エジプト第二中間期における葬送儀礼の再構築とその戦略性の復元
Project/Area Number |
22K13239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山崎 世理愛 早稲田大学, 文学学術院, 講師(テニュアトラック) (50844164)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 古代エジプト / 中王国時代 / 第二中間期 / 葬送儀礼 / 装身具 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、「古代エジプトの葬送文化は中王国時代から第二中間期にかけていかに変化したのか」という大きなテーマのもと、特に死者を神と同一視するために重要なアイテムである装身具を用いた葬送儀礼の変容・展開を明らかにする。 具体的には、まず木棺装飾や葬祭文書をもとに、儀礼に用いられるべき装身具の種類や構成、配置、そして儀礼の思想的構造を明らかにする。次に考古資料を集成し、実際に副葬された装身具の種類や構成、配置の分析から、儀礼の実践的構造を考える。最後に、儀礼を戦略と捉えた上で、政治的混乱期と言われる第二中間期において、葬送儀礼は社会的な状況に合わせどのように再構築されたのかを考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、まず分析に向けて第二中間期に年代付けられる各種資料を集成した。特に、リシ棺と呼ばれる当該期に特徴的な人型棺を集めた先行研究をもとに、本研究で対象とする装身具に焦点を当て整理した。さらに、海外の博物館での実見調査も実施した。 また、これまで研究を進めてきた中王国時代の様相を一層詳細に検討し直し、第二中間期のリシ棺や一部考古資料との比較をおこなった。具体的には、中王国時代初期から体系化された装身具を被葬者に捧げる儀礼について、棺装飾(=オブジェクト・フリーズ)と実際の考古資料をもとに儀礼に用いられる装身具の変遷を追った。その結果、中王国時代前期には地方で局地的に取り入れられていた装身具が中王国時代末に中心地の墓で見られるようになり、さらにそれが第二中間期には主要な装身具になることが判明した。つまり、中王国時代前期に地方で局地的に実践され姿を消した儀礼が中王国時代末に北部エジプトの中心地で再度行為化され、それが第二中間期の南部エジプトへ継承されるという流れである。その背景として、地方の中部エジプト以南ですでに価値が認められていた儀礼を中王国時代末に王族など上層が取り入れることで、今後の支配で重要になる南部を内的に取り込もうとした可能性を考えた。そしてそれが第二中間期には一層確立されていったと推測される。 第二中間期の儀礼や埋葬習慣は、中王国時代の中心地(=北部)の伝統と第二中間期の中心である南部の伝統が融合していると言われてきたが、そのなかで中王国時代の伝統とは典型的なものだけでなく、かつて地方でのみ取り入れられていた要素が強く見られる点を指摘したことは、中王国時代から第二中間期の展開を復元するうえで重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二中間期の編年や先行研究の問題等から、リシ棺以外の資料集成が予想以上に難航しているが、比較対象である中王国時代の分析はさらに深めることができており、予備的な分析は進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き第二中間期の資料集成を行い、分析と考察を進める予定である。また、本研究の最終目標(=中王国時代から第二中間期における装身具を用いた葬送儀礼の変容と再構築の様相を明らかにし、そのときどきの社会における儀礼的実践を考察する)を達成するため、第二中間期に社会を再生産するうえで装身具を用いる葬送儀礼がどのように機能したのか、理論的な見地も含めて考えていきたい。第二中間期の資料的な制約については、各墓の情報を詳細に整理し定性的な分析を軸に据えることで対応していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)