加なし(脳内にAβ42蓄積もタウ蛋白増加もない、つまりAD病理がない状態)の検体中のCSFバイオマーカーの測定も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度、AD脳内に蓄積しているAβ42を標的として抗アミロイドβ42モノクロナール抗体の投与が開始された。これは革新的な治療であり、その効果が期待されるが、治験結果では認知機能低下を部分的に遅らせるに留まっている。その理由として、いったん蓄積したAβを抗体療法で取り除けたとしても、神経細胞は既に障害されており、十分に回復させることができない可能性があげられている。よって次世代の治験はAβ42が脳内に蓄積し、神経細胞を障害し始める前に予防的介入を行うことでADの発症を遅らせる流れになると予想する。これを実現化するには脳内Aβ42産生の上昇と神経細胞の障害をより早期に捉えられるバイオマーカー開発が必要である。
令和4年度と5年度に行った解析で、CSFバイオマーカーでAD病理が脳内にあると推定されるサンプルで(Aβ42とタウ蛋白の間には逆相関の関係にある(R2=0.3322))、APL1β28とタウ蛋白の間に正の相関がある可能性が示唆されたことは今後の研究の進展において重要なステップであると考える。この結果からAD脳内においてAβ42産生比が上がることでタウ蛋白の増加を促進する可能性が示唆される。
さらに、Aβ42比率低下とタウ蛋白増加がない(脳内にAβ42蓄積がないと推測される状態)CSF検体中のAPL1β28比率とタウ蛋白との間に正の相関がある可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
もし脳内にAβ42蓄積はすでにあるがタウ蛋白の増加はない、つまりプレクリニカルADの段階やさらに遡って脳内AD病変が形成される前(脳内にAβ42蓄積もタウ蛋白増加もない)からAPL1β28とタウとの相関があることが確実であれば、CSF APL1β28バイオマーカーが脳内Aβ42産生の上昇と神経細胞の障害を超早期に捉えることができる可能性を示唆する。つまりこの新規バイオマーカーを用いることにより、ADを超早期に診断できることができるかもしれない。
令和6年度には研究室が保有するAβ42比率低下なし、タウ蛋白増加なし(脳内にAβ42蓄積もタウ蛋白増加もない、つまりAD病理がない状態)、Aβ42比率低下あり、タウ蛋白増加なし(脳内にAβ42蓄積はすでにあるがタウ蛋白の増加はない、つまりプレクリニカルAD病態とみなせる)中のAPLβ分子種の測定を進める。タウ蛋白とMMSEやADAS-J.cogなどの認知機能テストのスコアは負の相関があると予想される。APLβ28比がこれら認知機能テストのスコアと正の相関があるかどうか、ADとMCIで検討する。その他頭部MRIやSPECTなど画像データとも何らかの関連性があるかどうか検討する。
さらに、研究室が有する臨床データベース上で臨床経過を追跡することが可能な症例について、画像診断結果や認知機能検査結果をもとにして、CSF検体採取時より3―13年を経過した後に臨床的にADやADによるMCIを発症したかどうかを検証する。
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