Project/Area Number |
22K13546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
畠中 茉莉子 三重大学, 人文学部, 講師 (60910685)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ルーマン / 宗教 / 近代化 / 機能分化 / コミュニケーション / 社会学説 / N・ルーマン |
Outline of Research at the Start |
本研究はルーマンにおける〈近代化と宗教〉の関係をめぐる論究に着目し、この問題をめぐって彼が提起した課題を明らかにすることを試みる。すなわち彼は〈近代化と宗教〉という問題に直面した際、既存の学説に対峙しながら自身の機能分化論を新たに拡張し、システムの内部分化や複数の機能システム間の相克と浸透が繰り返される極めて複雑な過程として社会の近代化を描く概念を準備していたことが明らかとなる。彼のこうした議論の社会学説史上の意義は彼とヴェーバーとの対比を通じて示される。申請者は彼の議論がヴェーバーの単なる継承や追認ではなく、ヴェーバーが提起した問いの独自の展開を目指す中で発展したものだということを示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、ニクラス・ルーマン晩年の宗教社会学に見られる論点が、その後の研究者たちによっていかなる形で展開されているかを精査した。その結果、近代社会における宗教的なものはコミュニケーションにおいてその生起が確認されるという彼の観点は、H・ティレルやA・ナセヒらにより、それぞれ現代社会における人びとの宗教性に関する経験的調査、これまでにキリスト教が歴史的に用いてきたコミュニケーションの様態の研究という形で展開されていることが確認された。 もっとも、ルーマン自身の議論を参照すると、彼自身はそうした展開に一定の留保を示す観点を提示していたこともわかった。すなわち、宗教的なもの、例えば個々人の信仰や何らかの神秘的な出来事との邂逅、そして社会的な包摂の試みといったものは、必ずしも容易にコミュニケーションにおいて表明されるとは限らないという観点である。 ルーマンはこうした見方を、16、17世紀以降のヨーロッパの市民階層に見られたコミュニケーション上の規則に見出している。すなわち、この時代のコミュニケーションにおいては、個々人の宗教的な信仰に関する沈黙ないし、その場の継続性を損なわないための一定の規則、例えば機能分化の原則の順守が求められていたということである。 従来の研究において、ルーマンの語る宗教的なコミュニケーションの像は明確に特定されることはなく、むしろその対象は拡散していく傾向にあった。しかしながら、上記のようなルーマン晩年の議論を見る限り、彼の分析の焦点は、宗教をめぐるコミュニケーションと、社会の機能分化の間の相克という事態を描くことにあったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに収集した文献を調査することにより、上記で示したように、ルーマンの提起した宗教的コミュニケーションという観点が、その後いかなる形で論者たちによって展開されているのかが確認できた。さらに、ルーマン自身の議論を精査することにより、後の論者たちが必ずしも汲み尽くせていないと思われる論点を見出すことが出来るようになった。ここで見出された宗教的コミュニケーションと社会の機能分化との相克という観点は、今後の研究を進めるうえでも重要な分析の軸となるものであり、今年度の調査と研究はおおむね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の中心となった点は、晩年のルーマンが近代社会における宗教を考える際に重視した、市民層における宗教をめぐるコミュニケーションにおける種々の規則であった。この点に関しては、引き続き論文の形で研究成果をまとめる予定である。 それと同時に、ルーマンが本格的な論究こそ行っていなかったものの、近代社会と宗教の関係をめぐって検討すべき主題として挙げていた複数の論点が浮き彫りとなった。すなわち、宗教改革以前に各地の神学者たちの間に広まっていた視点、エリート層のサークル化の傾向、神秘主義、道徳による基礎づけの試み、現代の原理主義、種々の宗教組織に見られる社会的包摂の試みである。今後はこれらの主題に関しても、ルーマンの社会システム理論的な観点からの考察を順次進めていきたいと考えている。
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