Project/Area Number |
22K11570
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 59020:Sports sciences-related
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
河鰭 一彦 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00258104)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | スポーツ / 脳震盪 / 意識消失 / 物理的刺激 / 器質的変成 / 接触衝突 / 頭部外傷 / スポーツ傷害 / 予防法 |
Outline of Research at the Start |
スポーツ現場において「意識消失を伴わないスポーツ関連脳震盪:mSRC(mild-Sports Related Concussion)」はかなりの頻度で発生していると考えられる。mSRCに長年曝露されることにより慢性脳症を発症する可能性が指摘されている。特にContact・Collision型スポーツにおいてその危険性が増すことも知られている。しかし、mSRCとスポーツとの関係の詳細はあきらかになってはいない。本研究においてはmSRCの発生頻度、多発競技名、発生運動形態等、各変数の実態調査をおこなう。加えてmSRCから発生すると予測される傷害の予防法をスポーツ科学の知見をもとに探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
「スポーツ関連脳震盪(Sports-Related Concussion: SRC)」の「意識消失を伴わないSRC(mild-SRC: mSRC)」に関してはこれまで研究対象とはなっていない。2022年度の本研究の主目的は「mSRCの実相解明のための基礎研究」とした。具体的には文献研究である。本研究の着想は、「2016年にアメリカ合衆国ナショナルフットボールリーグ(NFL)と慢性外傷性脳損傷を罹患したNFL元選手との間で和解が成立した」と報道されたことからである。この報道を精査すると「慢性外傷性脳損傷を罹患した元選手の脳には器質的変成がみられ、機能的変成のみからの症状ではない」とする内容があり、申請者はこの点に注目した。推論ではあるが『意識消失を伴うSRCに罹った競技者は医学的ケアーが施される。しかし、mSRCに罹った競技者は試合中、練習中に関わらず競技を継続し、繰り返しmSRCに曝されることが「慢性外傷性脳損傷」主因ではないか』という仮説を立てた。「慢性外傷性脳損傷」から起きるとされる脳実質の器質的変成はアルツハイマー病の病変と類似性があるとする報告がある。アルツハイマー病の病変はタウ蛋白の異常な脳内蓄積であることはあきらかにされつつあるが「なぜ、蓄積するか?」については解明されていなかった。しかし、近年タウ蛋白の脳内異常蓄積に関する新たな知見が公開された。概略すると 「本来、タウ蛋白をリンパ系に排出する機構(具体的には管構造)があるが、何らかの理由で、排出機構が機能しなくなることにより脳内にタウ蛋白が異常蓄積する」という内容であった。この「何らかの理由」が接触・衝突で発生したmSRCを惹起する物理負荷であるとすれば、脳実質の器質的変成を伴う慢性外傷性脳損傷が引き起こる機序が説明できると考えられた。 以上のように、文献研究により今後あきらかにすべき仮説を提唱することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は文献研究により「mSRCとmSRCよって引き起こされる慢性外傷性脳損(CTE:Chronic Traumatic Encephalopathy)」の因果関係をあきらかにするための仮説を提唱することができた。具体的には「本来、正常な状態の脳内における微視的空間ではタウ蛋白は管状機構によりリンパ節に排出される。しかし、頭部への接触・衝突から引き起こされる物理的外力によりこの管状機構が破壊される」とする仮説である。しかし、申請者は基礎研究の素養を持ち合わせていないため、脳の微視的空間にはアプローチすることはできない。そこで生体からアウトプットされる情報を収集し、この情報を組み合わせて仮説を検証する立場をとることになる。まず必要なのはスポーツ競技現場おいてmSRCおよびSRCが発生実相をあきらかにすることである。そのためにこれまで提唱されてきたSCAT3(Sport Concussion Assessment Tool-3)等のガイドラインや先行研究を参考にして「質問紙」を作成した。具体的な内容は「個人属性、参加競技、経験年数、頭部への接触・衝突による外力曝露有無、回数、時期等」に関する内容である。回答はweb上にて行ってもらうこととした。この処置は被験者への各種負担を軽減するための処置である。まず、多くの競技に参加する学生が多い「体育大学・学部」に調査依頼することとした。地域偏在を解消するため、目標としては北海道から九州地方まである「体育大学・学部」すべてを調査対象にしたいと考えている。現在までの進捗状況としては首都圏にある「体育大学、学部」の共同研究者に依頼し資料収集に着手している。当然、質問紙法の調査を進めていく過程で質問紙の内容については修正が必要であり、常に改変を加える予定である。質問紙調査と並行し文献研究により新しい知見を得ることも重要であり実施をする。
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Strategy for Future Research Activity |
文献研究や質問紙調査で得られた結果をもとに「光学式動作解析システム」「ビデオ式動作解析システム」「加速度センサーシステム」「頭頸部筋力(等尺性・短縮性・伸張性連続測定可能)」等の既設「実験システム」を最大活用して実験・測定を進めていく。具体的には文献研究や質問紙法の結果から実験測定の対象とする「競技」「動作」を抽出していく。これまでの先行研究ではおおよそ頭部に80G以上の加速度が加わると脳震盪を引き起こすと言われてきた(条件により脳震盪を引き起こす加速度は変動する)。2022年度におこなわれた日本バイオメカニクス学会大会に参加し、「サッカー選手がヘディングを用いてゴールを狙う際の頭部への加速度暴露」はおおよそ20Gであることが報告された。サッカーヘディング中に人体頭部が曝される加速度は「脳震盪が引き起こされる1/4」となる。この値の評価は難しい。しかし、単純化するとヘディング4回すれば総和として「脳震盪を引き起こす加速度」となる。加速度の単位時間あたりの曝露あるいは総和なのか、あるいは両変数の関係性なのか。mSRCが脳の器質的変性を伴うCTEを導く加速度を定量化することを目指したい。実際の測定は「動作解析システム設置下」おいて被験者に抽出した競技場面の通常動作(頭部加速度曝露を伴う動作)を行ってもらい「加速度センサーシステム」のセンサーを規定された身体分節に装着する。できれば防水処置を施されたセンサーを口腔内に設置する。この処置は「皮膚上に設置された加速度センサー」より脳実質に近い位置に設置できると予測したからである。予測される抽出動作は「柔道受け身」「空手道の突きを受ける」「ラクビーのタックル」等々接触・衝突を伴う動作である。得られた加速度等の資料からHIC(Head Injury riterion):頭部外傷基準等の指標を用いて各動作が脳に与える影響を同定する。
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