「悪」の統治実践と人間観をめぐる近現代日本の思想史的研究―監獄教誨・死刑・宗教―
Project/Area Number |
22K12987
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
繁田 真爾 東北大学, 国際文化研究科, GSICSフェロー (00862004)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 監獄教誨 / 教誨師 / チャプレン / 悪 / 統治 / 浄土真宗 / 死刑 / 教化 / 感化 / 懲戒 / スピリチュアルケア / 人間観 |
Outline of Research at the Start |
近現代の日本は人間の「悪」とどのように向き合ってきたのか。これは、司法や教育をはじめ、私たちのさまざまな社会構想の前提となる、根源的な人間観についての問いである。 「監獄教誨」と「死刑制度」に注目し、「悪」の統治実践の歴史を明らかにすることが、本研究の目的である。たとえば近代以降の刑罰は、世界的に「処罰」よりも「更生」を理念として成立した。しかし実際は、「処罰」と「更生」の二つの原理をつねに往復しながら展開してきたのが、近代の刑罰の現実である。 本研究では、こうした「悪」との向き合い方の歴史過程を具体的に明らかにし、これからの社会構想の基軸となるはずの人間観をめぐる、新しい学知の構築を目指したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、「近代日本における「監獄教誨」と「死刑」」を課題として、①史料収集・現地調査、②研究成果発表を中心に研究活動を行なった。また、③同課題と深く関連する最新研究について書評を発表し、④アウトリーチ活動にも積極的に取り組んだ。 ①では、福山市の道證寺において藤井恵照関係の史料調査とインタビューを実施した。 ②では、(1)大谷栄一・吉永進一・近藤俊太郎編『増補改訂 近代仏教スタディーズ』に「教誨師の百年」「仏教と戦争」を執筆した。(2)チャプレン研究会では、「日本で「ムスリム教誨師」は誕生するか」と題するコメントを行ない、現代の教誨師制度について問題提起を試みた。 ③では、本研究課題と深く関わる最新研究として、(1)亀山光明『釈雲照と戒律の近代』、(2)Adam J. Lyons, Karma and Punishment、(3)井川裕覚『近代日本の仏教と福祉』の書評を執筆した。国家と仏教、社会事業・福祉と宗教の関係史を探究した三著を詳細に批評することで、本研究の課題について考察を深めることができた。 ④では、(1)真宗大谷派の機関誌への寄稿を通じて、大正期以降の監獄教誨史の解説・紹介と、現代社会への発言を試みた(「真宗教誨150年の歴史を振り返る」第3・4回)。(2)名古屋矯正管区教誨師研修大会での基調講演「歴史から考える宗教教誨の現在と未来」では、監獄教誨の歴史を概観しつつ、宗教教誨の今後について現役教誨師たちと意見交換を行なった。(3)本願寺史料研究所公開講座での講演「監獄教誨と浄土真宗:その歴史と現在」では、監獄教誨史において浄土真宗が果たしてきた役割を概観し、その課題と可能性を展望した。(4)アメリカBerkleyで開催されたFoundations of Buddhist Chaplaincy : A Japan-US Dialogueでは、チャプレンの歴史と実践をめぐる日米比較と問題提起を通して、教誨制度の歴史を比較史的に考察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、一次史料の収集と現地調査を計画どおり実施し、研究課題にかかわる学会発表や書評の発表、さらにアウトリーチ活動を積極的に行うことができたので、研究は現時点でおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、近代日本における「監獄教誨」と「死刑」の関係史を明らかにすることが主な研究課題であった。次年度も主要な教誨師の基礎研究を進めつつ、近現代日本における「死刑」と「監獄教誨」をめぐる思想史の研究を継続したい。 具体的には、近代日本を代表する教誨師のひとりであり、死刑囚教誨師として知られる藤井恵照の基礎的研究を重点的に行いたい。藤井関係史料の調査や収集によって研究基盤を整備することが、本研究およびこれに続く研究にとってまず着手されるべき課題であると考える。そして収集した史料の分析を通して、近現代日本における「監獄教誨」と「死刑」の歴史を明らかにすることを目指したい。 以上の研究によって得られた成果は、学会発表や論文執筆等を通じて、引き続き積極的に発信していきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)