Project/Area Number |
22K12733
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90020:Library and information science, humanistic and social informatics-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 良孝 京都大学, 教育学研究科, 名誉教授 (80149517)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 公立図書館 / 集会室 / 知的自由 / 宗教グループ / ヘイトグループ / アメリカ公立図書館 / 図書館集会室 / ヘイトスピーチ / 宗教 / LGBT |
Outline of Research at the Start |
21世紀に入ってアメリカ社会の分断は深まり、ヘイトスピーチは従来から生じていたが、2017年のトランプの大統領就任によってそうした言論や行動は刺激を得た。この状況は図書館にも影響し、2017年にアメリカ図書館協会(ALA)はヘイトスピーチに関する見解を発表した。ヘイトスピーチが問題となるのは図書館集会室である。本研究は集会室利用に問題が生じるグループを宗教グループ、ヘイトグループ、反LGBTグループの3つにまとめ、具体的な事件の解明とALAの方針とを突き合わせる。そして図書館の思想的統合性という視座から論じる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「公立図書館集会室の理念と現実の確執に関する歴史と現状の分析」の目的は、以下の2つである。(1)アメリカ公立図書館の集会室をめぐる具体的事件を取り上げて、アメリカ図書館協会(ALA)が設定する図書館の基本思想との距離を測ること、すなわち理念と実践との確執を解明することである。(2)それを受けて、図書館の図書部門と集会室部門の思想的な乖離を指摘し、公立図書館としての思想的統合性を目指す必要性とそれへの障害について、学術的研究として論じることである。そのために本研究は宗教グループ、ヘイトグループなどによる図書館集会室の利用を中心に考究する。具体的な課題は以下の5つである。課題1「ALAの基本文書の研究」、課題2「宗教グループの集会室利用」、課題3「ヘイトグループの集会室利用」、課題4「反LGBTグループの集会室利用」、課題5「図書館の思想的統合性」。 令和4年度は、課題1「ALAの基本文書の研究」について、ALA知的自由部編纂『アメリカ図書館協会の知的自由に関する方針の歴史』(京都図書館情報学研究会, 2022)として出版した。これは図書館や集会室に関する基本文書について、その現状と歴史を解説した公式の編纂物で、本研究の前提を据えるものである。 令和5年度は公立図書館における集会室の思想と実践について全体的な歴史的研究を進め、「アメリカ公立図書館と集会室:概史」(相関図書館学方法論研究会 『社会的媒体としての図書・図書館』松籟社, 2023, p. 149-181)として発表した。また『テーマで読むアメリカ公立図書館事典』(松籟社, 2023)では、集会室、宗教グループの集会室利用、ヘイトスピーチと図書館といった項目を執筆して、各項目での中心となる思想や実践を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
5「研究実績の概要」で示したように、令和4年度はALAの集会室に関する基本的な考えを明らかにし、令和5年度はアメリカ公立図書館における集会室の思想と実践を歴史的研究によって解明した。これら2つは本研究プロジェクトにとって不可欠なものであり、本研究の枠組みや土台を構成するものである。それは本研究の柱である宗教グループやヘイトグループなどの集会室利用をめぐる具体的な事件や裁判を探究するについて、それらの事件を理解する解釈の枠を構成するものでもある。こうした全体的な思想と実践を本研究で先発させたのは、コロナ下で個別実証的な研究を支える一次史料の網羅的な入手に困難があるということがあった。 本研究の具体的な課題である「宗教グループの集会室利用」と「ヘイトグループの集会室利用」などについては、個々の事件、裁判事例、関係文献の収集につとめたが、コロナの終息がみとおせず、資料収集と資料整理などに事務補佐員を雇用しなかったこともあって、当初に計画していたほどに研究は進捗しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は「宗教グループの集会室利用」を完成させる。宗教グループについては1989年の「アメリカを懸念する女性事件」から後続事件(2008年まで)を視野に入れた論文をすでに発表している(川崎良孝「公立図書館というスペースの思想的総合性:集会室や展示空間へのアクセス:歴史的概観」『現代の図書館』48(3), 2010, p. 147-162)。しかし2010年代に入っても宗教団体などが各地で集会室の利用制限を問題にし、またALAは基本文書『アメリカの図書館における宗教』(2016)などを採択した。本年度は既発表の論文を後続の事件や動きを視野に入れて精緻に再検討しなおすとともに、2008年以降、現在にいたる宗教グループや図書館の動きを総括し、研究論文としてまとめる。 これと並行して「ヘイトグループの集会室利用」について、事件や図書館界の対処法を調べる。その場合、アメリカ公立図書館での問題や事件のみならず、アメリカでのヘイトグループに関わる重要な裁判事例(スコーキー事件, 1977年)、さらにカナダやヨーロッパ諸国のヘイトスピーチ規制法なども視野に入れる。そしてALAではヘイトスピーチに3つのアプローチがあることを解明する。 本プロジェクトの全体的な総括については、公立図書館における図書部門(資料部門)と集会室(および展示空間や掲示板)との思想的な乖離や統合という視点を重視する。
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