Project/Area Number |
22K09802
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56060:Ophthalmology-related
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
佐々木 香る 関西医科大学, 医学部, 非常勤講師 (50866209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 禎之 関西医科大学, 医学部, 講師 (50447926)
高橋 寛二 関西医科大学, 医学部, 教授 (60216710)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 抗VEGF抗体硝子体注射 / 抗菌薬適正使用 / 結膜嚢細菌叢 / 鼻腔粘膜細菌叢 / 常在菌 / 薬剤耐性 / 抗VEGF抗体 / 結膜嚢常在細菌叢 / dysbiosis / メタ16S解析 |
Outline of Research at the Start |
薬剤耐性菌の増加を受けて、世界保健機関および我が国でも薬剤耐性グローバルアクションプランが提唱され、不必要な抗菌薬使用を避ける活動が進められている。眼科領域での喫緊の課題はキノロン系点眼薬の過剰使用の是正である。点眼薬は容易に処方されるが、内服や静脈内注射に比して大変な高濃度であり、眼表面から鼻腔へ流れるため、適正使用を行わなければ、眼表面のみでなく、鼻腔でも耐性菌の増加につながる。本研究では、抗VEGF抗体硝子体注射時の抗菌点眼薬予防投与を反復した患者における、結膜嚢および鼻腔粘膜の常在細菌叢の変化および薬剤耐性菌の出現を解析し、抗菌点眼薬の適正使用を啓発する基礎データを得る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、キノロン系点眼薬の反復予防投与が選択圧となり薬剤耐性菌発現をもたらすと共に、結膜嚢や鼻腔粘膜の常在細菌叢変化(dysbiosis)にも繋がることを証明し、抗菌点眼薬の適正使用を啓発するための科学的根拠を得ることにある。 そこで、加齢黄斑変性患者に対する抗VEGF抗体の硝子体注射に際して、注射前後に抗菌点眼薬を眼内炎予防目的に20回以上、反復投与された症例をT(test)群とし、抗菌薬点眼未施行の症例をC(control)群として、結膜嚢・鼻腔常在細菌の薬剤感受性変化を検討した。T群とC群のMIC値は、対数MIC値の平均を線形モデルで比較した。なお、MIC平均値の表示は対数値を原尺度に逆変換したものを用いた。感受性率については、正確な95%信頼区間を求め、FisherのEXACT検定を行った。 ・令和4年度はT群とC群あわせて約30症例の検体集積を行い、感受性データを得たうえで、令和5年度はさらに症例を追加し、最終的にT群26例26眼、またC群21例21眼の結膜嚢および鼻腔粘膜から採取した検体を用いて、細菌の分離同定および感受性解析を行った。なお、経時的な変化をとらえるために採取した検体については、解析に値するための症例数の確保が困難であり、解析から省くこととした。 ・その結果、結膜のみならず、鼻腔においても、C群に比してT群では、CorynebacteriumおよびS.epidermidisのCAZおよびキノロンに対するMIC平均値は増加傾向を認めた。またCoryebacteriumおよびS.epidermidisのいずれもキノロンに対して感受性率低下も確認された。 ・なお結膜嚢の細菌叢検討の目的で16SrRNA増幅による解析を試みたが、十分なDNA量を得ることが困難なために、現在、鼻腔検体について、細菌叢を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書どおり検体採取を終了し、解析をしたところ、我々の仮説のとおり抗菌薬点眼が結膜嚢のみならず鼻腔でも、常在菌耐性化をまねていることが明らかとなった。 ・具体的には、結膜嚢から検出された菌株は、T群で43株、C群で30株、合計73株であった。一方、鼻腔から検出された菌株は、T群で86株、C群で64株、合計150株であった。結膜・鼻腔いずれでもC.acnes, Corynebacterium, S.epidermidisがあわせて、検出菌の7割を占めていた。すべての分離された細菌について、CMX, CAZ, LVFX, GFLX, MFLX, CP, IPMに対するMIC(最少発育阻止濃度)を検討し、各ブレイクポイントを参照に感受性を確定した。以下、主要3菌種について薬剤感受性の解析を進めた。 ・代表的な結果としては、結膜嚢のS.epidermidisのLVFXに対するMIC平均値は、結膜嚢では0.20から2.00へ(p=0.0662)、鼻腔粘膜でも0.36から2.00へ(p=0.0088)と上昇していた。また感受性率の差を95%信頼区間に基づいてFisher検定を行うと、結膜嚢ではp=0.1964、鼻腔ではp=0.0073と、結膜嚢より鼻腔において感受性低下の傾向が強く認められた。まずは本結果につき、第128回日本眼科学会で発表を行った(留守涼、佐々木香るほか。抗VEGF薬硝子体注射前後の予防的抗菌薬点眼による結膜・鼻腔常在細菌の感受性変化)。 ・さらに、耐性遺伝子の検出についてもPCRによる解析の準備を整えている。結膜嚢擦過物の細菌叢の解析については、涙液中細菌が微量でありDNA抽出量が十分ではなく、対象を鼻腔検体に変更しDNA抽出中である。 当初の仮説を裏付ける結果が得られており、さらにその裏付けとなる機序に関わる研究段階に入っており、おおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で明らかになったLVFX点眼反復投与による耐性化が誘導されていた表皮ブドウ球菌、コリネバクテリウムについて、PCRを用いて耐性遺伝子の検出を行う予定である。結膜嚢および鼻腔から分離されたすべての表皮ブドウ球菌とコリネバクテリウムの株を対象とする。耐性遺伝子の候補は、キノロン耐性決定領域(QRDR)のアミノ酸残基の置換を引き起こすgyrA/gyrB、grlA遺伝子を中心に、抗菌薬排出機構を構成するnfxB, nfxC, norB, norC, cfxB遺伝子。またプラスミド性耐性遺伝子として、キノロン耐性遺伝子qnr、メチシリン耐性遺伝子mecAについて検討を行う予定である。
② また細菌叢の乱れはアレルギー、自己免疫疾患など種々の疾患に関連することが腸管の研究で明らかになっている。今回、抗菌薬点眼が鼻腔常在菌へ影響を与えていることがこれまでの研究で明らかになったため、鼻腔の細菌叢の変化も解析する予定である。鼻腔から採取された検体からDNA抽出を行い、16SrRNA増幅による細菌叢の検討を行う。細菌叢の解析にはQuimIIを使用し、α多様性およびβ多様性を検討する予定である。
以上の2つの研究の結果をあわせて、抗VEGF薬硝子体注射における抗菌薬点眼予防投与に伴う耐性菌出現とdysbiosisの全体像を明らかにし、予防投与改善を啓発するための基礎データを得る論文を作成する。
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