Project/Area Number |
22K12705
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90010:Design-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
下村 芳樹 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (80334332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 裕太郎 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 准教授 (60828086)
細野 繁 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (60846385)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 創造的設計 / 設計学 / 設計論 / アブダクション / 仮説形成 / 共感 / 概念空間操作 / 止揚 / 概念空間 |
Outline of Research at the Start |
設計学は、設計における創造性を生む核が、演繹や帰納では説明のつかない発想、すなわちアブダクションであるという仮説を発見した。しかし、アブダクションにより説明される創造的な発見が、どのようにもたらされるのかは明らかにされていない。その理由は、アブダクションの可謬性に客観性と再現性を重視する工学分野の要求に耐える科学的な説明を与えることが容易でないためである。 本研究は、アブダクションによる創造的な発見が発動する機構の普遍的な説明の獲得に取り組むことで「創造を為すための設計研究」を再活性化し、科学および工学の双方の観点で、時代に呼応した設計論、設計学を醸成する新しい学究の潮流を興す。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、設計を観察し、共感がアブダクションをもたらす過程を検出することにより、前年度に構築した理論モデルの妥当性を検証した。既に関連する研究分野で広く知られている様に、アブダクションも共感も設計者による内的な情報処理行為であるため、設計の観察の際はこれらの検出方法が大きな課題となる。今年度の研究では、設計者の設計に係る内的行為を検出するために、模擬的な設計課題を設計者に課し、その解決過程において顕在化する設計者の発話データ(プロトコルデータ)等の獲得を介して、設計者の思考を分析する設計実験を実施した。アブダクションの検出においては、まず設計実験で獲得した発話データを意味のある最小単位のフレーズに分節する質的コーディングを行った。その後、分節されたフレーズ間の論理的関係が、Peirceにより形式化されたアブダクションの類型に当てはまるかどうかの評価を行い、その結果に基づいてアブダクションが発動を判定した。
続いて、以下の方法により共感の検出に取り組んだ。本研究は、設計者は、他者が記号化し発信した外的情報を、新たな信念・知識として取り入れ自身の思考に反映させることで共感が実現され、それを機にアブダクションが発動すると仮説している。この仮説のもと、上記の方法により検出したアブダクションの発動時点近傍の発話データを分析し、発動したアブダクションの内容に関係すると推測される情報が発信、受信された時点を共感の成立時点候補として抽出することを行った。そして、設計実験後に、被験者へ回顧的インタビューを実施し、上記で抽出した時点において実際に被験者に共感が生じていたかを聞き取り、確認することにより共感の発生を検出した。以上の手順により、共感とアブダクションの検出条件の妥当性を確認し、適宜修正・追加を行いながら、検出方法を定式化することを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は社会におけるcovid-19感染症の影響が急速に縮小し、学外での研究活動や学会活動に生じていた多くの制約はほぼ解消された一方で、ウクライナ危機の影響による航空移動経路に生じた新たな制約と急激な円安の進行により主に海外渡航を伴う計画の大幅な見直しが必要となったが、研究立案時に計画した内容は概ね達成できた。例えば年度当初は予定していた設計実験およびその後の回顧的インタビューの実施においても僅かな影響はあったものの、社会状況の安定化に伴い、大学内での諸実験に対する制約も解除され、特に大きな問題もなく予定通りかつ必要回数の設計実験および聞き取り調査を実施することが出来た。また、前年度に引き続き、オンラインでも可能であることが判明した設計者への追加の聞き取り調査や、研究遂行のためのミーティングは、ネット会議システムの併用により問題なく効率的に実施することが出来た。
一方で、学外活動については、上記にも述べた複数の理由により特に国際会議に関して、開催地によっては海外渡航に伴う新たなリスクが懸念され、渡航を見合さざるを得ないケースが生じた。しかしこの問題についても、昨年と同様の方針に基づき、オンライン開催やハイブリッド式により開催された学会を優先的に選択し、国内で開催された国際学会への参加、投稿を重点的に進めた結果、当初予定通りの学会における成果発表を行うことが出来た。以上を総括すると、社会状況の不安定化による影響は少なからずあり、研究計画の一部見直しを求められたものの、結果的に当初計画に沿う研究を実施できたことから、本研究はおおむね順調に進展できたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」にも記載したように、今年度の本研究はcovid-19感染症による影響がほぼ終息し、研究活動に対する種々の制約の段階的な緩和とオンライン会議システムの活用により、結果的にほぼ計画通りの成果を達成することが出来た。以上を踏まえて、続く次年度も、現時点では当初予定通りの内容と計画の下で遂行する方針である。現時点では、本研究に係る計画の変更は考えておらず、研究の遂行を阻害する新たな課題についてもその発生を認識していない。
次年度の研究計画としては、本年度の研究により妥当性を検証した理論モデルに基づき、設計におけるアブダクションを促進する外部からの介入方法を提案する。具体的な介入方法は、複数設計主体間での共感を促す方法と、それに基づく設計者のアブダクションの促進方法により構成する。そして、新たな設計実験を実施し、提案する介入方法により共感が促進され、それに基づいてアブダクションが誘発されることを確認し、刺激-応答性と実用性の観点から本介入方法の有効性を検証する。以上を踏まえて、最終的に設計者間の共感とアブダクションの関係性、また、アブダクション促進のための介入方法により構成する創造的設計のための実践的理論を構築する。
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