デジタル録音メディアのフォーマット研究―Mini Discの受容と聴取環境の変容
Project/Area Number |
22K13020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Kyoto Women's University (2023) Tokyo Metropolitan University (2022) |
Principal Investigator |
日高 良祐 京都女子大学, 現代社会学部, 講師 (60803400)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | MiniDisc / エアチェック / Digital Compact Cassette / フォーマット理論 / プラットフォーム研究 / afterlife / デジタル録音メディア / メディア技術史 / デジタルメディア研究 / デジタル録音 |
Outline of Research at the Start |
デジタルメディアに支援された私たちが「普通」のこととして享受している、モバイルで・編集可能で・制御された音楽の「聞き方」が、1990年代から2000年代にかけてどのように構築されてきたのか。そうしたデジタル録音メディアの端緒として位置付けられるMiniDiscの普及と衰退の歴史を軸にして明らかにすることが、本研究の目的である。その際、ジョナサン・スターンが提示した「フォーマット理論」の立場から、MiniDiscというメディアを構成するさまざまなフォーマットの作用に着目し、同時にその実証研究を通じてフォーマット理論の有効性について詳しく検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、初期デジタル録音メディアのひとつであるMiniDisc(MD)を対象としたメディア技術史的な考察により、音楽経験をめぐる「デジタル」化が日本社会において定着した過程を明らかにすることである。その際、MDでの録音・聴取という実践をめぐってなされた技術的・制度的・文化的な変容のそれぞれに目を向け、それらが複雑に交差する状況の解明を目指す。この歴史記述を通じて、ポピュラー音楽の聴取におけるデジタルメディアの位置づけを理解するための理論的基盤の構築・検証を行う。2023年度は研究実施計画に沿って引き続き実証的調査と理論的調査の双方を進めてきた。 実証的調査として、引き続き機材カタログ資料やMD関連機材の収集を中古市場の渉猟を通じて実施してきた。近年のレトロブームを背景にMD関連機材・資料も中古市場では値上がりが生じており、資料収集としては難航しつつある一方で、この現象自体が本研究の記録・考察するべき対象であると位置づけた。たとえば中古市場でのMD機材修理業者と接点を持ったことで、MDの「afterlife」に関するインタビュー調査を構想中である。また国立国会図書館での雑誌資料調査を通じ、80年代のカセットテープでの「エアチェック」を引き継ぐ文化実践として、90年代にはMDでの「デジタル・エアチェック」が喧伝されたことを主要な論点として取り上げることとした。 理論的調査としては、J.スターン『MP3:The Meaning of a Format』の翻訳作業をほぼ完了させたことで、MDの「フォーマット」を検討する際に批判的に扱うべき理論のマッピングと検証を進めている。また音楽聴取の「プラットフォーム」に関する論文執筆を進めるなかで、英語圏でのプラットフォーム/インフラストラクチャーに関連する議論を把握しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況が「やや遅れている」理由は、調査と発表に関する2点を挙げることができる。 まず実証的調査に関してMD関連機材等を中古市場で購入する際、所属大学の科研費執行ルールによって研究費を利用することが難しく、個人的に収集している点がある。また、2023年度より所属変更にともなって東京から京都に転居したため、国立国会図書館での資料収集に十分な時間を取るよう計画を立てられなかった。しかしこの点については、東京以外の居住者が国立国会図書館でスムーズに資料収集するテクニックを周辺の研究者からヒアリングできたため、今後は調査計画の立て直しが可能である。 また2023年度までに行った調査・考察について、学会発表や論文投稿で外部に発信する機会を得なかったことが進捗遅れのもう一つのポイントである。所属変更して1年目だったこともあり、学内業務や授業準備等で時間を取られ、思うように発信にリソースを割くことができなかった。この点については2024年度に積極的に発信を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、(1)ここまでの調査・考察で明らかになった内容を学会発表・論文投稿する、(2)MDの技術的な側面に関する調査としてインタビュー調査を進める、(3)MDのafterlifeに関する調査を英語圏のウェブ・コミュニティを対象に行う、(4)フォーマット理論の検討を進める、の4つを挙げることができる。 (1)に関しては、2024年度の社会情報学会、日本ポピュラー音楽学会での口頭発表と、それを踏まえた論文投稿を構想中である。(2)に関しては、これまでの調査で接触した中古機材修理業者のほか、SONYの技術開発担当者へのアプローチを検討中である。(3)に関しては、2020年代現在のMD関連商品の収集・発信の拠点はとくに英語圏のウェブ・コミュニティで行われていることが判明したため、引き続きそのコミュニティの観察と、必要に応じてオンライン・インタビュー等を実施することを検討中である。(4)に関しては、J.スターン『MP3』翻訳書の出版を踏まえ、関連イベントや研究会を実施する予定であり、そのなかで進める。また2024年度に発行予定『学術雑誌メディウム』5号はJ.スターン特集であり、私がゲスト・エディターを務めていることから、その作業を通じて理論的検証をさらに進めていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)