20世紀初頭イギリスにおいて柔術を実践した女性たちに関する教育史的研究
Project/Area Number |
22K13629
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Seisa University |
Principal Investigator |
平岡 麻里 星槎大学, 共生科学部, 教授 (40458500)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 柔術 / 20世紀初頭イギリス / 女性 / 日本 / トランスナショナル / 教育史 / イギリス |
Outline of Research at the Start |
本研究では、20世紀初頭イギリスで柔術を実践した女性たちが日本の柔術を学ぶに至った当時の社会や文化、女性をめぐる教育観や教育環境などを手掛かりに、日本(周縁)からイギリス(中央)への、男性文化(柔術)の女性への、情報の移動とその受容の様相を考察する。 具体的には、①女性参政権運動活動家に柔術を指導したEdith Garrud、②Garrudとほぼ同時代の著名な柔術家Phoebe RogersとEmily Diana Watts、③柔術教室および柔術を実施していた女子教育機関の生徒を調査し、こうした女性たちの育成環境、教育、柔術実践者としての活動と発言、以降のキャリアなどを教育史的に分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は20世紀初頭のイギリスにおいて日本の柔術を実践した女性たちについて、教育史的な分析行うことを目的としている。 3年計画の初年度である2022年度はまず時代背景と先行研究の検討を行った。その結果、教育を含む当時の女性の活動の各所に柔術実践の痕跡が確認されたが、まとまった一次史料は存在しないことも判明した。加えて、最も先行研究の多いEdith Garrudについて国内で入手可能な情報を収集した。オンライン・データベースのある新聞記事などの一次史料、一般書、インターネット上の情報など広範な史料を検討した結果、Garrudですら一次史料は限られており、どの二次史料もほぼ同じ一次史料を論拠としていること、歴史家ではない著者による真偽不明の情報も多く流布していることがわかった。以上の内容の詳細と今後の調査方針に関する具体案をまとめ、研究ノートとして『共生科学研究』に投稿し、採録された。 以上の予備調査を踏まえて3月下旬から4月初旬に現地調査を行った。柔道/武術研究者のCardiff大学Paul Bowman、柔道史家のHertfordshire大学Michael Callan、女性柔道家の研究があるDe Montfort大学Amanda Spenn-Callan、および教育史家のUCL Insitute of EducationのGary McCullochに面会し、意見交換を行った。また、Gurradに関する新情報を求め、British Library, Hammersmith & Fulham Local History Archive, Women's Library (LSE Library), Richard Bowen (Judo) Collection (Bath大学), Islington Local History Centreで史料調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画として設定していた今後の調査方針を決めるための広範な時代背景および先行研究の検討とEidth Garrudに焦点を絞った一次史料調査はおおむね達成できた。 具体的には、①この事象全般の時代背景と今後の研究の方針の検討結果を研究ノートの形で国内で発信し、②Garrudの出生、死亡、結婚の各証明書の写しを入手し、出生証明の記載事項についてバース大学archivistのアドバイスを得て、バース市内にあるGarrudの出生地を訪れた。また、③Islington Local History Centreで行った選挙人名簿の調査およびセンターの過去の公開文書や結婚証明書から、Garrudが現在考えられているよりも以前からロンドンに居住していたことが判明した。このことはGarrudが受けた教育について出生地のバースではなくロンドンで史料が発見される可能性を示唆するだけでなく、本事象全般に歴史家の手による詳細な調査の必要性があることも示している。 加えて、今回面会したイギリスでの専門家の一人とGarrudについて史料を精査する必要性について意見が一致し、共同研究の可能性を見いだすことができた。別の研究者からは今後予定している20世紀初頭に渡英した日本人柔術指導者に関する日本側の史料調査先である日本の講道館図書館におけるキーパースンを紹介されるなど、このテーマにおけるイギリス人研究者とのネットワークを構築することができたことは大きな成果である。 一方、学内業務のため2022年度内に終えるように現地調査の日程を調整できなかったことは若干の研究の遅れとみなすことができるだろう。しかし、年度をまたぐ使用が可能な研究資金であるため、研究の進捗状況としては大きな問題ではない。また、まとまった一次史料が発見できない可能性が判明したため、今後は細かな史料を多方面で収集する調査が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、現在までの進捗状況で述べたように、Edith Garrudに関して断片的ではあるが様々な新情報が得られたので、これらをもとにGarrudの人生における柔術実践からの影響、あるいは当時のイギリス女性の柔術実践におけるGarrudの人生からの影響について分析を行う。その際には、Garrudが職業を持つ女性であること、そして柔術が日本由来であることを考慮にいれ、女性参政権運動との関連でのみ論じられることの多い先行研究との差別化を図る。その成果は、英国教育史学会での発表を検討している。 また、女性参政権運動における女性運動家の柔術実践が近年注目を集めるなかで、この事象がほんの数人の当時在英した日本人柔術家(男性)からの影響をうけたものであったという視点がイギリス人研究者の一人から示唆された。この点についてはその研究者と共同で、当時の日本側の史料の分析と併せて、スポーツ史の国際学会誌へ投稿する可能性を協議中である。 2023年度にはPhoebe RogersとEmily Diana Wattsの史料調査も予定している。こちらはガラッドよりも先行研究が少なく、より大きな研究上の困難が予測されるため、2022年度に予備的に実施したBritish Newspaper Archiveの調査により柔術を実践していたことが判明した女優のMarie Studholmeや1906-1907年にロンドンで上演された「The Ju-jitsu Waltz」ショーに出演した女優兼ダンサーのGaby Deslysなどに調査の範囲を広げることを検討する。 また、2024年度に予定されている柔術を学んでいた一般の女性や柔術を教えていた女子校についての調査は現在までに確認できているのは1校のみであるため、さらに範囲を広げて調査を続けるとともに、その1校については史料の所在を確認したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)