マクロファージのITAMシグナルを介したインプラントへの生体応答制御
Project/Area Number |
22K09427
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56020:Orthopedics-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡元 信和 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (70600162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 健史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70383768)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 異物巨細胞 / 整形外科 |
Outline of Research at the Start |
我々は、異物巨細胞は骨吸収細胞である破骨細胞と、単核の細胞同士による細胞融合にはDC-STAMPとOC-STAMPという2つの分子が必須であること、破骨細胞が骨吸収能を有するのに対して、異物巨細胞は骨吸収能を有していないことなど明らかにしている。今回、破骨細胞分化に必須の役割を担うITAMシグナルが異物巨細胞分化にも必須の役割を担う可能性が明らかになりつつある。インプラントなどの生体にとって異物である人工医療物を生体に入れる医療は今や必須のものであり、異物巨細胞の理解やその制御はますます重要になると考えている。ITAMおよびDectin-2を切り口にした解析にて、解明を進めたいと考えている。
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Outline of Annual Research Achievements |
生体内に医療用インプラントを留置するインプラント医療は、現代の医療にはもはや欠かせない。特に整形外科においては、人工関節など、医療用異物を体内に設置することから、異物反応の理解は欠かせない。人工関節などの無機質なものは、生体反応を惹起することなく、生体内で維持されると思われがちである。しかし、実はそうしたインプラントでも異物反応と呼ばれる生体反応を惹起することが知られているが、その詳細は不明である。我々はこれまでに、異物に反応して形成される異物巨細胞が、単核の細胞同士による細胞融合により多核化すること、この細胞融合による多核化には膜貫通型分子であるdendritic cell specific transmembrane protein (DC-STAMP)ならびにosteoclast stimulatory transmembrane protein (OC-STAMP)が必須であること、これらいずれかの遺伝子欠損マウス由来の細胞では、異物巨細胞の細胞融合が完全に阻害されることを証明した。また、異物巨細胞には骨吸収が全くないことも明らかにしており、これまでインプラントのゆるみなどの元凶と考えられてきた異物巨細胞は、生体が医療用インプラントを受け入れるための細胞であるという新たな概念を打ち出すに至った。異物巨細胞と破骨細胞は、共にマクロファージ由来の細胞で、細胞融合により多核化するなど、多くの共通点を有しているにもかかわらず、骨吸収能において決定的に異なる細胞であること、むしろ異物巨細胞は組織修復や免疫寛容に関与する因子を豊富に分泌する細胞であることを突き止めた。また、異物巨細胞と破骨細胞分化には、いずれにもITAM (Immuno-tyrosine based activation motif)を介したシグナルが重要である知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
破骨細胞は2つのサイトカインmacrophage colony stimulating factor (M-CSF)とreceptor activator of nuclear factor kappa B ligand (RANKL)により誘導されるが、異物巨細胞はgranulocyte macrophage colony stimulating factor (GM-CSF)とIL-4により誘導されることを明らかにした。これらの過程で、ITAM分子であるFc受容体γ subunit(以下、FcRγ)とDNAX-activating protein 12(DAP12)は破骨細胞分化に必須の役割を担うことが知られているが、異物巨細胞分化においても必須であることを見出した。さらに、アダプター分子であるFcRγに会合することが知られている受容体分子の中で、異物巨細胞に強く発現する分子を、マイクロアレイにてスクリーニングを行い、膜結合型受容体分子であるDectin-2を同定した。Dectin-2は寄生虫や真菌感染に対応するpattern recognition receptorであることは報告されているが、異物巨細胞における発現や機能は不明である。現在、Dectin-2欠損マウス(Dectin-2 KOマウス)を入手し、異物巨細胞分化を検証したところ、分化が抑制される知見を得た。また、DC-STAMPとOC-STAMPを介した細胞融合が、異物反応においてどのような役割を担うかを明らかにするため、DC-STAMPとOC-STAMPのダブルノックアウトマウスの樹立を行った。DC-STAMP/OC-STAMPダブルノックアウトマウス由来の細胞でも、異物巨細胞の細胞融合は完全に阻害された。これらの進捗状況から、研究が概ね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
異物巨細胞の細胞融合のメカニズムの解明から、異物巨細胞の細胞融合の必然性を明らかにすることを進めている。細胞融合のメカニズムについては、DC-STAMP欠損マウス由来の細胞と野生型マウス由来の細胞による混合培養、またOC-STAMP欠損マウス由来の細胞と野生型マウス由来の細胞による混合培養を行い、それぞれの単独欠損では細胞融合が起こらないが、野生型マウス由来の細胞との混合培養では細胞融合が起こる知見を得た。このことは、今後の異物巨細胞の細胞融合のメカニズムの解明において、重要な知見であり、さらにDC-STAMP/OC-STAMPダブルノックアウトマウス由来の細胞でも同様に野生型マウス由来の細胞との混合培養を進める予定である。異物巨細胞が細胞融合による多核化によって獲得する能力を評価し、その過程でどのような分子機序があるのかを解明する。また同様に、異物認識機構として、Dectin-2欠損マウスやITAMシグナル分子であるFcRγ欠損マウスおよびDAP12欠損マウスを用いて、異物巨細胞の形成実験及び発現分子解析を行う。これらの解析は、まずはin vitroでそれぞれの遺伝子欠損マウス由来の細胞や、野生型マウス由来の細胞との混合培養を行い、異物巨細胞の細胞融合の有無などを解析するが、それぞれの遺伝子欠損マウスに異物を留置した上で、異物反応に対する評価も行う予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)