Project/Area Number |
22K08801
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 55020:Digestive surgery-related
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西田 尚弘 大阪大学, 大阪大学医学部附属病院, 特任講師 (50588118)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 浩文 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30322184)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | 上皮間葉移行 / ARC遺伝子 / 内在性レトロウイルス配列 / 上皮間葉転換 / 大腸癌 |
Outline of Research at the Start |
ヒトゲノムには、5~8%の内在性レトロウイルス (Endogenous retrovirus: ERV) の配列が存在することが知られているが、それらの機能に関しては不明な点が多い。本研究では、これまでほとんどわかっていなかった内在性レトロウイルス粒子が関わる細胞間コミュニケーションとその癌進展機構への関わりを明らかにし、大腸癌を始めとする固形腫瘍における革新的な治療開発へと展開する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に神経系細胞に多く発現し、生理的にはシナプスにおける神経伝達に関わる遺伝子であるARC (Activity Regulated Cytoskeleton Associated Protein) の癌進展との関連を調べ、新たな治療開発へと応用することを目的としている。ARC遺伝子はその一部にウイルス粒子を形成するGag蛋白をコードする塩基配列を含むことがわかっており、再生されるウイルス粒子がARCの癌進展における機能にどのような影響を与えるかを調べることも重要な課題と考えられる。 本年度は、レンチウイルスを用いてARCの強制発現やノックダウンの発現操作を行った癌細胞を用いて、薬剤耐性や癌の浸潤能といった癌進展に関わる様々な機能解析をin vitroで行うことで、ARCが癌細胞に与える機能的な影響の詳細を明らかにした。さらに、ARCの遺伝子発現変化による細胞の遺伝子プロファイルの変化に関して、RNAシークエンスを用いた網羅的解析を行い、ARCによってもたらされる細胞内でのシグナル伝達の変化を解析することに成功した。 また、上皮間葉移行 (Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT) は癌細胞の浸潤、転移において中心的な役割を果たす重要な形質変化であるが、ARC遺伝子の発現変化によってEMT関連分子の発現や細胞内での局在がどのように変化をするかを様々な実験系を用いて詳細に明らかにした。 次のステップとして、実際の大腸癌臨床サンプルにおけるARC遺伝子の発現状態とその臨床病理学的因子、さらには予後への関わりを明らかにするために、サンプルの準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回研究対象としているARC遺伝子を恒常的に発現抑制するためのshRNAベクター 、並びにレンチウイルスによる強制発現ベクターを作成し、遺伝子発現変化前後の網羅的トランスクリプトーム解析を行い、ARCの発現操作による遺伝子プロファイルの変化を解析、その結果、当初の予想通り、上皮間葉移行 EMT関連遺伝子の有意な発現変化が見られることを確認した。 ARC遺伝子とEMTとの関連をさらに深く調べるために、サイトカインTGFB暴露によってin vitroでEMTを誘導した癌細胞に対して、ARCの発現抑制を行うことで、一旦は誘導されたEMTが解除されることを明らかにした。またARC発現操作が癌細胞に与える形質変化として、薬剤耐性、遊走、浸潤能ならびに増殖能に関して調べることで、ARC発現が癌の進展に関わることを明らかにした。 さらに、in vitroで細胞の蛍光免疫染色を用い、ARCの強制発現、発現抑制によって癌細胞における 上皮マーカーE-cadherinや間葉系マーカーZEB1などの遺伝子発現の変化を調べ、実際の細胞内でのこれらの分子の発現変化、局在の変化を明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
腫瘍組織における遺伝子発現に関しては部位によって不均一性があり、腫瘍先進部、いわゆるinvasive front ではEMTを誘導するような癌微小環境が形成されると考えられるが、その詳細なメカニズムは不明な点が多い。今回着目する遺伝子ARCが、癌微小環境の中でどのように機能するかを詳細に調べるために、癌細胞を様々な細胞環境(低酸素、低栄養状態ならびにEGFRやTGFBなどのサイトカイン存在下)に暴露し、ARCの発現変化を調べることで、ARCの癌組織局所での機能を明らかにするとともに、周囲の細胞に与える影響を明らかにする予定である。 in silicoでは、すでに取得しているRNAシークエンスのデータを用いて、遺伝子ネットワーク解析を行う。これまでの基礎データで、ARC発現がTGFB経路に影響を及ぼすことがわかっているため、TGFBシグナル経路との関連を中心に調べる。 また消化器癌臨床検体とそれに対応する正常組織に対してトランスクリプトーム解析並びに免疫組織学的染色により調べ、臨床病理学的因子、予後、化学療法耐性との関連を明らかにすることを計画している。標的遺伝子の発現と発癌・癌進展との関連が明らかとなれば、この遺伝子の治療標的としてのproof of concept を取得することができるのみならず、これを癌の早期診断や、化学療法効果判定などのための有用なバイオマーカーとして活用することも可能である。
|