Project/Area Number |
22K13003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寺尾 佳子 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (10896236)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | イエズス会 / カステル神父 / 国際情報網 / メディア |
Outline of Research at the Start |
本研究は、18世紀前半フランスのイエズス会神父ルイ=ベルトラン・カステルを対象とする。カステルは音楽を視覚化する「視覚クラヴサン」の構想で知られる科学者だが、イエズス会系定期刊行物の主要寄稿者でもあった。ジャーナリストとしての側面に新たに光を当て、当時知識人の間で議論されていた、中国文明の歴史性と聖書の記述との整合性等、知の大転換に関わる問いにカステルがいかに取り組んだのかを分析する。それにより、カステルの思想とイエズス会的「普遍」知の関わりを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀フランスのイエズス会神父ルイ=ベルトラン・カステル(1688-1757)を対象としている。イエズス会の国際情報網との関連の元にカステルの学術的営みを捉え直すことにより、近代・啓蒙・科学的普遍知とイエズス会的普遍知とのせめぎ合いを浮かび上がらせることを試みる。 先行研究では、思想や科学、芸術等の学問領域の枠内でカステルの学説を考察する傾向にあり、カステルが所属していたイエズス会の背景に照らし合わせて研究することは稀であった。その理由には、音楽を目に見えるようにするという「視覚クラヴサン」の発明者としてのカステルの顔のみが知られていること、さらには、カステルが18世紀研究でさほど重視されていないこと等が挙げられる。本研究は、当時のイエズス会がアメリカ大陸や中国を含む全世界に情報網を張り巡らせていた事実と、カステルがその国際情報網に主要なジャーナリストとして関わっていたことに注目することで、カステルの活動をイエズス会のバックグラウンドに照らし合わせて包括的に研究することを試みている。 令和5年度は、前期は昨年度に引き続き、カステルがイエズス会系定期刊行物『トレヴー誌』のなかで担当した書評、とくにイエズス会宣教師ジョゼフ=フランソワ・ラフィトーの著作『アメリカ未開民族と古代の風俗比較』(1724)の書評を分析した。後期は、前期の研究に並行して、ラフィトーのアメリカと古代についての学説をカステルがいかに西欧に紹介し、啓蒙期の思想と関わっていくのかの考察を始めた。とくに、同時代にカステルの構想について最も多くの言及を残したドゥニ・ディドロの思想との関係に注目した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度は、上述(「研究実績の概要」)のように、まず昨年度に引き続き、イエズス会宣教師ジョゼフ=フランソワ・ラフィトーの著作『アメリカ未開民族と古代の風俗比較』(1724)についてのカステルの書評を分析した。研究を進めていくうちに、カステルやラフィトーという研究の蓄積が十分でない対象を分析すること、さらに、このような対象を、18世紀フランスにおけるイエズス会の海外宣教という複雑なコンテクストと関連づける作業にある程度まとまった時間を要することが分かってきた。そのため、海外宣教に関わるこの研究を継続しつつ、昨年度の後期には並行して、ラフィトーのものと共通してみられるカステルの神学的思想と、この思想と接点のあるディドロの1750年頃の思想との比較研究を行い、別の角度から本研究を進めることにした。したがって、当初の計画であった、カステルの海外宣教に関わるもう一つの重要な書評(中国宣教に関わるもの)の分析にまだ着手できておらず、研究はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は令和5年度に得られた成果を論文にまとめる作業に加え、ジョゼフ=フランソワ・ラフィトーの著作とそれに関わるカステルのジャーナリスティックな仕事についての研究をさらに深化させる。さらに、カステルの神学的思想と、この思想と接点のあるディドロの思想との研究も継続し、今後は1760年頃の思想との比較研究を行う予定である。
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