Project/Area Number |
22K13300
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05050:Criminal law-related
|
Research Institution | The University of Tokyo (2023) Waseda University (2022) |
Principal Investigator |
北尾 仁宏 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (50897593)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
|
Keywords | 危険引受け / 臨床試験 / CHIM / ヒトチャレンジ試験 / 優越的利益 / 自己決定の利益 / 法令行為 / 危険運転 / 違法性阻却 / 社会的相当性 / 治験 / 刑事責任 / 正当化 |
Outline of Research at the Start |
危険行為の遂行に被害者が同意を与えても、重大結果発生時に行為者は通常処罰される。例えば、危険運転において好意同乗者が死傷しても運転手には犯罪が成立する。 他方、治験・臨床試験(特に第1相)も、重大結果が生じるリスクの存在自体は確実だが、それでも被験者は実験に参加する。この点で被験者と好意同乗者は構造的に同一である。しかし、重大結果が発生すれば危険運転と同様に実験者をおよそ処罰するとならば、新薬等の開発もおよそ不可能となってしまう。 そこで本研究は、被害者自身がリスクを取ったこと(危険引受け)それ自体を理由とする不処罰化のための明確な法理論(具体的には、好意同乗者と被験者の分水嶺)を探求する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、被害者自身がリスクを取ったことそれ自体を理由とする不処罰化を導く法理論(具体的には、危険運転致死傷罪における好意同乗者事例における運転者の処罰と臨床試験等における被験者事例の実験者の不処罰に共通する法的基盤)として、危険引受けを通じた違法性阻却・正当化を模索し、その実体的根拠と機序を明らかにすることを目的とする。 第二年度である2023年度は、前年度に引き続き日本法における先行研究も踏まえながら、①同意論・過失犯論との異同及び危険引受けにおいて想定されている「危険」(リスク)それ自体の意義・性質を明らかにするとともに、新たに②具体的な被害者として所謂ヒトチャレンジ試験の被験者を措定することで論点の明晰化と深化を図った。 ①については、優越的利益原則を正当化原理一般に作用する上位概念として主軸に据えつつ、被害者に健康面での実益の無い場合には、従来一部見解が重視してきた被害者の自律を自己決定の利益に係る必須の考慮要素として下位基準化し、利益評価自体に取り込むことで初めて、危険引受けを通じた正当化が図られ得るとの結論を得た。他方、被害者に健康面での実益が見込まれ得る場合には、侵襲的行為であれ必ずしも同意やインフォームド・コンセントに拘泥する必要がない可能性も示唆された。 ②については、敢えて(COVID-19その他の場合によっては致死的な感染症も含めた)疾患の感染を惹き起こすことが目的の研究である以上、その正当化には従来の同意論・危険引受論が想定してきた以上の優越的利益が求められると考えられる、また特にオランダに関する調査を通じて得られた、研究者個人単位での正当化よりもむしろ法令行為的な考えに基づく研究関与者全体に渡る正当化が志向されている旨の情報から、危険引受けの限界が示唆される、との結論が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では引き続き、①日本法、②ドイツ法、③イギリス法(イングランド・ウェールズ)、④低地諸国法(オランダ法等)に⑤リスク学の見地も統合しながら、危険引受けの実質化を達成することを企図している。前年(2022年)度の内に①日本法及び⑤リスク学の検討については私見の大枠も定まっており、2023年度にはこれに③イギリス法に関する検討も加えて複数の原稿に結実させることが出来た。④低地諸国法についても検討が進み、本属先で参画中の別プロジェクトでオランダにおける現地調査に赴いた際には、合わせて当地の研究者との間で本研究に係るインタビューと意見交換の機会も得られ、そこで得られた知見を基に新稿をまとめるべく追加の調査を実施中である。②ドイツ法に関する検討も比較的順調に進行している。前年度の遅れも挽回できたと考えられる。よって、「おおむね順調に進展している」。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度中に私見の大枠に関しては原稿化できた。最終年度である2024年度は、その精緻化とさらなる具体化を図る。そこで、第一相試験及びヒトチャレンジ試験を材に危険引受けによる正当化の機序と限界を詰めるとともに、外国法研究により得られた法令行為という途についても合わせて検討を試みる。法令行為については日独の対比も興味深いものと考えられることから、2024年度は特にドイツ法に対する検討を中心に据えつつ、必要に応じて欧州における現地調査も行う。それらの成果を踏まえて、本研究全体の結論に当たる論稿の公表を当座の最終目標とする。
|