How does alpine vegetation control water discharge in alpine zones?
Project/Area Number |
22K13246
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 04010:Geography-related
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
榊原 厚一 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40821799)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
|
Keywords | 高山帯 / 土地被覆 / 水貯留 / 放射性ラドン / 酸素・水素安定同位体比 / 水質 / 水流出 / 植生 / 同位体 |
Outline of Research at the Start |
高山帯の水循環系の理解は,持続的な水資源利用や洪水・土砂災害の対抗策を検討する上で極めて重要である.本研究では,高山帯の植生の有無に着目し,高山帯植生部の水貯留・流出機能を新たに評価する.北アルプス乗鞍岳高山帯を研究対象とし,水文・気象観測とトレーサーを用いた流出水の成分分離を実施し,水循環過程をモデル化する.この研究の成果は,気候変動に伴う高山帯水環境の将来予測に貢献できるだけでなく,近年頻発する洪水・土砂災害の発生予測技術の発展へ波及効果が期待できる.
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高山植生が水貯留・水流出をどのように制御しているかを明らかにすることを目的として実施している.令和4年度は,上流部が裸地である裸地流域と,ハイマツ林が優占する植生流域に対して試験流域を構築した.各試験流域において,降水量・渓流水位を5分間隔で観測し,渓流水・湧水を定期採水した.採水した試料は放射性ラドン濃度,酸素・水素安定同位体比,溶存イオン濃度の分析をした. 裸地流域では,雪渓の融雪が進むと流量が無くなり,降水時にのみ一時的な渓流が形成されるようになった.一方で,植生流域は降水時の流量の増大傾向は裸地部と同様であるが,無降雨期間にも渓流は涸れることなく存在していた.水質においては,植生部流域と比較して裸地部流域の渓流水でpHが低く,溶存成分量が少ない特徴があった.また,裸地部流出水中のラドン濃度は0~2.5 Bq/Lであり,融雪期においては融雪水のラドン濃度と同様に非検出であった.植生部流出水のラドン濃度は,4.2~7.1 Bq/Lであり,採水対象とした試料のなかで最も高濃度を示した.植生部流出水の放射性ラドン濃度は,7.1 Bq/Lを検出した時を除き,大きな変動を示さなかったことから,地質からのラドンの供給と放射壊変速度が釣り合う平衡状態となっているものと考えられた.さらに,夏季降水と融雪水の酸素・水素安定同位体比において,融雪水と比べ夏季降水のd値が明らかに低い傾向を示した.融雪期の裸地流域の渓流水は融雪水の同位体組成に近い傾向を示し,融雪期末期ではその同位体比は夏季降水の組成に近づいた.一方,植生流域の湧水の同位体組成は,観測期間中に大きく変動せず,融雪水と夏季降水の中間の同位体組成を有していた.以上のことから,植生流域には,裸地流域と比較して,滞留時間の長い地下水が存在しているものと考えられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマを遂行するための試験地を予定通り構築でき,目的達成のための核となる水文・水質データが取得できた.さらに,放射性ラドンを分析するスキームを構築し,多くの試料を短時間で分析できるような環境を形成した.基礎水質項目をデータとして,高山帯植生部の土壌層において,水貯留機能があることを示した成果を,国際誌「Journal of Hydrology x」へ受理させることができた.すべての事項に対して,次年度以降の調査・解析につながる基盤が作成できたため,「当初の計画以上に進展している」との判断をした.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度も水文試験流域において継続的に観測を実施する.令和4年度に,植生流域において水の貯留機能が存在している可能性を国際誌に公表できた.その成果の課題として,植生流域のどの部分のどのような性質によって水貯留機能が発揮されるかを明らかにする必要があると考えた.そのため,令和5年度では,植生部土壌層に着目をした研究に着手する.高山帯土壌水文特性は先行研究例がほとんどなく,未解明な部分が多い.したがって,土壌の透水性や水分特性曲線等の情報を得る.さらに,土壌水の採水を実施し,流出に寄与すると思われる土壌水の水文化学情報を得る.また,当初の計画の通り,自動採水器を現場に設置して,渓流水水質のモニタリングを実施することで,植生流域における流出発生過程の解明を試みる.
|
Report
(1 results)
Research Products
(11 results)