学校教育の知識観がアフリカ狩猟採集社会にもたらす影響に関する言語社会化研究
Project/Area Number |
22K13263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
園田 浩司 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20795108)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 学習者の認知 / 学習環境 / 学校教育のメタファー / 学校化された思考法 / 社会化 / 私有財としての知 / 知識観 / 狩猟採集社会 / 自立共生的な教育 / 言語社会化 |
Outline of Research at the Start |
学校教育には現在、持続可能な社会の実現に向けた学習者を育てる役割が期待されているが、他方で、学習者間の知識の多寡を問うたり、協同学習を阻害することによって「私有財としての知」という知識観を学習者にもたらし、競争的信念を内面化させるとも指摘されている。本研究では、この「私有財としての知」という知識観の観点から、カメルーンの狩猟採集社会に学校教育がもたらす影響を論じる。「私有財としての知」という知識観の学習が、平等主義社会と呼ばれてきた狩猟採集社会に、どのような価値の内面化(=制度化)をもたらしているのか、社会信念や規範の習得を言語使用の観点から調査する言語社会化アプローチを援用しながら調査する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「私有財としての知」という知識観の観点から、カメルーンの狩猟採集社会に学校教育がもたらす影響を論じる。 今年度は、引き続き世界的に「コロナ禍」の状況に設定されており、安全な渡航(出入国)が困難であると判断したことから、国内において、まずは学校教育研究をめぐる報告者の論点について整理した。カメルーン狩猟採集社会における学校教育をめぐる相違点や問題点(とりわけ、学校教育制度ではなく、学習環境における学習者の認知という点に着目して)に整理し、出版した(園田, 2022)。また国際学会などでの参加・発表と分科会での質疑応答を通して、文化人類学や教育人類学の考え方において、小規模社会の学習環境を学校のメタファーを用いて論じる問題点について気が付いた(Sonoda, 2022)。なぜ私たちが「教えること」とか「学ぶこと」について考えるときに、学校のメタファーを使うのかをそもそも問わないといけないのではないか。対象を分析するための分析枠組みにおいて、そもそも分析者が、学校的まなざし(学校化された思考法)を持ち込んでしまう問題について整理した。こうした分析視角の課題が見えてきたことによって、来年度以降に予定している海外調査に生かす手立てを探っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「コロナ禍」(とりわけ日本における)のスキームにおいて、安全な出入国が日本、カメルーンの両国において確保されていないことから、渡航を見送らざるを得なかった。当初予定していたカメルーンでの学校教育に関する資料収集や現地調査における聞き取りが実施できなかった。かわりに、国内において、子どもの学習環境としての学校教育が抱える問題、またそれらの学習環境の特徴について、学習者の認知的側面の観点から捉え直す作業をおこなった。学習・教育の人類学研究者であるJean Lave、Etienne Wenger、David Lancyによる研究をはじめとした教育・学習論の再検討を進めた(とくに国際学会でのLancy氏とのやりとりの中で、問題の焦点化が可能となった)。そこから見えてきたのは、学校が持つ学習環境の特徴だけではなく、地域の学習場を「学校教育のメタファー」を用いて分析する、分析者の視点の問題であった(「学習の商品化commoditization of learning」「日常のなかの教室Everyday Classrooms」)。まずは、学校教育のメタファーを用いずに、地域の学習場をいかに記述することが可能か、という問いが新たに立った。
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Strategy for Future Research Activity |
安全な出入国が日本・カメルーン両国において確保され、かつある程度の政情安定が認められると判断できれば、現地調査が可能となる。その場合には、当初の計画に沿って研究を進めていく予定である。しかし、そうでないと判断される場合には、2年目となる今年度も引き続き、国内での資料収集、学校教育研究者らとの意見交換、また、これまでにフィールドで得られた調査データの見直しをもとに、問題の精緻化と理論化をおこなっていく。具体的には、カメルーン狩猟採集民バカ・ピグミーの人々の日常的なやりとりに埋め込まれた学校言説、とりわけ学校からの影響がみられる価値の言説である。「学校教育のメタファー」は、人々の日常的なやりとりの中にも見ることができると考えられる。そこで、どのような社会文化的文脈の中で、何に対してそうしたメタファーが用いられるか、またそうした語りがどのような社会的現実を作りあげているかについて、データを整理する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)