Project/Area Number |
22K12515
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 和宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (00273748)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | フィリピン / 民主主義 / 固有性 |
Outline of Research at the Start |
フィリピンを事例として、民主主義の原理について再検討を行うことが本研究の目的である。民主主義で前提とされる、独立した個人の意思決定、理性的判断、暴力によらぬ言論を通じた意見調整、といった3要素が、非西洋社会においても実際に機能しているのかを、具体的な政治事象を分析する中から検討をする。これらを通じて、西洋型民主主義理念に収斂できない、個別社会の固有性、社会原理に基づく民主主義制度の運用とバリエーションがあるとの視点を考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、制度的民主主義を20世紀初頭、他国に先駆けて導入し、1980年代には独裁政権から民主的体制に民衆の力で移行する先鞭をきったフィリピンの「民主主義」の実態を実証的に検討しながら、民主主義の原理論を再検討することを目的としている。 フィリピンでは自由選挙、議会制度、言論の自由などアメリカ型民主主義制度が運用される一方、実質的には地方名望家や有力政治家が、法規や制度を超えた強力によって住民支配をしたり、行政機構や国家制度を恣意的に運用して私的利益の拡大の手段とするなどのことが日常的に行われている。予算や利権をめぐる汚職はその一面であるし、特にデュテルテ前大統領期に大規模におこなわれた「超法規殺人」Extra Judicial Killingなどもフィリピン民主主義の矛盾として論じられている。 正義Justiceを根本理念とする民主主義と、正義と対極にあるはずの暴力と不正が民主主義制度を通じて行われているフィリピンでの実態から、一元的モデルに還元されがちな民主主義論を批判しつつ、受容社会の構造や条件に応じた多様な民主主義のあり方を考察しようというところに本研究の狙いがある。 そうした問題意識に立って、民主主義を支える3つの原理、①個人による意思決定、②理性的判断、③言論の効力が、フィリピン社会でどのように機能しているのかを、具体的事件や事象を実証的に分析することを通じ考察しようとするものである。 以上の検討に基づき、フィリピン固有の社会編成、価値観に基づくフィリピン特有の民主主義が存在することを主張しようとするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響が諸方面に表れている。たとえばフィリピン現地調査における官公庁へ訪問許可や、情報アクセスに関する諸手続きが厳格化され、予想外の時間(日数)を要するようになったり、場合よっては情報そのものにアクセスできないこともある。従来のような対応では計画通りに進まなくなってきたことを今後の調査では重々勘案する必要がある。 さらにはコロナ禍によって滞っていた他の研究課題の積み残しがあり、本研究の遂行にも影響を与えている。計画的な遂行ができるように、時間的配分、労力の配分を考える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
全体として遅れる傾向にある本研究を計画的に進められるよう再度スケジュールの点検を行うとともに、論文等の研究成果を具体的に積み重ねられるような整理をおこなっていく。特に制度的民主主義と相反する政治的行為である「超法規的殺人」の実態と、制度的民主主義の枠外で行動する周縁部「サバルタン」集団の実態については、実証面のみならず、理論的な意味の検討を含めて重点的に進めてゆく。 また、上記したようにフィリピン社会状況や条件が変化してきた中で、現地研究者および民間研究機関との事前の連絡と連携については、従来以上に留意して行う必要がある。
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