土壌中でのヒ酸置換型ヒドロキシアパタイトのin situ合成によるコメ中ヒ素低減
Project/Area Number |
22K12429
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64020:Environmental load reduction and remediation-related
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中島 常憲 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70284908)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ヒ素置換型ヒドロキシアパタイト / コメ中ヒ濃度低減 / ヒ素不溶化技術 / フルオロアパタイト / 有害アニオン固定化 / ヒ酸 / 亜ヒ酸 / ヒドロキシアパタイト / 水田土壌 / 有害元素固定化 |
Outline of Research at the Start |
国際的にコメ中ヒ素の最大基準値を0.35 mg/kg以下にすることが定められているが、日本国内の水田で収穫されたコメ中から上記基準値を超過するヒ素が検出される例がある。これまでに効果的にコメ中ヒ素濃度を低減する技術は見つかっていない。 本研究課題では、水田土壌中にカルシウム源を添加し、水田土壌にてヒ酸置換型ヒドロキシアパタイトを合成しヒ素を不溶化する技術の開発を行う。炭酸イオンなど共存化学種の影響を考慮して、溶解性が低く安定なヒ酸置換型ヒドロキシアパタイトを合成することが可能で あれば、コメ中のヒ素濃度を効果的に低減することが期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
国際的にコメ中ヒ素の最大基準値を0.35 mg/kg以下にすることが定められているが、日本国内でも上記基準値を超過するヒ素が検出される事例がある。本研究課題では、リン肥が存在する水田土壌中にカルシウムを添加し、ヒ酸置換型ヒドロキシアパタイト(As-HAP)を合成し土壌中のヒ素を不溶化する技術の開発を目的としている。実際の水田土壌には炭酸イオンなどヒ酸イオン、亜ヒ酸イオンと化学構造が類似している化合物が共存している。これら共存化学種存在下でも安定にAs-HAPを合成する条件を検討した。また、水田土壌中でのリン、ヒ素の存在形態がAs-HAP合成に与える影響を検討した。さらに、酸性条件において安定にヒ素を固定化するためにフルオロアパタイト(FAP)を骨格としたAs-FAPを合成することも検討した。 共存物質存在下でのAs-HAP合成を検討した結果、炭酸イオン共存下でもAs-HAPが合成できることが分かった。しかし、カルシウムが炭酸カルシウムを生成するために消費され、As-HAPの生成量が減少しAs不溶化率の低下が懸念され、カルシウム添加量の最適化が必要であった。As-FAPを合成して酸性条件でのヒ素不溶化を試みたところ、pH5~4付近の酸性条件でヒ素不溶化率の向上が確認できた。土壌中の鉄鉱物に結合したリン、ヒ素の化合物を模擬して、フェリハイドライドにリン酸、ヒ酸化合物を吸着させた模擬土壌を作成し模擬土壌中でAs-HAPの合成が可能かどうか検証した。フェリハイドライドに吸着したヒ素は、還元雰囲気で50%ほど溶出した。しかし、模擬土壌に適量のカルシウム、リンを添加することでAs-HAPが合成されヒ素溶出を抑制できた。還元雰囲気下でのAs-HAPの安定性についても検証した結果、還元雰囲気においてAs-HAPの一部崩壊が見られ、取り込まれたヒ 素の一部が再溶出することが明らかとなっった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究成果を踏まえて、本研究課題において検討すべき項目を再度整理して、①As-HAP合成に影響する共存化学種の影響検討、②共存化学種がAs-HAPの結晶性、安定性に与える影響解明、③酸性条件におけるAs-HAPの水溶解性、結晶性(安定性)の検討、④酸化還元雰囲気がAs-HAPの水溶解性、結晶性(安定性)に与える影響、⑤フッ素添加がAs-HAPの水溶解性、結晶性(安定性)に与える影響、⑥実土壌を模擬した系でのAs-HAPまたはAs-FAP合成条件の確立の6項目を検討することにした。①については、炭酸イオンを中心におおよそ検討が終了している。②については、リードベルト解析によるAs-HAPの結晶構造解析手法の確立が完了しており、今後は実際に共存化学物質の有無で結晶構造変化の度合い(Asの置換割合)に大きな影響が見られるのかどうか検証する。③、④、⑤についても各条件におけるAs-HAPおよびAs-FAPの水溶解性に関しての検討がおおむね終了しており、今後は結晶性の変化を解析していく。⑥については、模擬土壌中でAs-HAPを合成する条件がおおよそ確立できており今後は、As-FAPの合成条件について検討していく。 上記の様に、一部実験計画の見直しを行った部分があるが、研究課題全体としては、おおむね順調な進捗状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
水田土壌中でのAs-HAPの合成に対して影響を及ぼす共存化学種として、当初炭酸イオンの影響が大きいと考えていたが、炭酸イオンの影響は小さく、土壌に共存する鉄鉱物、アルミ鉱物の影響が影響することが文献研究により明らかとなった。そのため、鉄鉱物やアルミノケイ酸鉱物を用いた模擬土壌を調製し、As-HAP合成への影響を検討する。鉄濃度が高い土壌中では一部のヒ素が鉄鉱物と結合し存在しておりヒドロキシアパタイト中に取り込まれにくいため、As-HAPの合成効率が低下することが懸念される。そのため、実際の土壌中でのヒ素、リンの存在形態を考慮して、実際に土壌中で効果的にAs-HAPが合成できるかどうか実験的に検証する必要がある。 具体的には、ゲータイトやフェリハイドライド等の鉄鉱物にヒ酸イオンを吸着させ、As-HAPおよびAs-FAPの合成実験を実施する。さらに土壌中に蓄積しているリン化合物の化学形態について、リン酸塩として存在する「リン」だけでなく、チッ化リンやヒ素同様に鉄鉱物、アルミノケイ酸鉱物に結合して存在しているリンを想定し、これらのリン化合物がAs-HAPおよびAs-FAPの合成に利用できるがについて検証を行う予定である。また、酸性の土壌や還元雰囲気の土壌中において、As-HAPおよびAs-FAPが安定に存在できるかについてもさらに検証が必要である。ヒ素還元微生物やアスコルビン酸、クエン酸チタンなどの化学的還元剤を共存させ、酸化還元電位をコントロールしながらAs-HAP、As-FAPの安定性試験を実施する。上記検証を実施する際に、As-HAP結晶構造変化を検証していく。
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Report
(2 results)
Research Products
(9 results)