Project/Area Number |
22K08160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 53020:Cardiology-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山本 英一郎 熊本大学, 病院, 講師 (50573614)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 肺高血圧症 / 血管内皮機能 / 一酸化窒素 / 肺循環 |
Outline of Research at the Start |
我々は血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)機能異常であるeNOSアンカップリングが酸化ストレス産生を介し様々な心血管病に関与することを基礎的に証明してきた。 難病である肺動脈性肺高血圧症の病態機序にeNOSアンカップリングが関与することが示唆されるため本研究では肺動脈性肺高血圧症モデル動物を用いてeNOSアンカップリング改善薬:BH4を投与するin vivo基礎実験とともに、ヒト肺動脈性肺高血圧症でのeNOSアンカップリングによる血管内皮機能障害の関与を各種バイオマーカーを用いて臨床的に検討し同疾患への新たな治療法の確立に寄与することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究①:WTマウスとASK1-/-マウスの大動脈より初代培養した血管内皮細胞に、アンジオテンシンⅡ(AⅡ)を添加してウェスタンブロッティングを中心に生化学的に検討するin vitro研究をおこない、結果AⅡ添加によりWTでは、血管eNOSのダイマー/モノマー比が有意に低下しeNOSアンカップリングが惹起されるが、ASK1-/-の内皮細胞ではAⅡ添加によってもダイマー/モノマー比に変化はみられなかった。また、野生型の血管内皮細胞では、ウェスタンブロッティングで測定したDHFRタンパク量も減少しており、この変化はASK1-/-マウスからの内皮細胞ではみられなかった。 これらはつまりAⅡはASK1を介しDHFR低下によりeNOSアンカップリングを呈することを示している。 研究②:eNOSアンカップリング改善薬としてBH4製剤(塩酸サプロプテリン)を肺高血圧症モデルラットに投薬し改善効果を検証したところ、肺高血圧症モデルラットで上昇していた右室重量と、肺組織の病理所見の改善所見を認めた。 研究③:心不全のないコントロール患者にくらべて、肺動脈性肺高血圧(PAH)患者ではReactive Hyperemia Index(RHI)値測定による末梢血管内皮機能の有意な障害を認めた。また、PAH患者を対象に、右心カテーテルによる心内圧測定時に、肺動脈(PA)と体循環の大腿静脈(FV)から採血し専用の測定器で酸化ストレス(ROS)のマーカーとしてDROM値を測定したところ、FVにおけるDROM値が上昇していた。つまり、PAH患者における肺循環での特異的なROS産生が示唆される。 これらを統合して考えると、PAH病態においては、肺動脈血管内皮細胞でeNOSアンカップリング現象が起こっており、これによりsystemicなROSの上昇と末梢血管内皮機能も障害されていることが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り基礎研究と臨床研究を並行して推進している。しかし、いずれの研究においてもまだ十分な症例数、サンプル数を担保しているとはいえず、さらに研究を推進し症例数を重ねていく必要がある。 さらに研究②においては、使用した肺高血圧症モデルラットにおいて安定確立した肺高血圧症を呈しておらず、完全なPAHモデルとはいいがたいため、現在他のPHモデル動物を用いても同様の検討を行い検証を行っている。 研究③においては特発性肺動脈性肺高血圧症患者のみでは稀少疾患のためサンプル数をえるのが極めて困難なため、ほかの疾患関連性肺動脈性肺高血圧症(APAH)にも症例を広げて検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の基礎検討では、まずVEGF受容体拮抗薬と低酸素負荷にてplexiform lesionを含むヒトの病理像を反映するPAHモデルを用いたが、PAHは多彩な原因と病理病態をもつことが知られているため、肺高血圧症を惹起する特定の薬剤を経口摂取させてPAHを誘導させたモデルマウスを用いて、同様のPAHモデルマウスを作成し今後も検証をおこなっていく。これらのモデルでも同様にeNOSの機能不全であるeNOSアンカップリングの関与が示唆された場合、特定のPAHのみならず広くPHが関与する多くの病態にeNOSアンカップリングが関与することが示唆される。また、新規治療薬が待望されているPAHにおいて、eNOSアンカップリングへの介入が既存のNO吸入療法やプロスタサイクリン誘導体、PDE5阻害薬といったNO産生を上昇させ肺血管抵抗を改善させる治療法よりも効率的な治療法となり、塩酸サプロプテリン(BH4製剤)が新規治療薬として応用されることを証明したい。 また、これらNOに介入する治療へのresponder例の抽出のために、今回の臨床的検討で、PAH患者肺循環でのROS増加(DROM上昇)や末梢血管内皮機能低下が指標になることを証明したい。ひいては難治性疾患であるPAHにおけるよりよい治療法の確立に本研究によって寄与したい。今後は症例数を増やしより信頼性のあるデータを担保し、上記の研究目標にむけて研究を推進していく。
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