Project/Area Number |
22K12850
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90130:Medical systems-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
久山 佳代 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (00234526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末光 正昌 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10708770)
中山 光子 日本大学, 松戸歯学部, 専修研究員 (10419781)
山本 泰 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (80459586)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 口腔細胞診 / 深層学習 / 細胞診断支援システム / GUI / AI / 細胞判定一致率 / OrangeG好染性小型細胞 / 疣贅状病変 |
Outline of Research at the Start |
口腔細胞診は口腔がん検診に活用され,口腔がん発見率が約1%と精度が高い。ところが口腔細胞診は,子宮頸がんと比較して前癌細胞と正常細胞の形態的な差異が乏しいためにがん細胞の検出に経験と技術を要する。ところが近年,口腔がん死亡者数の増加に伴い口腔細胞診の検体数が急速に増加しているが,全国の細胞検査士および細胞診専門歯科医が細胞判定基準を学習する機会は決して平等ではない。本研究は,GUI(graphical user interface)による簡便な深層学習(DL)ツールを用いて口腔粘膜の前癌病変と口腔がん細胞をDLし,細胞診標本からこれらの症例を抽出できる細胞診断支援システムの開発を目指している。
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Outline of Annual Research Achievements |
深層学習では,現在Pythonというプログラミング言語を用いるのが主流となっている。深層学習を行うにはニューラルネットワークを理解するための数学の知識や,上記プログラミングに関する知識が要求されるが,GUI(graphical user interface)による簡便なディープラーニング・ツールも提供されている。たとえば,『Neural Network Console(SONY)25)』や『Maximo Visual Inspection(IBM)』といった視覚的なニューラルネットワークの構築や,画像を用意さえすれば画像分類や物体検出を実施してくれるアプリケーションも登場している。 2023年度は,SONY社Neural Network Console上で,ResNet-18を用いて良性病変及び悪性病変に出現するOrangeG(OG)好染性小型細胞の検討を行った。この細胞は,良性病変から悪性病変まで幅広く出現している。教師データに良性病変374枚,悪性病変180枚の画像データを用意し,検討対象のOG好染性小型細胞は良性病変64枚,悪性病変22枚用意した。教師データを用いて500回の学習を行い,OG好染性小型細胞の判定を行った。 上記のOG好染性小型細胞を評価した結果,カンジダ症や乳頭腫,疣贅型黄色腫にて出現するものを悪性と誤判定し,疣贅状癌にて出現するものを良性と誤判定する結果となった。口腔粘膜は,反応性変化によって核濃染傾向や細胞質の濃染化を示し,腫瘍に伴う変化との鑑別が困難なことがある。またインプラント周囲粘膜や疣贅状病変は,今回の学習結果によっても判定の難しさが現れた。 口腔細胞診は「難しい」ために発展が遅れたが,専用器材や標本作製法の進歩と画像解析法の応用により,AIによる細胞判定への道が繋がりつつある。しかし口腔粘膜病変は特異な環境故に、解決すべき問題も表出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
咬合回復治療としてのインプラントが普及し,インプラント装着者の全体割合は約3%に及ぶ。殊に歯科治療を専門とする本学では,インプラント装着者に対する細胞診を積極的に実施している。そこで,2023年度の研究対象には治療完了後のインプラント周囲粘膜も含めて検討した。ところがResNet-18を用いてOG好染性小型細胞を判定した結果,インプラント周囲粘膜に偽陽性判定が多く認められた。偽陽性判定の原因を探るべく文献渉猟を行ったが,インプラント周囲粘膜の細胞学的報告は認められず,口腔細胞診のAI判定の精度向上のための基礎研究としてインプラント周囲粘膜と天然歯周囲粘膜の細胞学的比較検討の必要性が浮上した。そこで2023年度は,インプラント周囲粘膜10症例,慢性辺縁性歯周炎10症例を対象に画像解析を行った結果,OrangeG好染性細胞(インプラント周囲炎50.3 [34.0-62.0], 歯周炎31.1 [11.5-47.7],EosinY好染性細胞(インプラント周囲炎36.5 [19.3-61.7],歯周炎16.7 [7.3-28.4]),Rightgreen好染性細胞(インプラント周囲炎7.5 [19.3-61.7],歯周炎48.5 [36.3-53.9])であった.統計解析の結果,Rightgreen好染性細胞の出現率は,2群間に有意差が認められた(p < 0.01)。インプラント周囲粘膜は有意に角化亢進がみられ,OrangeG好染性小型細胞を判定対象として取り扱う本研究では,教師データないし検討対象として除外すべきか,あるいは現況の口腔を取り巻く状況を反映して含めるべきか,さらなる検討の必要性が残された。現在,さらに症例を増やし,データ解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔細胞診は専用器材や標本作製法の進歩と画像解析法の応用により,AIによる細胞判定への道が繋がりつつある。しかし口腔粘膜病変は特異な環境故に、解決すべき問題も表出された。問題点の一つ目がインプラント周囲粘膜の偽陽性の高さであり,二つ目が口腔細胞診判定の鍵となる深層型細胞の教師データの選択である。口腔細胞診ではOrangeG好染性小型細胞と深層型扁平上皮異型細胞の多少が鏡検における判定の要となる。 深層型扁平上皮細胞は扁平上皮癌の症例のみならず,潰瘍等の炎症性疾患(良性疾患)でも観察されることがあるが,深層型扁平上皮異型細胞には明確な定義や判定基準が存在しない。そこで深層型扁平上皮(異型)細胞の鑑別根拠となるデータを蓄積し,さらには教師データの抽出が必要である。2023年度の段階で炎症群836個、SCC非腫瘍性異型群133個,SCC腫瘍性異型群288個の深層型扁平上皮細胞を抽出し,口腔細胞診専門歯科医により異型の有無により分類が終了した。2024年度にはこれらのテクスチャ解析を施し,画像解析による異型有無のカットオフ値を明確にする。さらにデータベースの深層型扁平上皮(異型)細胞の教師データを抽出する。2023年に行ったインプラント周囲粘膜細胞および深層型扁平上皮(異型)細胞を含めた教師データの深層学習を500回行い,口腔細胞診標本の細胞判定を行う予定である。 さらに判定結果の精度計算および偽陰性(偽陽性)症例の再検討を行う予定である。AIによる細胞判定は2値化による画像解析とは異なり,染色性や画像撮影等の各種条件に依らず精度を上げる必要性がある。細胞検査士ないし細胞診専門歯科医による精度(扁平上皮癌95%,口腔上皮性異形成83%)と同等以上を目指し,精度に影響を及ぼす要因解析,カットオフ値の明確化,さらに深層学習を可能な限り繰り返す予定である。
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