Project/Area Number |
22K08972
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 55040:Respiratory surgery-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大角 明宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (90829574)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 肺移植 / 体外肺灌流 / 好中球細胞外トラップ / ネトーシス / マージナルドナー肺 |
Outline of Research at the Start |
移植に適しているか判断が困難な摘出肺を、体外肺灌流システムが諸外国で行われ、肺移植件数の増加に寄与してきたが、改善に向けた試みは実臨床では行われていない。近年、好中球が核内のクロマチン、すなわち細胞外トラップを細胞外に放出して細胞死に至るネトーシスという新しい細胞死が発見された。本研究では、肺移植後の虚血再灌流傷害に対するネトーシスの関与について検討し、移植後の成績が改善されるかを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
移植医療においてドナー臓器不足は日本と同様、諸外国でも喫緊の課題である。ドナー肺の増加を目的として、移植に適しているか否か判断が困難な摘出肺(マージナルドナー肺)の利用が、その一助となっている。欧米諸国では、摘出したドナー肺を体外で換気・灌流することで移植に用い得るか否か判断する体外肺灌流システム(Ex vivo lung perfusion:EVLP)が広く行われ、肺移植件数の増加に大きく寄与してきた。しかし評価はできるものの、グラフトの回復や治療に向けた試みは実臨床では行われていないのが実情である。また、肺移植後の成績は他の固形臓器と比較して明らかに不良であることは、ドナー不足とともに重大な課題でもある。本研究では、この肺移植医療の現状に着目し、小動物EVLPを用いて、グラフト機能の評価のみでなく、改善を目指した研究を行う。近年、好中球が核内のクロマチン、すなわち細胞外トラップ(Neutrophil extracellular traps:NETs)を細胞外に放出して細胞死に至るネトーシスという新しい細胞死が発見された。今回我々は、ドナー肺におけるネトーシスという新しい概念に着目した。我々は既に、ラットを用いたEVLPおよび移植実験モデルを確立・報告している。本研究では、ラットEVLPおよび移植モデルを用いてNETsの動態を評価し、肺移植後の虚血再灌流傷害に対するネトーシスの関与について検討する。また、灌流液中のNETsを薬剤等によって除去することにより移植前にグラフトの治療を行い、肺移植後の成績が改善されるかを検証する。本研究の結果は、肺移植後の虚血再灌流傷害の予防に有用で、成績改善に繋がる画期的な肺移植治療になり得ると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は動物実験モデルの習得およびNETs測定方法の確立を行なった。動物実験モデルは既に確立された手技であるが、小動物を扱う複雑なモデルであるため、習得には時間を要する。幸い、ラットドナー肺摘出、続いてEVLP、肺移植までの手技の習得および安定化を行い、信頼性高い実験が可能となった。引き続き、ラット冷虚血保存肺のNETosisの動態を調査した。ラット心肺ブロックを摘出し、0、6、18時間の冷保存後にEVLPを行い、灌流液を採取した。冷保存時間延長に伴い、保存液中のcell-free DNA上昇を認めた。これは長時間冷保存による肺内でのNETsの誘導とそれによる肺障害の発生を示唆する所見である。NETsの測定に関しては、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)や好中球エラスターゼ(NE)、シトルリン化ヒストン3(citH3)といったNETsの構成成分とDNAの複合体の測定が主に使用されている。in vitroの研究では安定したNETsの測定が可能だが、in vivoでは比較的難しく、またラットでのNETsに関する報告は少ないため、NETs測定方法を樹立する必要があった。我々はラット腹膜炎モデルを用いてNETosisを誘導し、その血漿からcitH3とDNAの複合体をELISA法により測定することでラット検体でのNETsの測定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
肺保存実験モデルには冷虚血モデルと、温虚血モデルが存在する。すなわち、健常な動物に心停止を導入したのち素早く冷保存とし、長時間保存することで障害を誘導する方法(冷虚血)と、同じく健常な動物に心停止を導入し、室温でより短時間放置することで障害を誘導する方法(温虚血)がある。我々は双方の実験モデルを既に確立しており、犠牲死の導入方法によりグラフト肺の機能が異なることを報告している。さまざまな保存方法・犠牲死の方法を用いてEVLPを行い、どの様な場合にネトーシスが誘導されるのか、EVLPによるネトーシスに与える影響を明らかにする。EVLP後のネトーシスの評価により、実験モデルとして最適な犠牲死法・虚血時間を決定する。その実験モデルを用いてEVLP中の治療介入後に左肺移植を行い、移植後の虚血再灌流傷害を抑制できないかを検証する。NETsの誘導阻害にはPeptidylarginine deiminase(PAD)阻害剤を、NETsの分解にはDNase Iを用いる。双方とも臨床で使用されている薬剤であり、またEVLPは体外での灌流中に投与することから、副作用の危惧が少ない上、移植前に治療を行いつつグラフト肺の機能評価を行うことができる。
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