Project/Area Number |
22K13565
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08020:Social welfare-related
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
末松 惠 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (90844704)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 出獄人保護事業 / 少年行刑 / 浦和監獄川越分監 / 低能者 / 教育処遇 / 免囚保護事業 / 刑余者 / 不具廃疾者 / 原胤明 / 寺永法専 / 輔成会 / 免囚者 / 心身障害者 / 監獄 / 歴史 |
Outline of Research at the Start |
免囚保護事業は明治末頃から活発となり、免囚者の保護と更生に向けた官民共同の取り組みが組織される一方で、事業の進展のうちに「労働不能力者釈放人」に関する課題が顕在化する。本研究では、戦前期の免囚保護事業において心身に障害のある免囚者の保護がいつごろ、どのような問題として取り上げられるようになり、その背景とはいかなるものであったのかを資料文献から明らかにする。また、障害のある免囚者への支援は、監獄や保護事業者のみならず、地域社会の多様な事業体によって担われていた。障害のある免囚者に対する、国・中間団体・障害当事者のそれぞれの関わりを整理し、そこにいかなる「福祉の共同性」が捉えられるのか探求する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前期における心身に障害のある免囚者の保護と更生にかかわる実態を解明することを目的とし、(1)戦前期の免囚保護事業における「不具廃疾」の刑余者に対する保護に関する取り組みを明らかにする、(2)心身に障害のある刑余者の出所後の地域生活及び保護に関する取り組みを明らかにする、の二つの課題を設定している。 2023年度は主に(1)の課題に注力し、知的障害のある少年受刑者の出獄後の就業状態の解明に取り組んだ。浦和監獄川越分監が編纂した年次統計書中の「低能者身上一覧」を分析した結果、少年受刑者中に存在していた27名の知的障害者の「出監後ノ状態」は、奉公・手伝い・雇い・再入監・療養・行方不明・死亡の7項目に分類され、再入監や療養者を除き、出監後は全ての知的障害者が奉公を含め、何らかの仕事に就いていたことが分かった。 また、「出監後の行状」については「良・普通」と記された者が13名いることが確認でき、これを少年受刑者全体と比べてみるならば、少年受刑者全体では「良・普通」の者は40.7%、知的障害受刑者は61.9%となり、知的障害者への特別教育や保護の取り組みが、出獄後の暮らしに影響を及ぼしたのではないかと考察した。これらの研究結果については、社会事業史学会第51回大会の「自由論題報告」において発表することができた。 また本年は、少年矯正関係者への聞き取り調査を実施することができた。これは、都内の更生保護事業所の好意により実現できたもので、戦後、医療刑務所に勤務されていた元刑務官の方にお話をうかがうことができた。その結果、医療刑務所には障害のある方々が80人ほど収容され、授産活動や運動・レクリエーション及び治療等が取り組まれていた。出所後の状況に関しては、「再入所」となる方々が多かったということで、障害を持ちながら地域で暮らしていくことは大変な困難を伴うものであったことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、戦前期における心身に障害のある免囚者の保護と更生にかかわる実態を解明することを目的とし、(1)戦前期の免囚保護事業における「不具廃疾」の刑余者に対する保護に関する取り組み、(2)心身に障害のある刑余者の出所後の地域生活及び保護に関する取り組み、の二つの研究課題を設定している。 2023年度は、昨年に引き続き(1)の課題に注力し、研究を進展させることができた(上記「研究実績の概要」にその内容を記した)。但し、障害のある受刑者の出獄後の具体的な様相に関しては、まだその実態的な有りよう(彼らが、どのような保護事業者の下に暮らし、いかなる生業を以て地域での生活を営んでいたのか等)に迫ることは出来ておらず、さらなる資料探索の必要性を感じているところである。また、(2)の「心身に障害のある刑余者の出所後の地域生活と保護にかかわる取り組み」に関しては、関連する諸資料の選定とその分類作業を経て、論文構成作業に着手しようとするところである。研究課題(2)に関してもいち早く言語化できるように取り組みを続けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、戦前期における心身に障害のある免囚者の保護と更生にかかわる実態を解明することを目的とし、上記の2つの課題に取り組んでいくが、今年度(2024年度)はとくに、(2)に注力し、地域で生活する「不具廃疾」の刑余者に対する保護について検討する。 推進方策としては、まず「地域」の分析からすすめることとし、先行研究の指摘をふまえながら「都市スラム」における免囚者の生活実態の解明に注力する。研究方法としては、明治大正期の行政区である下谷区・浅草区・本所区などが編纂した「区史」から「都市スラム」の中心地であった浅草・下谷地域の歴史的形成経緯及びその諸特徴について把握するとともに、横山源之助・石角春之助等の著作から都市下層民の生活実態について捉えていく。また、東京市や市養育院などによる『浮浪者調査』なども参照しながら、犯罪・障害・貧困の具体的な様相について検討していく。
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