耐性菌による尿路感染症への治療戦略-trade-offを利用したファージ療法
Project/Area Number |
22K09535
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56030:Urology-related
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
花輪 智子 杏林大学, 医学部, 教授 (80255405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 剛明 杏林大学, 医学部, 教授 (80365204)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ファージ療法 / 大腸菌ファージ / ESBL産生大腸菌 / trade-off / 病原性 / 尿路感染症 / bacteriophage / バイオフィルム |
Outline of Research at the Start |
代表的な多剤耐性大腸菌であるESBL産生大腸菌による尿路感染症は近年増加している。本研究では、抗菌薬以外の治療の選択肢としてバクテリオファージを用いたファージ療法に着目し、その治療法の開発を目的としている。中でもファージ耐性化によりtrade-offを引き起こし、薬剤感受性化や病原性の低下を生じるファージを選出することが当該課題の特徴である。治療用ファージの候補となるファージの効果は、マウス感染モデルを用いて評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
細菌がファージに対して耐性化するかわりに、その対価として病原性の低下などのコスト(代償)を払う”trade-off”という現象が知られている。本研究では、多剤耐性菌感染症に対するファージ療法の開発を目的としており、中でもファージに耐性化してもtrade-offにより治療を成功に導くことのできるファージを用いた多剤耐性大腸菌による尿路感染症に対するファージ療法の開発を目指している。 治療に適したファージを入手するためには感染症を引き起こしている大腸菌について解析を行うことは必須である。そこで杏林大学医学部付属病院の救急科および総合診療科の患者血液から多剤耐性菌の一つであるESBL産生大腸菌60株を用いて遺伝型、病原遺伝子の保有等を調べた。その結果、分離された患者の8割は尿路感染症であり、分離大腸菌は尿路病原性大腸菌(UPEC)に多いphylogroup B2、ST131の遺伝型を示す菌が優勢であった。また、これらは病原遺伝子のうちP線毛、鉄利用タンパク、毒素など、UPECに多く検出される遺伝子を保有していた。さらに機能の不明であるがUPECに高頻度で検出されるuspやmalXホモログ(PAI)の保有率が高かった。 都市部下水流入水はファージを単離するための素材として広く利用されている。当研究チームでも昨年までに合計190種のファージを単離している。現在までにファージの保存中の安定性、複製(増殖)のし易さ、臨床分離株を用いて部分的に宿主域を調べた結果などから18種のファージを選出した。しかしながらファージには細菌のような確立された同定法はなく、形態学的またはゲノム配列の決定が必要となる。電子顕微鏡での観察、宿主域の類似性から類似しているファージを削除し、6種のファージのゲノム配列の決定を行なった。現在そのアノテーションなどの解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では2022年度にはファージの単離と宿主域の解析およびファージ耐性菌の作出を行う予定であり、ファージの単離と宿主域の解析はおおよそ終了した。使用する大腸菌臨床分離株を選出するに際してその病原性に関する詳細な情報が重要となる。UPECの病原性関連遺伝子は30以上が報告されており、その多くがpathogenicity islandに含まれており、さらに遺伝子組換え等によりその構造も複雑化していることが近年明らかにされている。そのため、当初予定していたよりも検討する大腸菌の病原遺伝子数を増やし解析を詳細に行なっている。また、研究の効率化を図るため、治療に適した性質を示すファージに絞り、ファージ耐性菌の作出に先立ちファージのゲノム解析を行なうことにした。現在6種のファージゲノムの解析を進めており、今年度にはその結果を元にファージ耐性菌の作出を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
治療に用いるファージには病原性や薬剤耐性に関わる遺伝子を含んでいないことが条件となる。それを確認するために単離したファージのゲノム解析は必須とある。一方でファージ療法ではファージ同士、干渉して作用が減弱する可能性を低減させるため、分類学的に異なるファージを組み合わせて使用する工夫がなされていることが多い。そのためウイルス科の情報も有用である。これまで形態学的行われてきたファージの分類は現在ファージゲノムにあるLarge terminaseを用いて行われるようになったので、これによる分類を行う。 今回単離したファージの中にはhalo(プラークの周囲に形成される半透明なエリア)を形成するものも含まれていた。haloを形成するファージはその構造にバイオフィルムを溶解させる酵素を含んでいるという報告がある。そこでこれらのファージを用いてファージ耐性菌を作出し、そのバイオフィルム形成能および薬剤感受性を調べる。 これまで、ファージの宿主域はphylogropと関連している可能性が示唆されている。そこでこれまでの臨床分離株の保有する病原遺伝子のパターンと単離したファージの宿主域のデータ解析し、trade-offにより病原性や薬剤感受性が低下するファージを予想することで臨床応用に適したファージを選出する手法を開発する。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)