骨折治癒過程をモデルにした骨欠損部の血流不足を改善させる新たな骨再生法の開発
Project/Area Number |
22K10032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 57040:Regenerative dentistry and dental engineering-related
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
池田 正明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (20193211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸川 恵理子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40419263)
池田 やよい 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (00202903)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 再生 / 骨 / 生体材料 / 炎症 / 低酸素 / 軟骨内骨化 |
Outline of Research at the Start |
従来の生体材料や幹細胞を用いた骨再生療法は、大型の骨欠損に適用するには限界がある。その要因の一つは骨欠損部の血流不足である。骨折の治癒過程においては、血管新生と軟骨内骨化が重要な役割を担っている。本研究は、炎症の賦活化と低酸素環境によって血管新生と軟骨内骨化を誘導する生体材料(物質)を明らかにすることを目的とする。本研究の成果は、従来法の重大な問題点とされる血流不足の改善に大きく貢献する可能性があり、自家骨移植に近い画期的な骨再生療法の開発に繋がると期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
従来の生体材料や幹細胞を用いた骨再生療法においては、大型の骨欠損への適用に限界がある。その要因の一つは骨欠損部の血流不足である 。骨折の治癒過程においては、血管新生と軟骨形成(仮骨形成)、およびそれに続く軟骨内骨化が重要な役割を担っている。骨折治癒過程、特に 血管新生と軟骨形成を再現させる骨再生法の開発は、従来法の問題点を大きく改善させる可能性がある。最近、無菌性の自然免疫応答(炎症) や低酸素状態を誘導する生体材料が、血管新生、幹細胞の浸潤および軟骨形成に寄与し、骨や心筋の再生を促進することが報告された。そこで本研究は、血 管新生と軟骨形成を誘導できる生体材料(物質)を明らかにし、軟骨内骨化を介した新しい骨再生療法の開発に貢献することを目的としている。 本年度は、骨折の治癒過程を再現するのに有効と思われる生体材料を用いて、骨折初期過程の再現と骨再生への効果の検討をおこなった。その結果、骨欠損部の骨再生に非常に有効である抗酸化剤(仮称A)および炎症賦活剤(仮称B)を発見した。マウスの頭蓋冠骨に骨欠損を作成し、A とBを含む足場材料を移植したところ、骨欠損部の30%-90%に石灰化が認められた。一方、生理食塩水を含む足場材料を移植した群では石灰化は全く認められなかった。組織学的な解析をおこなったところ、当初想定していた軟骨の形成は認められず、膜内骨化によって骨の再生が起こったものと推定された。研究代表者らが見出した抗酸化剤(A)および炎症賦活剤(B)は、人体への毒性がなく、安全性が高い生体物質であることから、新しい骨再生療法の開発に貢献する成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、骨折の治癒過程を再現するのに有効と思われる生体材料を用いて、骨折初期過程の再現と軟骨内骨化の検討をおこなった。当初の計画では、抗酸化剤(低酸素状態を惹起)としてタンニン酸、免疫賦活剤(炎症の賦活)としてザイモサン含むヒアルロン酸ゲル(軟骨分化に適した細胞外基質)を作成し、骨再生効果を検討する予定であった。しかしながら、別の抗酸化剤(A)および炎症賦活剤(B)が骨欠損の再生に非常に有効であることを発見した(未発表データ)。4週令のマウスの頭蓋冠骨に直径3 mmの骨欠損を作成し、A とBを含む足場材料(コラーゲン)を移植した。マイクロCTによる解析の結果、2週間後に骨欠損部の石灰化が認められ、4週後には骨欠損部の30%-90%に石灰化が認められた。一方、生理食塩水を含む足場材料を移植した群では石灰化は全く認められなかった。 組織学的な解析をおこなったところ、軟骨の形成は認められず、したがって、当初想定していた軟骨内骨化ではなく膜内骨化によって骨の再生が起こったものと推定された。したがって、抗酸化剤(A)および炎症賦活剤(B)を含む足場材料として、軟骨分化に適した細胞外基質であるヒアルロン酸ゲルを用いる必要がないため、足場材料としてすでに医療用として市販されているコラーゲン製品を使用することにした。さらに効率的な骨欠損部の再生には抗酸化剤(A)の濃度、浸透圧、pHなどの条件が、骨再生に重要であることが明らかになった。まだ実験によって骨再生の程度にばらつきが大きいため、さらに条件検討をおこなっている
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Strategy for Future Research Activity |
当初、抗酸化剤と炎症賦活剤としてそれぞれ使用する予定であったタンニン酸やザイモサンは、生体吸収性や生体親和性に難点があった。これまでの研究の結果、それらに代わり、生体吸収性・生体親和性の高い抗酸化剤(A)と炎症賦活剤(B)が有効であることを発見した。このことにより、令和5年度に以降に行う予定であった生体材料の検討は、既に令和4年度中に終了したことになる。したがって、令和5年度以降は、令和4年度に見出した生体吸収性・生体親和性の高い抗酸化剤(A)と炎症賦活剤(B)を用いてマウス頭蓋冠骨欠損部に移植する動物実験を継続し、骨再生にとって最適な条件を検討するとともに骨再生のメカニズムの解析をおこなう。移植後0-4週間のμ-CTによる経時的な石灰化解析の後、移植組織を脱灰し、組織学的解析および免疫組織学的解析 (HIF-1α、CD31、コラーゲンなど)をおこなう。それに加えて、移植3-7日後に移植部位を摘出し、炎症性細胞や未分化幹細胞などの細胞浸潤、低酸素プローブを用いた低酸素状態、および血管新生を解析するとともに、定量 RT-PCR 法を用いて骨分化マーカーの発現を解析する。以上の解析を通じて、炎症の賦活化と低酸素環境によって炎症性細胞や未分化幹細胞などの細胞浸潤および血管新生が起こり、骨化を誘導することを明らかにする。 さらにより大きな骨欠損に対する有効性を調べるため、大型実験動物を用いて検討をおこなう。ラットの頭蓋冠・顎骨 の骨欠損における骨再生効果を解析するとともに、将来の臨床応用を見据えてビーグル犬を用いた予備実験を検討する。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)