Project/Area Number |
22K13302
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05050:Criminal law-related
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
上田 正基 神奈川大学, 法学部, 准教授 (00758253)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
|
Keywords | 責任主義 / 自由意志 / 刑事立法論 / 自由 / 責任 / 非難 / 他行為可能性 / 刑事立法 / 決定論 / 非両立論 / 両立論 / 刑事立法学 / 法人処罰 / AI |
Outline of Research at the Start |
他行為可能性という意味での「自由意志」を前提とする、刑法学上の責任主義は、自由意志を有するとされる人間のみが刑罰による非難の対象となり得るという形で、刑事立法の限界を画する。しかし、刑法学以外の分野では、他行為可能性という意味での自由意志の存在それ自体や、道徳的責任の前提となる自由意志に対して懐疑的な議論がなされている。 本研究では、そのような議論を踏まえて、刑事立法の限界を画定し、その《良さ》を分析・評価するに際して、責任主義が果たす役割について再検討する。本研究によって、法人やAI等の人間以外のものを対象とする刑事法規制のあり方についても示唆を与えることになると考える。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、2022年度に検討した他行為可能性としての自由と決定論との非両立性、源泉性としての自由と決定論との非両立性、及び道徳的責任と非決定論との非両立性を前提として、自由意思懐疑論(Free Will Skepticism)を検討し、当該立場から主張される刑罰制度に代わる制度構想について、関連文献を収集、調査した。とりわけ、自由意志懐疑論を基礎として応報刑論(応報主義)を拒絶し、自由意志を前提とする道徳的責任なしで犯罪行動に対処する方策として「公衆衛生―隔離モデル」を提唱するGregg D. Carusoの見解については、応報主義を拒絶する根拠、及び「公衆衛生―隔離モデル」が現行の刑罰制度と比べて有する利点として主張されている部分を中心に検討した。 その結果として、自由意志観念ないしそれに基づく刑罰制度が社会的にコストをもたらしているという視点を獲得することができ、その視点に基づいて刑罰制度を立法論的にも検証することが可能になったと考えている。 なお、他行為可能性としての自由と対比され、決定論と両立するものとして主張されている源泉性としての自由(Harry G. Frankfurtが主張する二階の意欲説等を含む自由の源泉性モデル)、及び当該自由と決定論との非両立性を論証する操作論証(Manipulation Argument)を中心とする2022年度における検討、読解の結果については、2024年度中に論文として公表される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「刑事立法が責任主義に適合していることによってもたらされる社会的便益・費用を明らかにする」という目標、及び「自由意志を前提とする責任主義が刑事立法の限界を画するべきか否か、責任主義が問題とされてきた場面で、より望ましい政策的帰結をもたらすような、より《良き》刑事立法はどのようにあるべきかを考察する」という目標について、自由意志懐疑論を前提とする刑罰制度に代わる制度構想、及び自由意志観念がもたらす社会的コストを検証するという形では達成することができた。法人やAI・ロボットに関する刑罰制度という具体論の検討は不十分であるが、それは、人に対する制度として刑罰制度に代わる制度構想を検討する重要性が予想を上回ったからである。 以上の理由で、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
自由意志懐疑論に基づく刑罰制度に代わる制度構想、並びに自由意志観念及びそれに基づく刑罰制度がもたらしている社会的コストに関する検証をさらにすすめていく。また、それに関する文献が日本において詳細に紹介されているわけではないことから、それらを紹介し、より望ましい刑罰制度(あるいは、それに代わる制度)に関する私見を公表する論文の執筆を目指す。法人やAI・ロボットに関する刑罰制度という具体論の検討については、人に対する制度設計をより詳細に検討した後に行うことが、今後の研究方針として適切であると考える。
|