スペンサー及びシェイクスピア作品に見出される初期近代コモンプレイス文化の研究
Project/Area Number |
22K13077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
円浄 ゆり 津田塾大学, 学芸学部, 助教 (70932672)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 初期近代英文学 / スペンサー / シェイクスピア / コモンプレイス文化 / 学校教育 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、初期近代読者の思考体系を成型したコモンプレイス文化の観点から、スペンサーとシェイクスピアを主とする英文学作品の分析を行う。第一部では当時の暗記具テーブル・ブックに関する言及が、記憶術と融合したメタファーとして作品内でいかに昇華されているかを分析する。第二部では女性キャラクターたちの独白・哀歌で使用されるコモンプレイスが徳高さを演出する修辞表現としてどのような効果を発揮しているかを分析し、第三部ではスペンサー『羊飼いの暦』におけるジャンルとしての複合性が、コモンプレイス・ブック形式の雑記性と類似している点について考察する。本研究でコモンプレイス文化と英文学作品の相関性について追求する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初期近代読者の思考体系を成型したコモンプレイス文化の文脈で、エドマンド・スペンサーとウィリアム・シェイクスピアを主とする英文学作品の分析を行っている。「コモンプレイス(commonplace)」とは古典由来の共有知を指し、初期近代ヨーロッパでは、演説において修辞効果を高めるための格言を指した。初期近代グラマースクールでは、ラテン語習得のためにコモンプレイスを利用した学習法が導入され、生徒たちは教科書を講読する際に格言表現を抜き出し、項目ごとに分類・リスト化したコモンプレイスを暗記するよう指導された。このコモンプレイスを利用した学習法は初期近代ヨーロッパの読者間で普及し、初期近代英文学作品にもその影響を見出すことができる。本研究は三部構成であり、初年度である2022年度は、第一部となるハムレット王子とアーサー王子の記憶構造とテーブル・ブックの研究に取り組んだ。テーブル・ブックとは、蜜蝋や石膏でコーティングされた紙や板のことで、インクをつけた金属ペンで引っ掻くことで、文字を書いたり消したりすることのできる学習補助具を指す。このテーブル・ブックは、グラマースクールの生徒が綴りを練習する際や、コモンプレイスを暗記する際に利用されていたと考えられている。作品分析ではスペンサーの『妖精の女王』第一巻及びシェイクスピアの『ハムレット』を取り上げ、登場人物であるアーサー王子とハムレット王子の記憶に関する言及が、テーブル・ブックを利用した学習プロセスを前提とした叙述であることを指摘した。コモンプレイス文化の観点より、アーサー王子はテーブル・ブックの模範的利用者として描出されているのに対し(QF I.viii.44)、ハムレット王子はテーブル・ブックの情報が消去可能であることを強調しており、コモンプレイスを軽視する現代的感覚を持ち合わせていると結論づけた(1.5.107-12)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は三部構成であり、今年度は計画通り、第一部の研究内容をまとめて日本英文学会で発表することができたため。来年度は研究発表の内容を推敲し、国内学会へ論文を投稿する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究2年目にあたる2023年度は、第一部の研究内容について、学会発表で得たフィードバックをもとに論文を執筆し、国内学会誌への投稿に挑戦する。また、2023年度中に第二部の研究に着手し、スペンサーとシェイクスピア作品における女性登場人物たちとコモンプレイス文化についての関連性を、グラマースクール教育の文脈で分析する。海外調査もしくは国外学会で発表を行い、第二部での議論を国際的視野で精査する機会を設ける。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)