Project/Area Number |
22K12347
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63010:Environmental dynamic analysis-related
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小松 大祐 東海大学, 海洋学部, 准教授 (70422011)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 硝酸イオン / 溶存有機態窒素 / 窒素循環 / 窒素同位体 / 15Nトレーサー / 安定同位体 / 沿岸環境 / 窒素安定同位体 / 酸素安定同位体 / 三酸素安定同位体 |
Outline of Research at the Start |
海洋の硝酸イオンを主とした無機態窒素、粒子態および溶存態有機体窒素について高感度安定同位体比定量法を応用し、同化や硝化の速度を実測し海洋の窒素循環速度を見積もる。そのために、まず既存の定量法について感度や測定精度を最適化を図り、改良を試みる。また、ある期間の時系列の海洋観測によって粒子態、溶存態の有機体窒素と無機態窒素について安定同位体を定量し、培養実験で実測した同化、硝化速度と比べ、天然における窒素循環速度を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
溶存有機物は懸濁態有機物の可溶化やウイルスによる生物細胞の溶解により生成され,微生物ループを介して海洋生態系を支えていると考えられている.特に,貧栄養の亜熱帯表層の溶存有機態窒素(DON)は最大の窒素プールであり,窒素循環において重要な役割を担うと考えられている.しかし,DONは濃縮が難しく,分析上の制約によってあまり議論されてこなかった.そこでDONの窒素同位体定量法を新規導入し,窒素循環について新たな知見を得ることを目標とした. 12月と翌年4月に観測した西部北太平洋亜熱帯域の2地点2観測回のDONと硝酸イオンの濃度と窒素同位体を分析した.その結果,表層から水深150 m 付近まで硝酸イオンは0.1 uM以下だったが,同海域のDON濃度はいずれも4-5 uMと十分なDONが存在し,その窒素同位体 DON (‰Air)は+1~+6 ‰となり,いずれも中層や深層の硝酸イオンの窒素同位体である+5~+6 ‰に比べて低い値を示した.この結果から表層のDONの起源として,中層や深層の硝酸イオン由来よりも低い窒素同位体を示す窒素固定由来の有機物の寄与が考えられた.さらに12月に比べ4月に低下する傾向が見られ,窒素固定寄与率の季節的な変化,あるいは,DONが生じる過程で窒素同位体を下げる同位体分別過程が働いた可能性がある.いずれにしても数カ月の短い時間でDON全体の窒素同位体が変化したことは,短期間にDONが入れ替わったことを意味している.従来,放射性炭素の分析から溶存有機物は非常に長い数千年のタイムスケールを持つと考えられてきたが,窒素の循環に関しては短いタイムススケールを持っている可能性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施予定だった定量法の改良に取り組み,硝酸イオンの窒素酸素同位体比定量に関して,測定精度の向上と,定量下限濃度を下げることに成功した.硝酸イオンから一酸化二窒素に変換する際のpH条件を見直すことにより,同位体検量線の傾き,切片を安定させることができ,硝酸イオンの窒素同位体, 酸素同位体の測定精度を向上させられた.それぞれの再現性は±0.2‰程度である.また従来比のおよそ3.5倍の試料量の導入が可能となり,同位体比を定量可能な濃度の下限値を0.5 uMまで引き下げることができた.2年目には酸化分解過程を加えることによって,数uMの天然レベルのDONの窒素同位体定量に成功した.硝酸イオン濃度が極めて低濃度となる亜熱帯海域において最大の窒素プールであるDONの窒素同位体を定量することにより,微生物ループを介した腐食連鎖による窒素循環過程を知る手がかりを得ることができた.生態系で利用可能な無機イオンと溶存有機物の両方の同位体情報を同時に取り出すことができれば,窒素循環過程について新たな知見が得られる可能性が高いと考えられ,有用なツールを得ることできた.
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Strategy for Future Research Activity |
駿河湾を横断する測線を設け,13測点でおよそ水深250 mまでを1-2ヶ月おきに観測中である.観測を継続し,海洋における,硝酸イオンとDONの濃度及び窒素同位体の時系列変化を明らかにする予定である.また,東海大学海洋学部の実習航海を利用し,夏季に駿河湾で15Nトレーサーを用いて,15Nアンモニア,15N尿酸を添加培養する実験を実施し,硝化速度とアンモニア化速度を直接的に見積もる培養実験を実施予定である.定量法の改良とDONの新規分析等,計画した内容を順調に実施できた一方,D17Oの測定を実施するための炉の問題を解決できず,硝酸イオンのD17Oの分析は実施できていない.
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