Project/Area Number |
22K12394
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63030:Chemical substance influence on environment-related
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
根岸 隆之 名城大学, 薬学部, 准教授 (80453489)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ジフェニルアルシン酸 / 神経症状 / アストロサイト / ヒ素中毒 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、有機ヒ素化合物ジフェニルアルシン酸とその関連代謝物、そして亜ヒ酸による神経影響について、生物学的・分析化学的手法を用いて評価し、化学構造・細胞種・脳部位・毒性相関解析を行うことで、ヒ素化合物による脳神経系影響機序を包括的に明らかにして以下の問いに答える。 1)小脳症状(につながる脳内変化)はDPAA固有なのかヒ素化合物の共通影響なのか? 2)なぜ、DPAAは神経細胞ではなくアストロサイトを主な標的とするのか? 3)なぜ、DPAAにより小脳症状が特徴的に現れるのか?(=なぜ小脳が主な標的なのか?)
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Outline of Annual Research Achievements |
ヒ素化合物、特に亜ヒ酸、ヒ酸などの無機ヒ素化合物は世界的に環境汚染による健康被害(皮膚疾患、がん、代謝疾患、および神経疾患等)が問題となっている。これらの無機ヒ素化合物は、生体内で代謝され一般毒性の低いジメチルアルシン酸などの有機ヒ素化合物となる。一方で、2003年に茨城県神栖町で発生した井戸水のヒ素汚染事故における主因物質ジフェニルアルシン酸(DPAA)は、戦時に毒ガス兵器として開発されたジフェニルクロロアルシンやジフェニルシアノアルシンの原料として用いられた化合物である(注:DPAAは毒ガスではない)。このDPAAにばく露した住民は特徴的に小脳症状を発症した。DPAAはアストロサイト特異的に酸化ストレス応答因子の発現上昇やMAPキナーゼの異常活性化を引き起こすことで、神経細胞の機能に異常を引き起こし小脳症状の発症に至ると考えている。そこで本研究では、「有機ヒ素化合物の構造・細胞種・脳部位・毒性相関解析による脳神経系影響機序解明」と題し、DPAAとその関連代謝物(フェニルメチルアルシン酸、ジメチルアルシン酸)、そして亜ヒ酸による神経影響について、生物学的・分析化学的手法を用いて、in vitroで細胞種(神経細胞・アストロサイト・ミクログリア)特異性を、in vivoで脳部位(小脳・大脳皮質・海馬・線条体・中脳・延髄)特異性の有無・程度を評価することにした。これまでに主にラット小脳由来アストロサイトを用いて研究を行ってきたが、複数のヒト由来株化細胞やヒト小脳由来アストロサイトにおける影響をラット小脳由来アストロサイトと比較したところ、ヒト由来の細胞は抵抗性が高いもののやはりDPAAはアストロサイトに特異的に影響を与えることが明らかとなりその細胞種特異性の原因の解明を急いでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度も引き続き、主に培養細胞レベルでのヒ素化合物の影響評価を行った。これまでに明らかにしてきたラット小脳由来アストロサイトにおけるDPAAによる異常活性化を陽性対照として、ヒト神経細胞モデルとしてヒト神経芽細胞腫SK-N-SHをレチノイン酸により分化誘導を行ったうえで、未分化・分化によるDPAAの細胞毒性と形態変化における感受性の変化を評価した。また、ラット小脳由来アストロサイトにおいて、DPAAおよび関連ヒ素化合物はそれぞれ特徴的にグルタチオン放出やグルタチオンSトランスフェラーゼの活性化など細胞内外のグルタチオン代謝に異常を引き起こしていることを明らかにし、これらの異常と細胞内リン酸化シグナルの異常活性化の関係を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況は概ね順調である。令和6年度はDPAAの生体ラットへのばく露を行い、部位差を検討することで小脳特異性の原因の解明に努める。また、これまで培養細胞で得た知見との整合性を確認する。そして、本研究課題の総括を行う。
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