Project/Area Number |
22K13282
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
磯村 晃 大阪大学, 大学院法学研究科, 招へい研究員 (30870878)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 議院内閣制 / 政府と議会の権限関係 / 執行権概念 / 会派の統制的意義 / 会派の統制権 / 議員の統制権 |
Outline of Research at the Start |
議院内閣制において内閣と国会の関係は通常、「内閣・与党」対「野党(反対派)」として生じる。つまりここでは内閣と国会との間で「権力の交錯」が生じる。本研究は日本国憲法も採用する議院内閣制の下で、内閣と国会それぞれの権限行使の限界をどのように憲法的に画することができるのかをドイツ公法学に依拠して探求する。ドイツの権力分立論は2000年代以降に新展開を遂げ、執行権概念も議会の統制の及ばない固有領域を前提とする従来型のものから《相対的に自立した執行権》へと再構成された。本研究は、この権力分立論の新展開を受けて議会の統制権(とくに反対会派や議員の情報権)の射程がいかに捉え直されているのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、議院内閣制において議会や議員と同様に法主体として把握し得る会派に着目し、会派が政府統制にとっていかなる意義を有するのかを比較法的に探求した。具体的には、政府統制の典型であり、ドイツでは政府に対する議会の「最も強力な武器」とも言われている議会調査権の行使において、会派に特有の統制的意義はいかなる点に見出されるのかを研究した。その結果、公開の下で行使される調査権を政府統制のための権限として議会に行使させる動力源に会派がなり得るという点に会派特有の統制的意義があることが明らかとなった。 以上の比較法研究の重要性は、日本では知られていなかった「公開」(憲法57条)の新たな解釈可能性を明らかにした点にある。すなわち、従来の日本憲法学において「公開」は「傍聴の自由、報道の自由および会議録の公表」として把握されてきた。他方で、本年度の比較法研究で明らかになったのは、ドイツ公法学では、会派を動力源とした議会による調査権行使に際して要請される「公開」(基本法44条)が政府統制に不可欠のものとして統制的に把握されているということである。憲法57条の「公開」を、従来の日本の憲法学のように三つの構成要素から成るものとして把握するのみならず、ドイツの通説と同様に政府統制にも資するものとして把握することができるならば、基本法44条と同様の少数派調査権のあり方を、日本国憲法の解釈として導き得るのではないか。例えば日本国憲法は、「議院の総議員の4分の1以上の要求」に基づく「臨時会の召集」を「内閣」に対して義務づけている(憲法53条)。そしてこの臨時会において国会は、「公開」(憲法57条)で「国政に関する調査」(憲法62条)を行うことができるとの解釈が解釈理論上可能であること、またその際に前提となる「公開」の統制的把握がドイツ公法学では一般になされていることが本年度の研究で明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、本研究課題を遂行するために割り当てられた期間の初年度に該当する。研究計画を作成した時点では、議院内閣制における会派の統制的意義に関する研究には、2年を要することが想定されていた。しかし上述のように、この研究を研究期間の初年度である1年目に遂行することができ、その成果も発表することができた。 2022年度も、新型コロナウイルス感染症が依然として蔓延しており、計画当初に予定されていたドイツでの研究者へのインタビュー調査を行うことはできなかった。しかし、2022年度末には、本研究でも取り上げ、上述の少数派調査権の研究で優れた業績をもつMasing教授(フライブルク大学教授、元連邦憲法裁判所判事)を迎えて行われた研究・討論会において本研究について報告し、さらに同教授に幾つかの質問をする貴重な機会も得ることができた。その際に得られた多くの有益な回答および助言は、今後に予定されている研究課題の遂行を、研究計画当初よりも円滑にし得るものである。以上の状況からして、本研究はおおむね順調に進展していると言い得る。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究では、会派特有の統制的意義を明らかにすることができた。それはすなわち、議院内閣制における法主体の一つに数えられる会派は、一定の定足数を満たす限りにおいて、政府統制を議会に行わせる動力源となり得るというものであった。例えば、基本法44条によれば、「議員の4分の1の動議」があるとき、連邦議会は、政府統制のための「最も強力な武器」と言われる調査委員会を設置する義務を負うが、この動議は大抵の場合、会派によって、とりわけ政府・与党に反対する立場をとる会派(反対会派)によって提出される。これによって反対会派は、議会全体を政府統制のために活動させることができるのである。
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