一細胞レベルで肝細胞の局在と機能の関係を明らかにし、肝糖代謝に新知見を加える
Project/Area Number |
22K08619
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 54040:Metabolism and endocrinology-related
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤本 真徳 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (60835081)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 知明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50447299)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
|
Keywords | 空間的遺伝子発現解析 / 一細胞解析 / 糖新生 / 肝臓 / 細胞間相互作用 / 肝糖代謝 / single cell RNA-seq解析 / 肥満2型糖尿病 / Visium |
Outline of Research at the Start |
肝臓における糖新生亢進は、肥満糖尿病における主要なインスリン抵抗性病態基盤であり、重要な治療標的となる。研究代表者は、マウス肝臓組織のsingle cell RNA-seq解析により、2型自然リンパ球を活性化させることで肝糖新生抑制機能を介して、生体の血糖改善作用を引き起こす機序を明らかにし、特定の肝細胞クラスターがG6pcを含む糖新生酵素群を極めて高いレベルで発現し、免疫細胞と強く相互作用する知見を得た。本研究では、シングルセル解析を用い、Visiumという新しい技術を用いることで、糖代謝制御に重要な肝細胞クラスターの制御メカニズムや起源・特性などを明らかにし肥満糖尿病の新規治療を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓の糖新生亢進は、肥満糖尿病におけるインスリン抵抗性の主な病態基盤であり、重要な治療標的である。肝細胞は均一ではなく、機能的に多様な集団に分かれるが、一細胞レベルでの理解は不足している。私は以前の研究で、マウス肝臓組織のsingle cell RNA-seq解析を通じて、2型自然リンパ球を活性化させることで糖新生を抑制し、生体の血糖改善作用を引き起こす機序を明らかにした。これにより、糖新生酵素を高レベルで発現する特定の肝細胞クラスターが同定され、これらの細胞が免疫細胞と強く相互作用することが判明したが、これらの細胞クラスターの制御メカニズムや特性はまだよくわかっていない。
この研究の目的は、新しい空間的遺伝子発現解析手法を用いて、糖新生に関与する肝細胞クラスターの位置や周囲の細胞との相互作用を基に、その制御メカニズムを明らかにすることである。成果はシングルセル解析に基づく新しい病態生理の理解につながり、未知の肝細胞クラスターを対象とした新たな治療標的の開発に貢献する可能性がある。
当該年度の具体的な成果は以下である。複数の10x Visium公開データの二次解析を注意深く行い、肝細胞の観察には有用であることが明らかになったが、一方で計画していた細胞間相互作用を解析するうえで解像度が不十分という問題点もまた明らかとなった。そのため、研究の比重を修正し、解像度が高く細胞の定義が確実に行えるsingle cell RNA-seqのデータ解析を主体とし、空間的遺伝子発現解析はそれを補完する形で用いることとした。また、SCENIC(転写因子解析)、CellChat、CellphoneDB(相互作用解析)の解析精度を上げることに多くの時間を費やし、解析精度と得られる情報量を向上させた。これにより肝臓組織の肝細胞や免疫細胞などの転写因子活性や相互作用を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝臓における糖新生亢進は肥満糖尿病の病態の基礎であり、糖新生亢進に続く血糖上昇は各種合併症の進展を招く。肝臓は局在と機能に密接な関連があり、申請者がこれまで行ってきた、肝臓組織細胞の一細胞解析(single cell RNA-seq; scRNA-seq)からも、古典的に良く知られた糖新生機能と局在との強い関連を認めている。従って、局在と機能を紐づけしたまま解析する、空間的遺伝子発現解析の意義は大きい。申請者は空間的遺伝子発現解析(10x Visium)の条件検討、データベースを参照した解析などを行ってきた。ただ一つの問題点として、10x Visiumで得られる情報の解像度が、scRNA-seqでの解像度ほど高くないため、免疫細胞のannotationがしにくいという問題点に直面した。申請者が考える免疫細胞を含む細胞種と、特定の肝細胞の相互作用を検討するうえで、解像度は非常に重要である。このため、10x Visiumの情報を用いるが、よりscRNA-seqのデータに重点を置いた解析をすることとした。特に今年度習得した転写因子解析(SCENIC)は、発現情報をもとに上流の転写因子活性を予測する手法であり、一細胞の発現情報から転写因子活性を予測するとても有用な手法である。これまでに習得した10x Cellrangerによるmapping, 発現解析、gene ontology, 相互作用解析のツールに加え、この転写因子解析を組み合わせ、scRNA-seqから得られる情報を最大化している。これらの技術の習得に多くの時間を要してきたが、この一年も着実に多くの技術を習得し、より多くの深い情報を得ることができるようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
さらに肝臓組織を用いた空間的遺伝子発現解析の検討や、肝臓組織を用いた多くの空間的遺伝子発現解析を行ってきた。一細胞レベルのmotif解析、相互作用解析、転写因子解析などを、自身のデータセットや、公開データセットを用いて解析してきた。今年度は、applicationをさらに増やすというよりもむしろ、scRNA-seqにより得られる高解像度の情報を、最大限生かし、多くの情報を取得するための技術をさらに向上させ、新規性の高い知見に結び付ける予定である。
|
Report
(2 results)
Research Products
(4 results)