近代ドイツ哲学における自己意識理論の文化的・社会的側面に関する研究
Project/Area Number |
22K12955
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
嶺岸 佑亮 東北大学, 文学研究科, 助教 (50771143)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | ヘーゲル / 近代ドイツ哲学 / 自己意識 / 自己保存 / 承認 / 個体性 / シラー / ゲーテ / カント / フィヒテ / 美 / 自由 / 哲学 / ドイツ観念論 / 自己形成 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近代ドイツの哲学者であるヘーゲルの自己意識理論を手掛かりに、個人の自己形成の問題を哲学的に解釈し、その積極性を浮き彫りにするとともに、今日的意義を問うものである。自己意識問題の哲学的意義を見直すとともに、そこに同時に含まれる社会的・文化的側面にも光を当てることで、近代ドイツ哲学の射程を見直すことを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、ヘーゲルの『精神現象学』及びそれに先立つイエーナ期の講義草稿を手 掛かりに、自己意識理論の具体的な諸領域での展開可能性の問題に取り組むとともに、その基礎作業として、自己保存的な個体性の問題に取り組んだ。その具体的な成果は以下の通りである。 (1)ヘーゲルの自己意識理論は、自己意識がその都度異なる対象と関係するあり方を示すものである。またその際、対象はその都度固有の領域に位置付けられたものとして理解される。またその場合の領域は、文化的・社会的な性格や意義を有している。したがって自己意識は、常に具体的な文脈に於いて理解されるべきものである、ということが研究の結果として明らかとなった。 (2)自己意識は、自分自身を知るという自己知を通じて自己関係を形成する。その際、自己知は同時に、生きたものとしてのあり方をすることに基づき、自己保存を本質とすることを明らかにした。また自己保存が別の自己意識との関係を含みこんでおり、そこに承認の働きが成立することを明らかにした。以上の研究により、ヘーゲルのイエーナ期講義草稿における自己保存の問題が『精神現象学』における自己意識理論に背景にあることを解明した。 (3)ヘーゲルの自己意識理論について、カントの道徳哲学における道徳法則や自由の問題、古代ギリシア宗教における神話や運命の問題、およびキリスト教における悪の問題と関係づけて比較考察することにより、自己意識理論が近代ドイツ哲学の諸問題を引き受けて批判的対決を通じてさらに発展させるとともに、その背景に古代ギリシアが控えていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初予定していた通り、ヘーゲル哲学における自己意識理論の問題について、個人の自己形成の問題として取り組むとともに、その文化的・社会的側面についても具体的な諸領域に踏み込んで解明することができた。またそれに加えて、『精神現象学』における自己意識理論の背景にイエーナ期講義草稿の「形而上学」が重要な役割を果たしていることを明らかにすることができたことにより、ヘーゲル哲学の発展史の問題についても踏み込んだ取り組みが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間の研究では、主としてヘーゲル哲学に即して取り組んできた。3年目の研究では、フィヒテなどほかの哲学者にも考察対象を広げて取り組む予定である。また、哲学と生の関係にも踏み込んで考察することにより、自己意識の文化・社会的側面についてさらなる視野の広がりを得ることを目指す。そのために、フィヒテの1794年の『学者の使命』における学者と社会の関係についての理論の分析・考察を行う。相することで、自己意識の基盤としての現実の世界の構造について解明することを目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)