Project/Area Number |
22K08788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 55020:Digestive surgery-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲垣 奈都子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00611419)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 肝疾患 / リン脂質 / 多価不飽和脂肪酸 / 肝臓 / 急性肝障害 / 慢性肝障害 / 再生 / 肝再生 / 急性肝疾患 / 慢性肝疾患 / 生体膜 |
Outline of Research at the Start |
肝臓は、糖代謝・アミノ酸代謝、胆汁酸の産生、解毒作用といった多様な働きに加え脂質代謝に必須かつ中心的な臓器である。リン脂質は、生体膜の主要構成成分であるだけでなく、様々な生命現象に関与していることが明らかになってきた。近年、生体膜を形成するリン脂質を合成する責任酵素が同定され、リン脂質組成を直接制御することが可能になった。本研究では、ほ乳類が自ら合成できないため食餌からの摂取が必要な多価不飽和脂肪酸に着目し、多価不飽和脂肪酸含有リン脂質を制御するリゾリン脂質アシル転移酵素を用いて、肝疾患ならびに肝再生における多価不飽和脂肪酸含有リン脂質の役割を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
生体膜リン脂質は、生体膜の主要構成成分であるだけでなく、様々な生命現象に関与していることが明らかになってきた。リン脂質はde novo経路(Kennedy経路)と脂肪酸鎖リモデリング経路(Lands回路)により生合成される。この2つの経路を介してリン脂質は多様性やsn-1,2位の非対称性を獲得する事ができる。2000年代に入って、ようやくリン脂質を合成する責任酵素群が同定された、リン脂質組成を直接制御することが可能になった。生体膜リン脂質合成酵素の生理学的意義については近年急速に明らかになりつつあるが、病態形成において果たす役割に関しては不明な部分が多い。 肝疾患には,慢性肝障害,急性肝障害,肝炎,肝硬変,肝がんなどが挙げられる。急性肝障害の原因として,急性のウイルス性肝炎や薬物性肝障害がある。薬物性肝障害を引き起こす薬物・毒物としては,アセトアミノフェン,ハロタン,鉄化合物,イソニアジド,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),薬用ハーブ,栄養補助食品などがある。その中でも,欧米では,アセトアミノフェン誘発急性肝障害の発症頻度が最も高く,重篤な場合は急性肝不全に陥ってしまう。現在のところ,肝移植以外は確立された救命手段がないため,医学的かつ社会的にもアセトアミノフェン誘発急性肝障害は問題視されている。 本研究を通して、多価不飽和脂肪酸含有リン脂質を制御するリゾリン脂質アシル転移酵素を用いて、肝疾患における多価不飽和脂肪酸含有リン脂質の役割を明らかにする。作成した肝臓特異的多価不飽和脂肪酸欠損マウスでは、アセトアミノフェン投与による急性肝障害を緩和することを見出し、今年度、国際学会発表、総説および学術論文として発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cre/loxPシステムにより作成した肝臓特異的多価不飽和脂肪酸欠損マウスは、生理条件下では、脂質組成の変動以外は、肝障害など特筆すべき点は認められなかった。このマウスに、急性肝疾患や慢性肝疾患などの様々な肝疾患を引き起こし、PUFAが関与する肝疾患を網羅的に調べた。その結果、急性肝障害がPUFAと関連がある可能性の高い病態候補として絞ることができた。 肝臓特異的多価不飽和脂肪酸欠損マウス群では、コントロール群と比較して,アセトアミノフェン急性肝障害による死亡が抑えられた。高速液体クロマトグラフィー質量分析計、高速ガスクロマトグラフィー質量分析計やイメージングMS などを用いて、肝臓をはじめ他臓器のリン脂質の組成変化や関連代謝産物のリピドミクス解析を行い、その病態発展・進行機構を明らかにした。アセトアミノフェン誘発急性肝障害を緩和する理由として、対照群に比べGSHレベルが高いため,GSHがNAPQIに結合し,その結果,活性酸素の産生が減少し,酸化リン脂質の産生が抑えられたと考えられた。 急性肝障害における多価不飽和脂肪酸含有リン脂質の役割を明らかにすることができたため、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、急性肝障害以外にPUFAと関連があることを示唆されるデータが得られた肝疾患について、その病態発展・進行機構を解明していく。高速液体クロマトグラフィー質量分析計、高速ガスクロマトグラフィー質量分析などを用いて、肝臓をはじめ他臓器のリン脂質の組成変化や関連代謝産物のリピドミクス解析やプロテオミクスなどの解析手法も組み込、明らかにしていく。 本研究成果は、国内国外問わず学会発表にて報告するとともに、学術論文としての公表を目指す。
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