Project/Area Number |
22K08527
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 54020:Connective tissue disease and allergy-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉本 桂子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (20383292)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / BAFF / B細胞分化 / 低分子化合物 / B細胞 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、自己免疫疾患であり国の指定難病である全身性エリテマトーデス(SLE)の病態の根幹を担うB細胞を標的とした経口治療薬の開発を目指して、申請者が所有するB細胞活性化因子(BAFF)がその受容体であるBR3に結合することにより惹起される細胞内シグナルを阻害する低分子化合物BIK387を用いて、B細胞分化に関わる治療標的分子の探索を実施する。本研究の成果は世界初の経口剤によるSLE治療を可能にし、これまで免疫抑制剤に頼っていた免疫難病の新規治療薬の創製に大きく貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は国の指定難病である難治性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に深く関わるとされるB細胞の機能異常に着目し、その機能の是正作用を有する経口治療薬の開発目指す研究である。具体的には研究グループが所有するBAFF阻害作用を有する低分子化合物BIK387を用いてその標的分子を探索し、新たな治療標的を同定することを目的としている。SLEの病態の中心は機能が亢進したB細胞であることが推測されている。このような背景からB細胞機能亢進を抑制する治療法が有効であると考えられ、研究グループが所有するBIK387を用いたB細胞機能亢進機序の解明は、リバーズトランスレーショナルリサーチとしても重要な意味を有する。R4年度までに1)B細胞からの抗体産生機能に対するBAFF刺激を受けた単球の関与、2)BIK387経口投与マウス脾臓でのB細胞および形質細胞の割合減少と細胞からの抗体産生能の抑制、3)B細胞刺激を受けたヒトPBMCに対し、細胞増殖、IgG産生、形質細胞分化の抑制作用を示した。これらの結果よりB細胞の機能亢進にはB細胞そのものの活性化に加え、BAFF受容体を介した単球の活性化によるB細胞の活性化機構が寄与することが示唆された。そこでR5年度は次の項目を実施した。1)BIK387投与病態モデルマウス(ループス腎炎モデルマウス)脾臓リンパ球でのBAFFによる細胞増殖作用、2)B細胞刺激を受けた健常人および患者PBMCに対するBIK387の抗体産生および細胞分化への影響検証、3)BAFF刺激を受けたヒト末梢血細胞でのイオンチャンネル発現解析とNavチャンネル阻害剤の影響。これらの検討結果により、BIK387投与マウスの脾臓細胞およびヒトPBMCにおいてBIK387はBAFFによるB細胞の分化の抑制に作用点を有し、その機構にはイオンチャンネルの関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLEは病因性の多彩な自己抗体の出現により、これらの抗体が関与する免疫複合体による全身性の炎症病態が患者のQOLの低下を引き起こす予後不良の難治性自己免疫疾患である。その病態の中心は機能が亢進したB細胞であることが推測されている。このような背景からB細胞機能亢進を抑制する治療法が有効であると考えられ、研究グループが所有するBAFF阻害作用を有するBIK387はSLEにおけるB細胞機能亢進機序の解明にとって強力なツールとなる。これまでの研究でSLEの重篤な病態を代表するループス腎炎モデルマウス(MRL/lpr、NZBWF1)に対し、BIK387を投与した場合、血清中の抗dsDNA抗体価上昇抑制作用が明らかとなった。本研究は、BIK387の作用機序を解明し新たな治療標的分子の同定を目的としている。本年度はこれまでの研究に加え、in vitroでのBIK387のB細胞分化抑制機構を病態マウスおよびSLE患者細胞を用いて検討を加えた。具体的には下記の知見を得ることに成功した。1)BIK387投与病態モデルマウスの脾臓細胞のBAFFによる増殖抑制、2)健常人およびSLE患者(初発)のPBMCへのB細胞刺激下におけるIgG産生抑制、形質芽・形質細胞への分化抑制とB細胞分化関連転写因子の発現抑制、3)SLE末梢血B細胞でのイオンチャンネル発現亢進およびB細胞刺激によるIgG産生に対するイオンチャンネル(Navチャンネル)阻害剤による抑制効果。これらの結果からBIK387のB細胞分化抑制作用は分化関連転写因子発現抑制を伴うもので、その機構にNaチャンネルの関与が示唆された。よって本研究は順調に進行していると考える。今後はこの詳細を明らかにするため、分子レベルでの解明を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、ヒト末梢血単球上にはBAFF受容体(BR3)の発現があり、BAF刺激を受けた単球でのNavチャンネルの発現亢進を見出した。BIK387はBAFFによるNavチャンネル発現亢進を抑制することからBIK387のBAFFシグナル阻害作用にはNavチャンネルが関与していることが示唆される。さらにSLE患者末梢血単球やB細胞におけるNav1.7発現が健常人と比較して有意に亢進しており、刺激を受けたB細胞からのIgG産生に対し、Navチャンネル阻害剤が抑制的に作用する知見を得ることに成功した。これらはBAFFによる形質細胞分化機構にはNavチャンネルを含む複数の経路が関与している可能性を示唆している。これらの成果を元に次年度は次の計画を実施する。1)正常マウスおよびSLE病態モデルマウスへBIK387を投与し(腹腔内および経口)、脾臓リンパ球を用いたin vitroでのB細胞分化誘導試験により得られた細胞群の遺伝子発現に関する詳細解析、2)健常人およびSLE患者PBMCを用いたB細胞分化誘導試験で得られた細胞での遺伝子発現の相違の検証、3)BIK387およびNavチャンネル阻害剤存在下での健常人およびSLE患者PBMCを用いたB細胞分化試験での細胞における遺伝子発現解析、4)健常人群と患者群で得られた形質細胞において相違が認められた分子について患者臨床情報との相関解析、5)BIK387およびNaチャンネル阻害剤存在下で分化誘導されたヒト形質細胞での遺伝子発現解析。これらの成果によりBIK387およびNavチャンネル阻害剤をツールとして用いて、SLE病態における形質細胞分化機構の主要分子を探索し、病態と関連する新規治療標的の同定が可能となる。
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