Project/Area Number |
22K11654
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 59030:Physical education, and physical and health education-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久代 恵介 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60361599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真史 日本福祉大学, スポーツ科学部, 准教授 (40736526)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 上肢到達運動 / 認知 / 空間 / 運動行為 / 運動 / 感覚 / 行為 / 行動 |
Outline of Research at the Start |
ヒトは重力環境下において、眼や耳から入った環境情報の他、さまざまな要素をほどよく加味し、中枢において運動を作り出す。環境からの情報をもとに運動が生成される過程には複数の認知空間が階層的に連なり、その最終層には、運動生成時に参照される『行動空間』が存在すると想定した。本研究のプロジェクトでは、ヒトが中枢に表象する『行動空間』の機能と性質を解明することが目的である。これにより、洗練されたヒトの運動現象の背後にはいかなる機構が潜在しているかを探求する。
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Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト中間年の2023年度は、前年度に得られた実験結果をまとめ、国際学術雑誌であるPLOS ONEに投稿し掲載された。また新たに2件の行動実験を行った。1件目の実験では、前年度に実施した実験の空間解像度を高め、身体近傍空間への上肢到達運動の時空間的性質を再調査した。具体的には、身体から9方向(0, 22.5°, 45°, 67.5°, 90°, 112.5°, 135°, 157.5°, 180°)、3距離(near:11.4cm, middle:22.9cm, far:34.4cm)の27個の標的に対する到達運動の性質を調べた。その結果、前回結果と同様に運動時間は利き手斜め前方で最小、非利き手斜め前方で最大を示したが、far条件ではnear条件に比べ運動時間の伸延が利き手側に偏倚した(約22.5°)。このことは、運動に要するコストは距離と方向の交互作用に影響されることを示し、中枢に想起される「行動空間」は空間と身体の空間的関係性に依拠することが示唆された。2件目の実験では、身体前方の2つの標的間を往復する上肢運動の時間的性質(運動課題)、および実際の運動を伴わない主観的な運動能力(認知課題)を評価した。運動課題では左右の標的をできるだけ速く正確に連続的にタップさせた。認知課題のうち距離課題では、連続的に呈示される音刺激に合わせてタップできると判断される標的間距離を報告させた。同様にサイズ課題では、標的サイズを報告させた。これらの課題における距離、標的サイズ、運動時間の関係性を定量し比較・検討した結果、運動課題、認知課題ともにFittsの法則が示す速度と正確性のトレードオフの関係が確認された。他方、距離課題における主観的な見積もりは実際の運動とほぼ一致したが、サイズ課題では運動時間を長く見積もり、自己の運動を過小評価する傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトでは、ヒト運動行動において中枢で想起される「行動空間」の性質解明を目的とした3つの課題を設定しプロジェクトを推進している。 課題1では身体運動の性質が「行動空間」の形成に及ぼす影響を調べる。課題2では行為対象の性質が「行動空間」の形成に及ぼす影響を調べる。課題3では身体周辺の環境と状況が「行動空間」の形成に及ぼす影響を調べる。 当該年度は、前年度に引き続き課題1と課題2に関連するヒト行動実験を行った。前者に関しては、前年度に実施した上肢到達運動の時空間的性質を調べる実験について空間解像度を向上させ再調査した。その新たな結果として、運動に要する時間は標的までの距離と方向の交互作用により影響されることがわかった。このことから、ヒトが行為を及ぼす機能的空間は物理空間とは異なり、歪みを持ちながら広がっている様子がうかがえた。さらに後者の実験からは、行為対象である標的の大きさと距離は、主観的に想起される運動時間に与える影響度が異なることが示唆された。これらの研究課題については、今後必要に応じて追加実験等を実施し、調査を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は本研究プロジェクトの最終年度にあたる。当該年度は前年度に引き続きヒト行動実験の実施、解析、成果発表、論文執筆を推進するとともに本研究プロジェクトの総括を行う。 当該プロジェクトは3つの課題により構成されるが、当該年度はまだ手がつけられていない課題3に取り組む。課題3では身体周辺の環境や状況が、ヒト運動行動において中枢で想起される「行動空間」の形成に及ぼす影響を調査する。過去2か年に実施した水平面内に設定された実験系を3次元空間へと拡張し、身体周辺空間への運動行為とその主観的見積もりを定量する。実験では重力の作用が運動の速さ─正確性の関係性に及ぼす影響を定量するとともに、それらについての主観的な見積りを評価する。現在までに実験装置がおおむね完成しており、今後は予備実験を経て夏頃には本実験へと移行したいと考えている。当該年度の成果をこれまで得られた成果に加え、ヒト運動行動の機能的性質とその認知的表象である「行動空間」の性質理解に努めたいと考える。
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