Project/Area Number |
22K12509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64060:Environmental policy and social systems-related
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
及川 規 宮城学院女子大学, 付置研究所, 研究員 (00754186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森谷 朱 東北歴史博物館, 学芸部, 学芸員・技師 (30808514)
芳賀 文絵 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 研究員 (80754530)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 文化財 / 収蔵庫 / 博物館 / 保存環境 / 木質材料 / 省エネルギー / 持続可能性 / 文化財保存環境 / 収蔵空間の逼迫化 |
Outline of Research at the Start |
文化財の適切な保存環境を,できるだけ機器類を使用せず,低エネルギー・低コストで実現することが大きな課題となっている。 本研究は,それを木質材料自体が持つ特性を活用して実現するためのシステムとして「木質材料を循環する」ことを発想し,そのシステムの構築と,それを最も効果的に実現できる木質材料や乾燥方法の科学的条件を明らかにし,その汎用性を実証しようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「木質材料の循環」による低エネルギー・低コストの文化財保存空間の構築を目的とするもので,1)木質材料の最適条件の解明,2)乾燥条件の解明,3)既存施設における有効性の実証,4)本方式が効果的に作用する空間条件の解明の4項目から構成される。 2022年度は,1)では,木質量の異なる3つのモデル空間の温湿度状況の差異,空気交換率との関係性を調査し,①モデル空間の空気交換率は一般の収蔵空間の約30倍程度である,②当該環境下でも木質の設置により適湿を半月程度維持できる,③高湿域に到達後も周辺空気より3 %程度低い湿度で一定する,④木質量は空間体積比0.12と0.06では差が認められず,さらに少なくてよい,⑤木質がないモデル空間では時期により周辺空気より高湿になる場合がある,⑥空間温度がわずかでも高くなると湿度を大きく低下させる,などの知見を得た。 2)では,属性の異なる4空間についてその温湿度とそこに設置したサンプル木質の重量変化を測定し,①木質を乾燥させる度合い(以下,乾燥度)は,通年では日射を受ける南側の空間Aが大きい(相対湿度や絶対湿度の長期的な変動との相関性は小さい),②日射を受ける東側の空間Bは最も乾燥度が小さい,③日射のない空間Cは,外気に連動し秋から春にかけて乾燥度が大きい,④夏季と冬季は人間が在室中は空調が稼働する空間Dは,季節依存性が大きく冬季の乾燥度は4空間中最も大きい,などの知見を得た。 3)は2023年度以降に実施する。 4)では,実際の収蔵庫2箇所(一度乾燥すると適湿を維持できる期間が長い収蔵庫Xと短い収蔵庫Y)について,空間温湿度,壁面温度,空気交換率等を測定し比較した。空気交換率は収蔵庫Xが0.06 回/h程度,収蔵庫Yが0.11 回/hで空気交換率が適湿維持期間に影響を与える要素の一つであることが示唆された。他の要素については継続して調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた調査を計画通り行うことができた。1)では本システムに必要な木質量について,モデル空間の空気交換率を実際の収蔵空間に近づけて実施する条件が明らかになった。予想以上に木質量は少なくてよい可能性が示唆されたので,木質の質的属性(樹種,形状など)よりも量的な問題について明らかにすることが有用であることがわかった。2)については,属性の異なる4空間が,乾燥度においても異なる傾向が示されたので,さらに継続して調査しその一般性について検証する。次年度実施予定の3)については,1),4)で適湿維持には空気交換率も大きな要素であることが示されたことから,事前の気密化処理を重要であることがわかり,その対応をすることとした。4)については,適湿維持期間に影響する要素の一つと予測していた空気交換率が,予測通りであった。以上の通り,今年度得られた知見により次年度の研究の方向性が明確になったことから,上記区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)の「木質材料の最適条件の解明」については,モデル空間の2022年度の調査により,木質量が当初想定していた量よりかなり少なくても実現できる可能性が示唆されたことから,まず,量的な観点で精査することを優先し,木材の樹種や形状など質的属性の調査はその後としたいと考えている。 2)の「乾燥条件の解明」については,2022年度の知見が一般性があるか,再現性があるかを検証するため,同内容の調査を継続する。 3)の「既存施設における有効性の実証」ついては,まず対象空間の気密化処置,低湿化処置を実施する。設置する木質量などの調査条件は,1)の調査結果を勘案して設定する。それを受けて2023年度後半から本調査を実施する。 4)の「本方式が効果的に作用する空間条件の解明」については,空間の温湿度調査,壁面の温度調査を継続する。新たに内装材の種類,対象空間の構造,断熱性,方位,階層,上下周辺に接している他室との関係,保管している文化財の属性(材質,量)などについて評調査する。
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