Project/Area Number |
22K13228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤澤 潤 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90801100)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 冷戦史 / ソ連史 / 東欧史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1989年から1991年にかけてのワルシャワ条約機構の解散過程を実証的に分析することで、冷戦終焉ならびにポスト冷戦秩序の形成過程に新たな視点を提供しようとするものである。その際、本研究では、ソ連に加えて、東ドイツやチェコスロヴァキア、ポーランド、ハンガリーなどの中欧諸国の動向に特に注目し、これらの諸国の間でワルシャワ条約機構の改革・再編や欧州新秩序をめぐってどのような協議がなされ、どのような問題をめぐって対立が解消されずに機構の解散にいたったのかを具体的に明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1989年から1991年にかけてのワルシャワ条約機構の解散過程を実証的に分析することで、冷戦終焉ならびにポスト冷戦秩序の形成過程に新たな視点を提供しようとするものである。 当初計画では、コロナ禍が収まり次第、ただちにモスクワで関連史料の収集・分析にあたる予定であったが、2022年にはじまったウクライナ戦争のために、モスクワでソ連側史料を閲覧できる見込みは立っていない。そこで、本年度は、中東欧地域でも特に資料の公開が進んでいるドイツの連邦文書館ならびに外務省文書館で、本研究に関連する史料の収集にあたった。特に外務省文書館では、ワルシャワ条約機構の解散をめぐる加盟国間の交渉について、多くの史料が保存されており、研究に一定の進展があった。それによると、加盟各国の方針は、おおよそ以下のようにまとめられる。すなわち、ソ連が当初より一貫してワルシャワ条約機構を大幅に改革したうえで、何らかの形で北大西洋条約機構(NATO)と接合することで、「欧州共通の家」を実現しようとしたのに対して、実際にワルシャワ条約機構加盟国の軍に侵攻された経験を持つチェコスロヴァキアは、同機構の早期解散を切望した。とはいえ、そのチェコスロヴァキアにしても、NATO加盟のみが唯一の選択肢だったわけではなく、何らかの形で米ソを含む欧州安全保障機構が形成されることで、新しいヨーロッパが形作られることを展望していた。これは、ゴルバチョフの「欧州共通の家」構想とは異なるとはいえ、NATOの東方拡大よりはソ連に受け入れやすい提案であった。アメリカにこの提案を受け入れる用意がなかったため、最終的に中欧諸国はNATO加盟へと傾いていくが、少なくとも1990年から91年にかけて、各国の外交方針は極めて流動的であったことが史料的に確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では、コロナ禍が落ち着き次第、モスクワで複数回にわたる史料調査を計画していたが、2022年のウクライナ戦争以降、現在にいたるまでロシアで調査を行うめどはたっていない。そのため、ソ連側の政策についての史料は史料集などに依拠せざるをえない。このことは、本研究を進めるうえで最大のネックとなっている。 本年度は、この研究遂行上の問題をできる限り解消すべく、8-9月にベルリンで史料収集ならびに研究協力者との意見交換を行った。その結果、外務省文書館や連邦文書館で、本研究課題に関連する重要な史料を数多く収集することができた。また、意見交換では、ワルシャワやプラハでの調査についても有益な情報を得られたことから、次年度の史料調査の準備に弾みがついた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は本研究課題の最終年度にあたることから、本年度ベルリンで収集した史料の分析を急ぐとともに、ワルシャワとプラハにおける史料調査を進め、本研究で得られた知見を査読雑誌に投稿する予定である。 その際、最大の障害となるのが、モスクワで史料調査を行わないままソ連の政策について分析せざるをえないという方法論上の問題である。実際、ソ連の動向をソ連の一次史料を用いて確定することができないために、ソ連側の動向について本研究はやや弱い傾向にある。とはいえ、ウクライナ戦争が早期終息する見込みがたたず、ロシアでの調査は難しい状況が続くと考えられることから、本研究では今後も中東欧諸国の史料とロシアの刊行史料を組み合わせることで、中東欧のみならずソ連の政策についても最大限実証的に解明を進める予定である。
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