A Study on Dzud and the industrialization of pastoralism in socialist Mongolia
Project/Area Number |
22K12579
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
冨田 敬大 神戸大学, 国際文化学研究科, 特命助教 (80609157)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 牧畜 / 自然災害 / 土地利用 / 産業化 / 地方と都市 / モンゴル |
Outline of Research at the Start |
本研究では、社会主義体制下のモンゴルで急速に進められた牧畜の産業化と、人びとのゾド(寒雪害)に対する認識およびその対応との関係について、以下の四つの視角から検討することで、20世紀に生じた社会経済変動と環境変化が、近代化以前の人間=環境関係に及ぼした影響を明らかにする。 1. 近代ゾド概念の構築と防災・減災に向けた取り組みを詳細に跡づける。 2. 資源利用・管理システムの特徴とその地域的偏差を解明する。 3. 家畜基本台帳をもとに家畜生産とゾド被害との関係を実証的に明らかにする。 4. 内陸アジアにおける環境変化・災害への対応をめぐる差異と共通性を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、社会主義体制下のモンゴルにおいて急速に進められた牧畜の産業化と、人びとのゾドに対する認識およびその対応との関係を、国家、国際社会、地方行政、個人が複雑に交錯する動的なネットワークに着目して検討することで、20世紀に生じた社会経済変動と環境変化が、近代化以前の人間=環境関係に及ぼした影響を明らかにする。初年度にあたる2022年度は、以下の通り研究を進めた。第一に、社会主義期のゾドの影響と対応について、農牧業集団化以降の社会・経済状況に着目して検討した(5月に日本モンゴル学会2022年度春季大会で口頭発表を行った)。またこれに付随して、動き続ける自然とそれに対応する文化・社会のあり方を研究することの意義と方法について考察した(8月にモンゴル国立大学のサマースクールで口頭発表を行い、10月にモンゴル語文献『社会科学の質的調査研究』として刊行された)。第二に、社会主義期の放牧地の生態環境とその管理をめぐる研究動向を精査した(3月に北海道大学のセミナーで口頭発表を行い、『沙漠研究』に投稿した)。第三に、農牧業協同組合のもとでの土地利用の実態について、科学アカデミー地理学研究所の牧民の移動に関する研究成果と、ボルガン県オルホン郡の『土地利用計画書』の内容分析および旧組合員への聞き取り調査の結果をつき合わせて検討し、両者の差異が持つ意味について検討した。第四に、20世紀半ば以降の人口動態が、草原と都市に暮らす人びとのウェルビーイングに及ぼした影響について議論を行った(2月に神戸大学でワークショップを開催した)。一方で、当初予定していた国立中央文書館でのゾドの被害や防災対策に関連する行政文書、統計資料の収集・分析については、2022年夏時点で新型コロナ感染症の影響が依然として大きかったため、次年度以降に延期した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、農牧業集団化以降の資源利用・管理システムの特徴について、家畜飼育の科学的管理と専門化の過程に着目して検討した。具体的には、放牧地の生態環境およびその管理をめぐる科学的研究が何を、どのように明らかにし、またそれによって何を実現しようとしたのかを、1980年代に協同組合体制下の牧民の移動実態を広く調査したモンゴル人地理学者の研究成果(『モンゴル人民共和国の牧民の移動』)をもとに検討した。これにより、『牧民の移動』が、自然草地に依拠する従来方式にもとづく発展を目指すという政府の方針のもと、牧民の移動に関する伝統的な知識を科学的に裏付け、家畜の空間的な分布を改善することで、集団化に伴う牧民の移動範囲の縮小や不適切な土地利用に対処しようとしたことを明らかにした。一方で、近代ゾド概念の構築と防災・減災に向けた政策や取り組みを明らかにする作業については、新型コロナウイルス感染症の影響により、国立中央文書館での資料調査を次年度に延期した。モンゴル科学アカデミー歴史学・民族学研究所の協力を得て、協同組合期のゾドの被害や防災対策に関する行政文書および統計資料の収集・分析を行う予定である。 研究成果の公表については、図書の刊行、学術誌への投稿、国際会議、国内学会、セミナー・研究会等での発表を積極的に行うなど、当初の計画以上に実施することができた。また、本研究課題と関連する現代モンゴルの都市と草原というテーマでワークショップを開催し、第二次世界大戦後の都市・工業化に伴う人口動態が、モンゴル草原の人間=環境関係に及ぼした影響について、隣接分野の研究者と議論を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前年度に不十分であった(1)ゾドの国家基準、(2)防災と減災に向けた取り組み(畜舎や井戸、乾草・飼料の備蓄といった防災インフラの整備、マスメディアを通じた宣伝活動、科学的検証の組織化)の成立・展開を、文献サーベイと資料分析を通じて詳細に跡づける。さらに、国内外の都市消費者に向けた畜産物需要が急速に高まった1960年代以降の地方におけるゾド被害の実態、およびその家畜飼育・利用への影響を、『家畜資産台帳』の分析を通じて明らかにする。このうち、環境変化・災害が畜産物の生産・流通・消費に及ぼした影響について、10月に開催される第19回IUAES-WAU世界人類学会議(インド)でパネル発表を行い、次年度に刊行予定の英語論文集に投稿する。これらの作業と並行して、近現代モンゴルにおける人間活動と環境変化の相互関係をめぐるこれまでの研究成果をまとめ、単著として刊行するべく作業を進める。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)