Project/Area Number |
22K07786
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52040:Radiological sciences-related
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
藤田 真由美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (80580331)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 浸潤 / 放射線 / 放射線抵抗性浸潤細胞 / 転移 / 放射線治療 |
Outline of Research at the Start |
これまでの研究にて、ある特定の細胞株では、細胞全体の中に一部「放射線抵抗性浸潤細胞」が存在することを明らかにしてきた。では、放射線に抵抗性で、かつ、浸潤や転移のリスクが高い「放射線抵抗性浸潤細胞」は細胞全体の集団の中でどのように生み出されたのか。「放射線抵抗性浸潤細胞」の起源に関わるメカニズムが解明できれば、放射線に対する抵抗性や浸潤・転移の抑制につながる重要な基礎データを取得することができると期待できる。本研究では「放射線抵抗性浸潤細胞」の出現でキーとなる因子と機序を調べ、その過程をブロックすることで「放射線抵抗性浸潤細胞」の出現を抑制する方法を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、特定の癌細胞株では、細胞全体の中に一部、放射線に抵抗性で、浸潤や転移能力が高い「放射線抵抗性浸潤細胞」の集団が存在することを見出した。では放射線治療でリスクとなり得る「放射線抵抗性浸潤細胞」は細胞全体の集団の中で、どのように生み出されたのか?本研究では、「放射線抵抗性浸潤細胞」の出現でキーとなる因子を明らかにするため、TCAサイクルの中間代謝産物に焦点をあて研究を行っている。具体的には、①浸潤能力や放射線抵抗性の獲得を促すTCA中間代謝産物を特定する、次に②特定されたTCA中間代謝産物による性質転換(浸潤能力や放射線抵抗性の獲得)に エピゲノムの変化が関与していたか明らかにする。さらに、③細胞の性質転換(浸潤能力や放射線抵抗性の獲得)でキーとなるTCA中間代謝産物の蓄積は、実際にこれまで見出してきた「放射線抵抗性浸潤細胞」で確認されるか明らかにする。2022年度(初年度)は、①を明らかにすべく実験を行った。ヒト乳癌細胞株6種、ヒト膵癌細胞株6種を比較し、浸潤能がほぼ確認されない細胞株4種(MCF7、BT474、TCCPAN2、Suit2)を対象に実験を行った。それら細胞に3種類の代謝産物を24h又は48h添加した結果、ある代謝産物を添加すると、全体の中に一部、浸潤能力を有する細胞集団が出現することを見出した。すなわち、その代謝産物は、元々浸潤能力がほぼなかった細胞集団に何らかの影響を及ぼし、結果として、一部の細胞に浸潤能を獲得させるという性質転換を促すことが示唆された(代謝産物の名称は未発表のため明記を控える)。また、浸潤能を獲得した細胞集団を単離し放射線を照射したところ、元々の集団よりもX線に対し抵抗性を示すことを見出した。よって、この代謝産物は、浸潤能力が高く放射線に抵抗性を示す「放射線抵抗性浸潤細胞」を生み出すキー因子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度(2年目)は、②で特定された代謝産物が「放射線抵抗性浸潤細胞」を生み出す際、その性質転換(浸潤能力や放射線抵抗性の獲得)にエピゲノムの変化が関与していたか明らかにすることを目的とし研究を行なった。2021年度に用いた4種類の細胞株のうち、特に代謝産物による性質転換(浸潤能力や放射線抵抗性の獲得)が顕著に確認されるSuit2細胞を用い実験した。まず、Suit2に代謝産物を24h添加し、浸潤能力や放射線抵抗性を獲得した細胞集団(「放射線抵抗性浸潤細胞」)をトランスウェルから単離した。元々の細胞集団と比較して、代謝産物により出現した「放射線抵抗性浸潤細胞」では実際にエピゲノムが変化しているか調べるため、遺伝子の転写調節で重要なプロモーター領域のCpG Islandに焦点をあて、そのメチル化状態が変化するか網羅的解析を行った(Human RefSeq Promoter Array, Arraystar Inc)。その結果、代謝産物により出現した「放射線抵抗性浸潤細胞」では、解糖系の亢進を促す遺伝子や、細胞浸潤で必須となる細胞骨格を調節する遺伝子群、癌細胞の転移促進因子として同定されている遺伝子、さらに、ストレスタンパク質や抗酸化反応で必須となる遺伝子等のプロモーター領域でメチル化が有意に低下することがわかった。すなわち、代謝産物を添加することにより、実際に浸潤や放射線抵抗性で重要となる遺伝子群のプロモーター領域のエピゲノム状態が変化(CpG Islandのメチル化が低下)し、それにより、それら遺伝子群の発現がオンになり、結果として細胞は浸潤能力や放射線抵抗性を獲得していることが示唆された。 本研究により、代謝産物を介した「放射線抵抗性浸潤細胞」の出現過程にはエピゲノム変化が関与することが見出された。よって、「研究は概ね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度(最終年度)は、2021, 2022年度で明らかにしてきた ③細胞の性質転換(浸潤能力や放射線抵抗性の獲得)でキーとなるTCA中間代謝産物の蓄積が、実際にこれまで見出してきた「放射線抵抗性浸潤細胞」で確認されるか明らかにする。申請者はこれまでに、放射線照射は大多数の細胞株の浸潤抑制に効果的であるが、PANC-1などの特定の細胞株では放射線照射後に浸潤細胞の数が増加することを明らかにしてきた。それら細胞株では、細胞全体の中に放射線に抵抗性で、かつ、浸潤や転移のリスクが高い「放射線抵抗性浸潤細胞」の集団が存在し、照射後にそれらが選択的に生き残ったために、全体として浸潤細胞の数が上昇していたことが示唆された。本研究にて、この「放射線抵抗性浸潤細胞」の性質の獲得には、ある代謝産物がキー因子であることを明らかにしてきた。実際にこの代謝産物が「放射線抵抗性浸潤細胞」の性質維持に関わっているのであれば、PANC-1に存在する「放射線抵抗性浸潤細胞」でもその代謝産物が産生されていると考えられる。仮に「放射線抵抗性浸潤細胞」で特異的にその代謝産物が産生されていた場合、この代謝産物を産生しないよう、その合成酵素を阻害することで、「放射線抵抗性浸潤細胞」を悪性度の低い非浸潤性の性質に変化させることが可能かもしれない。来年度はPANC-1の「放射線抵抗性浸潤細胞」を用い、対象の代謝産物の産生量を調べる。元々の集団と比較し「放射線抵抗性浸潤細胞」の集団で特異的にその代謝産物の量が多かった場合、その合成酵素を阻害することで、「放射線抵抗性浸潤細胞」の性質を非浸潤性の性質に戻すことができるか検証する。これらの解析により、本研究課題の目的である「放射線抵抗性浸潤細胞」の出現でキーとなる重要因子を明らかにし「放射線抵抗性浸潤細胞」の出現を抑制する方法を提案することができる。
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