中近世アウクスブルクにおける公衆衛生と健康ポリツァイ:ペスト対策を中心に
Project/Area Number |
22K13235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
渡邉 裕一 福岡大学, 人文学部, 准教授 (30804314)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 感染症・疫病史 / 生活環境 / 健康ポリツァイ / 医療ポリツァイ / 公衆衛生 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、申請者がこれまで進めてきた帝国都市アウクスブルクの生活必需品供給および水管理政策の実態解明という研究実績を踏まえ、中世後期から近世にかけての帝国都市アウクスブルクにおける公衆衛生と健康ポリツァイの実態解明を目指す。さらに、新型コロナ感染症の世界的流行(パンデミック)を経験して歴史的な疫病研究の重要性が高まっている現状を踏まえ、とくに中・近世アウクスブルクにおけるペスト対策の展開に着目して上記課題へのアプローチを試みる。申請者が進めてきた都市環境史という領域に、疫病・感染症という要素を付け加えることで、新たな中・近世ヨーロッパの都市像を提示することを最終的な目標とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の成果としては、2022年10月に開催された成城大学経済研究所の第92回講演会の講演録「黒死病後の世界―繰り返すペスト被害と都市の疫病対策」を成城大学経済研究所『年報』(36号、2023年4月刊行)上で一般向けの平易や文章で公表することができた。また、昨年の帝国都市アウクスブルクの疫病対策の展開を、都市のユダヤ共同体の動向との連関を踏まえて考察した報告「中世後期アウクスブルクにおけるユダヤ共同体と「包摂する暴力」」を、2023年度九州西洋史学会秋季大会シンポジウム(於・福岡大学、2023年11月11日)にて実施した。このシンポジウムは、科研費基盤研究(B)「中近世キリスト教世界における「包摂する暴力」」(研究代表:甚野尚志早稲田大学教授)との共催で実施され、本プロジェクトの内容が他の研究テーマと接続する可能性の手ごたえを得ることができたのは大きな成果であった。 また、本研究プロジェクトと同様の問題意識をもった著書である佐藤猛・佐々木千佳編『ペストの古今東西―感染の恐怖、終息への祈り』(秋田文化出版、2022年)の「新刊紹介」を『史学雑誌』(133(2)、2024年2月)に執筆した。また、都市の公衆衛生上の重要な課題となる水利技術の歴史について、近世オランダの治水史を分析した著作である中澤聡『近世オランダ治水史―「健全なる河川」と側方分水をめぐる知識と権力―』(東京大学出版会、2023年)の「書評」を『西洋史学論集』(61号、2024年3月)に発表した。本科研プロジェクトの成果を広い問題領域のなかで考察するうえで、いづれも大きな示唆を得られる作業となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度、新たな課題として掲げた、都市の疫病対策とユダヤ共同体の動向の関連性を探るという目標については、上記の九州西洋史学会の秋季大会シンポジウムの報告にて一定の方向性を示すことができた。また、2024年3月には、ドイツのアウクスブルクに資料調査を実施することができ、本プロジェクトに関する最新の資料等を収集することができた。あわせて、他の研究プロジェクトとの協同の方向性や成果発表の場についても見通しを得ることができたのは大きな成果といってよいだろう。 ただし、ユダヤ共同体の動向把握という新たな課題が発生したことで、当初の研究実施計画で立てた、①公衆衛生、②健康ポリツァイという二つの視点から、都市の疫病対策の展開を追求するという課題については、十分に実現できている状況とは言えない。公衆衛生の問題については、とくに都市の水利管理技術、とくに排水技術の問題について、より堅実な史料調査が必要となろう。また、健康ポリツァイの視点については、アウクスブルクの都市当局による疫病対策について、より丁寧に分析を進める必要がある。以上が、最終年度の課題として積み残されている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2024年度は、これまでの口頭報告の成果を文章化し、成果として公表していくとともに、上記の課題である①公衆衛生、②健康ポリツァイについての調査・考察を同時並行して進めていく。前述の「中世後期アウクスブルクにおけるユダヤ共同体と「包摂する暴力」」については、2025年3月刊行予定となる九州西洋史学会『西洋史学論集』にて、特集原稿として掲載予定となっている。あわせて、比較都市史研究会の企画「危機の時代における都市の革新性と持続性」にも、本プロジェクトの成果の一部を寄稿する予定としている。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)