Project/Area Number |
22K13010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
桑原 夏子 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (90873357)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | フランシスコ会 / 聖母晩年伝 / 偽書 / 聖書外典 / ドゥッチョ / サンタ・マリア・マッジョーレ / アッシジ / ローマ / 聖母 / 図像 / 魂の被昇天 / 被昇天 / 地中海 |
Outline of Research at the Start |
聖母晩年伝は、9世紀から15世紀末にかけて地中海地域全域の聖堂を飾った重要な画題群である。聖母の晩年に関して聖書に記述はなく、代わりに初期キリスト教時代に数多くの偽書が編纂された。現在、9つの言語による 63点の偽書が確認されているが、それらが聖母晩年伝の図像の成立にどのように関係したのかは詳らかではない。 本研究は、偽書の内容を類型化し、物語の伝播の実態を浮き彫りにした上で、各時代・各地域に伝わった偽書の種類を明らかにし、偽書の示す内容と絵画の示す内容の対応関係の考察を通して、聖母晩年伝図像の成立を体系的に理解することを目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、正典とされる聖書に記述のない聖母の晩年の出来事について記されている偽書(聖書外典)について調査し、その内容と絵画の対応関係を調査・分析するものである。 本年は個別の偽書(聖書外典)のテキストといくつかの作例の対応関係の具体的な調査を行ったが、なかでも昨年度に調査の目星をつけたドゥッチョ(1255ー1319年)作、シエナ大聖堂主祭壇の両面祭壇画《マエスタ》(1308ー11年)について、これまで考えられてきたラテン語の偽書あるいはラテン語の偽書に基づく『黄金伝説』以外にも、ギリシャ語の偽書が典拠として用いられていることを突き止めたことは大きな成果であった。また、ヤコポ・トッリーティ作のローマ、サンタ・マリア・マッジョーレ聖堂アプシスモザイク(1288ー96年)に関しても、用いられた偽書(聖書外典)の内容をすべて特定することができた。このローマのアプシスモザイクはフランシスコ会出身の教皇ニコラウス4世の命によって制作されたが、おそらく同教皇のもとで制作された別の重要な聖母晩年伝作例として、アッシジのサン・フランチェスコ聖堂の上堂内陣壁画(チマブーエ作、1288ー92年)があげられる。制作年がほぼ一致するにもかかわらず、ローマのアプシスモザイク作例とアッシジ作例では図像が異なり、なおかつ、典拠として用いられた偽書も異なっていた。このことから、当時のフランシスコ会において、聖母晩年伝の図像化にあたり、複数の偽書を積極的に調査し、それらを組み合わせて用いていたことが明らかになった。 なお、本年度の研究成果を含むこれまでのすべての研究成果は、年末に名古屋大学出版会より『聖母の晩年ーー中世・ルネサンス期イタリアにおける図像の系譜』として刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
偽書が作られた5世紀から、聖母晩年伝作例の数が最も豊富な15世紀に至るまでの事例について、研究計画で示した事例の大半の調査を終え、その内容を単著として『聖母の晩年ーー中世・ルネサンス期イタリアにおける図像の系譜』として刊行することができたため、当初の計画以上に進展したと評価できる。 ただし研究成果の刊行にあたり、偽書の内容の物語類型の整理が大まかなものにとどまったこと、また個別の作例研究においてさらなる調査が必須と考えられるものもいくつか散見されたことも事実である。とりわけ、偽書の内容の物語類型の整理に関しては、それぞれの偽書の内容の抄訳を日本語にして提示する必要があったと反省している。また、本研究はそもそも、聖母晩年伝作例の最も豊富な15世紀に至るまでを研究範囲として指定したが、15世紀以降になって「なぜ聖母晩年伝の作例数が減少し、その代わりに聖母晩年伝のなかで最も劇的な場面である「聖母被昇天」だけがピックアップして描かれるようになったのか」という視座は、聖母晩年伝表象の発展を考える上で重要な問題である。この問題は当該研究課題の範囲とするところではないが、少なくとも「15世紀末における聖母晩年伝表象の減少」についての研究を深めることを今年度の研究指針とし、次の研究課題につながる問題提起を行いたい。 なお、本の刊行を最優先としたため新知見はすべて本に収録することろなり、論文執筆をすることはできなかった。本に収録した新知見に対し追跡調査を行い、論文執筆を行うことでより一層の研究成果の充実をはかりたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「現在までの進捗状況」で示したとおり、研究課題の大半の対象事例についての分析を終え、その内容を本として刊行することができたが、1、偽書の内容の物語類型の整理が大まかなものにとどまったこと、2、個別の作例研究においてさらなる調査が必須と考えられるものもいくつか散見されたこと、以上の2点が課題として残っている。報告者は単著『聖母の晩年ーー中世・ルネサンス期イタリアにおける図像の系譜』の英語版の作成を計画しているが、その英語版に向けて、上記2つの課題を解決することを今後の研究の推進方策とする。 とりわけ、2の個別作例研究の深化に関しては、2023年度は論文を成果として執筆することができなかったため、本に収録した内容に追跡調査を行った上で論文化することを目指したい。 また、15世紀以降になって「なぜ聖母晩年伝の作例数が減少し、その代わりに聖母晩年伝のなかで最も劇的な場面である「聖母被昇天」だけがピックアップして描かれるようになったのか」という問題点について、16世紀のカトリック改革、またイエズス会による布教戦略の点から研究できるのではないかとの予測を立てている。この点に関しては本研究課題の対象とする時代と地域を超えるため、次回の別の課題としたいが、その次回の課題に繋げるための研究推進方策として、15世紀末の事例を中心的に見直し、一つ一つの場面を詳細に表す聖母晩年伝表象が、次第に劇的な一つの場面(聖母被昇天)のみの表象へと変化していく現象について取り上げ、その理由を美術史の側から、また政治的・文化的・宗教的な要請の側から検討したい。
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