骨細胞ネットワークの石灰化制御・ミネラル溶出による皮質骨多孔化の誘導メカニズム
Project/Area Number |
22K09911
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 57010:Oral biological science-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 智香 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (50739349)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 皮質骨多孔化 / 骨細胞 / 二次性副甲状腺機能亢進症 / 骨細胞性骨溶解 / Phex/SIBLING family |
Outline of Research at the Start |
二次性副甲状腺機能亢進症モデル動物(5/6腎臓摘出ラット)における骨細胞ネットワークの石灰化抑制および骨細胞性骨溶解誘導と、カルシウム受容体作動薬投与によるミネラル沈着・石灰化骨基質成熟化の機序解明を目的として、溶媒またはカルシウム受容体作動薬を投与した5/6腎臓摘出ラットを作成し、血清ミネラル濃度などの血清パラメーター、電顕解析などの微細構造解析を含む骨組織解析、シングルセルRNA-seq解析等を行うとともに、培養骨細胞株によるin vitro実験を遂行する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腎機能障害で発症する二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)における皮質骨多孔化の原因として、骨細胞ネットワークの石灰化成熟の抑制と骨基質ミネラル溶出による骨小腔の拡大と血管侵入が引き金になる可能性について、SHPTを伴う慢性腎不全モデル(CKD-SHPTラット)を用いた解析を進めている。補助事業期間初年度の令和4年度の研究成果として、CKD-SHPTラットは血清PTH、Pi、FGF23濃度の上昇およびCa濃度の低下を示し、皮質骨で骨細胞性骨溶解と骨細胞周囲の骨基質石灰化抑制が推測されること、また、同部位で破骨細胞を伴う血管侵入が認められることを見出した。このことから、SHPTにおける骨細胞異常と骨小腔拡大は皮質骨多孔化に至る起点となり、拡大した骨小腔へ破骨細胞と血管が侵入することで皮質骨多孔化が亢進する可能性を推測した。令和5年度は、これらの研究成果を踏まえて、CKD-SHPTラットに、血清PTH低下作用を有するカルシウム受容体作動薬を投与した場合の骨細胞ネットワークのミネラル沈着・石灰化骨基質成熟化について解析を進めた。その結果、カルシウム受容体作動薬を投与したCKD-SHPTラットでは、皮質骨多孔化が著明に抑制されており、骨細胞性骨溶解を示す骨細胞も有意に減少していた。また、CKD-SHPTラットで見られたSIBLING familyの過剰沈着やPhex/cathepsin Bの発現上昇、pASARMペプチドの蓄積が、正常ラットと同程度まで改善しており、再石灰化を示唆するカルセイン標識された骨小腔が増加していた。このことから、カルシウム受容体作動薬は、CKD-SHPTによる骨細胞性骨溶解を抑制する一方、骨細胞の石灰化抑制を正常化させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
補助事業期間2年目となる令和5年度は、カルシウム受容体作動薬を投与したCKD-SHPTラットの骨細胞ネットワークを介したミネラル沈着・石灰化骨基質成熟化について、画像イメージング解析やrealtime-PCR, RNA-seq等の遺伝子発現解析により検索を行った。カルシウム受容体作動薬を投与したCKD-SHPTラットでは、血清PTH値が著明に減少し、皮質骨多孔化が抑制されることが示されたほか、骨細胞性骨溶解を生じた骨細胞の減少、石灰化ミネラルの成熟化に寄与するSIBLING family(DMP1, MEPE)、Phex、Cathepsin B発現の正常化、骨小腔壁への石灰化沈着が認められた。一方、培養骨細胞(MLO-Y4細胞)を用いた解析から、細胞外PiおよびPTHに反応して、骨細胞性骨溶解やPhex/SIBLING familyの遺伝子発現が上昇すること、またPiがPTH受容体の発現を、PTHがPit1/Pit2発現を上昇させることから、PTHとPiが相加的に作用しあい、骨細胞性骨溶解や再石灰化抑制を増悪させる可能性が見いだされた。これらを合わせて考えると、カルシウム受容体作動薬は血清PTHを低下させることにより、CKD-SHPTラットの骨細胞性骨溶解を抑制する一方、骨細胞によるミネラル沈着を正常化させる可能性が推測された。これらの研究成果は、申請者が当初予定していた研究計画よりも早いペースで得られており、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度までの解析でCKD-SHPTラットの皮質骨多孔化は、血中に過剰に存在するPiとPTHによる骨細胞の石灰化調節異常(骨細胞性骨溶解や石灰化成熟)が引き金となり、このような部位に骨髄側から破骨細胞や血管が侵入することで生じる可能性が見いだされた。一方で、骨髄側の破骨細胞や血管が、どのようにしてこれら骨細胞異常を認識し皮質骨内部へと侵入してゆくのか、あるいは、骨細胞が破骨細胞や血管を呼び寄せるのか、そのメカニズムについては未解明である。最終年度である令和6年度は、CKD-SHPTラットの皮質骨多孔化部位において、破骨細胞や血管が皮質骨内部へ侵入するメカニズムについて、RNA-seq解析による網羅的遺伝子発現解析やreal-time PCRによる遺伝子発現解析、各種免疫組織化学等の手法を用いて明らかにしてゆきたい。なお、研究代表者らは、皮質骨多孔化部位の骨細胞が破骨細胞誘導因子(RANKL等)や血管新生誘導因子(VEGF, PDGFbb等)を発現し、破骨細胞や血管を誘導する可能性を推測しており、これらの因子を中心に解析を進めてゆく予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(16 results)