Project/Area Number |
22K13338
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
梅川 葉菜 駒澤大学, 法学部, 准教授 (60780517)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 連邦制 / 地方自治 / 権力分立性 / 現代アメリカ政治 / 分極化 / 保守派 / アメリカ政治 / 地方政治 / 州政治 / 法と政治 |
Outline of Research at the Start |
米国政治といえば、まず想起されるのは連邦政治であり、それは米国政治学でも同様である。この理由は、19世紀末頃からの経済、交通、通信の発展により連邦政府が台頭し、米国政治の中心が州から連邦へと移ったとされるためである。 しかしながら今日、州政治が連邦政治に多大な影響を与えるようになっている。連邦政府が実現しようとする政策が、州政府によって変更もしくは阻止されるという、連邦政治と州政治の新しい関係が生まれているのである。 そこで本研究は、米国の連邦制を説明する新たな概念を提示するとともに、なぜ・どのように州政府が米国政治に対して大きな影響力を獲得するに至ったのかを解明することを目的としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
連邦政府と州政府の間の関係性の研究は、連邦制研究という分野によって進められてきた。連邦制研究は大きく分けて二元的連邦制と協調的連邦制という連邦制概念を提示している。二元的連邦制は、憲法上の連邦政府と州政府の間の権限の明確な区分という観点から連邦政府と州政府の関係を記述する。協調的連邦制は、連邦政府と州政府が協力して連邦政府の政策を形成し執行するという観点から連邦と州の関係を記述する。 これら二つの見方が今日でも主流であり、様々な派生形は生じているものの、1970年代以降に見られる州政府の振る舞いについては理解できない。なぜなら、現代米国政治においては憲法上の権限の区分の有無を問わず連邦政府と州政府が双方の領域に関与するようになったため、二元的連邦制の説明力が弱くなっているからである。協調的連邦制についても、現代米国政治においては連邦政府と州政府が必ずしも協力するとは限らず、むしろ反目しあって政策の形成や執行が阻止されることが多々見られるようになり説明力を減じている。 したがって本研究の目的は、州政府の新しい振る舞いについて分析することで、現代の、現実の連邦と州の関係を明らかにし、その結果として、新しい連邦制概念を提示することである。 2022年度はまず、当初の予定通りデータベースの作成をしていたところ、連邦と州に加え、州以下の地方政府も加えた「三層構造」の理解こそが1970年代以降に見られる州政府の振る舞いを考える上で不可欠であること、ひいては「三層構造」こそが現代アメリカの連邦制理解にとって欠かせないことを示唆する事例が見つかった。 そこで、地方政府と州政府の間の自治権の奪い合いの事例を分析したところ、保守派と企業の連合体としてのアメリカ立法交流評議会(American Legislative Exchange Council)という政治団体の重要性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、当初の予定通りデータベースの作成をしていたところ、新たな視点を加味することの重要性を示唆する事例が見つかり、当初の予定とは異なる分析に注力した。そのため、当初予定していたデータベースの構築は完了しなかった。 その一方で、本研究が想定していた視点である連邦・州という「二層構造」ではなく、連邦・州・地方という「三層構造」という新たな視座に立つべきという示唆が得られた。 さらには、「三層構造」という視点に基づいた分析により、近年、分極化に起因する連邦レベルでの政治停滞の一方で、州レベルでは共和党が優位な州が多いこともあり、リベラルな都市が労働者の権利保護・マイノリティの権利保護・環境保護・その他の社会問題への対応に乗り出すことを未然にもしくは事後的に妨げるため、州政府が都市の自治権を剥奪するようになったことを明らかにできた。またそうした活動を主導する保守派の背後に、保守派と企業の連合体としてのアメリカ立法交流評議会という政治団体が存在していることも解明した。 以上の発見は、本研究が、従来の連邦・州のみを考慮していた連邦制研究に対して、地方政府という三番目のアクターを加える必要があるということを示唆するものである。そのため、2022年度の当初の予定とは異なるものの、研究全体としては大きな進展をしたと考えられるため、「(2)おおむね順調に進展している。」の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、分極化に起因する連邦レベルでの政治停滞のなかで、保守的な州政府がリベラルな都市部の地方政府の自治権を剥奪していることを明らかにした。またそこでは、アメリカ立法交流評議会という政治団体が重要な役割を果たしていることを示した。他方で、リベラルな州政府が保守的な田舎の地方政府の自治権を奪う事例については調査が不十分であるため、今後の研究としたい。 また、先行研究によれば、保守派の政治団体であるアメリカ立法交流評議会に匹敵するようなリベラルな組織が不在であるとしているが、その理由については説得力に乏しい。そもそもアメリカ立法交流評議会に匹敵するようなリベラルな組織が不在かどうか、不在ならばそれはなぜかについても解明したい。 それから、英米法の先行研究を整理していたところ、1970年代以前から、連邦レベルで実現できなかったリベラルな政策課題を州憲法や州法レベルで実現してきた事実が確認された。これは本研究が見落としてきた重大な事実であり、政治学における連邦制研究でもあまり注目されてこなかった事実でもあると思われるので、丹念に事実関係や英米法の先行研究を整理し、適宜、本研究の分析枠組みに修正を加えたい。
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