量子ウォークの定常性、局在性、再帰性の数理的構造の解明およびその応用
Project/Area Number |
22K13959
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 12040:Applied mathematics and statistics-related
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Research Institution | University of Yamanashi (2023) Hiroshima University (2022) |
Principal Investigator |
小松 尭 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90869794)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 量子ウォーク / 今野・佐藤の定理 / 伊原ゼータ関数 / Zeta Correspondence / Metzler行列 / 正則被覆グラフ / 非正則被覆グラフ / Voltage assignments / 古典ランダムウォーク / 定常測度 / 転送行列 / 本質的スペクトル / 一般化固有関数 / 局在性 / 定常性 / 再帰性 / スペクトル |
Outline of Research at the Start |
量子ウォークは通常のランダムウォークの量子版 (非可換類似物) として導入され、量子コンピュター周辺の分野より2000年頃から本格的に始まった新しい研究分野である。また、量子アルゴリズムの基本モデルとしても注目を集めている。本研究では、量子ウォークの3つの性質に焦点を当てる。1つ目は、量子ウォークの定常性に関して考察する。2つ目は、通常のランダムウォークでは見られない局在性である。この性質と量子ウォークの時間発展作用素の固有値が密接に関わっている。3つ目は、量子ウォークの再帰性である。これらを主軸に量子ウォークの数理的構造を明らかにすることで、諸性質を理解し、応用まで考えることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は量子ウォークの数理的構造を明らかにすることを目的としており、今年度は次の研究を行なった。 (1)2021年にグローヴァーウォークと伊原ゼータ関数の関係を述べた論文では無限グラフ上の2種類のゼータ関数の明示公式が求められており、我々が得た結果とChinta et al.や Clairが得た伊原の公式の表現と一致している点が大変興味深い。本論文では、有限グラフであるトーラスを通して無限グラフ上のゼータ関数の明示公式を求めており、その際に今野・佐藤の定理が重要な鍵となっていた。そこで、本年度は正則被覆グラフまたは非正則被覆グラフ上の今野・佐藤の定理に焦点を当てた。被覆変換群が有限群の場合には、正則被覆グラフとOrdinary voltage assignmentを用いて構成される被覆グラフは同値であり、非正則被覆グラフとPermutation voltage assignmentを用いて構成される被覆グラフは同値であることが知られている。これを利用して、被覆グラフ上の今野・佐藤の定理に関する結果を得た。現在論文を執筆中である。本研究は今野紀雄氏(立命館大学)、佐藤巌氏(小山工業高等専門学校)、三橋秀生氏(法政大学)との共同研究である。今後は、被覆変換群が無限群の場合を扱っていく予定である。 (2)グローヴァー/ゼータ対応で得られた結果はウォークの世界にまで拡張される(厳密には、ウォーク以外にも適用が可能)。また、Masuda, Preciado and OguraによってMetzler行列の最大固有値を用いて確率的SIS (Susceptible-Infected-Susceptible)モデルの減衰率の下界が与えられた。我々はこのMetzler行列に対してウォーク/ゼータ対応(ウォーク型ゼータ関数)の議論を行なった。得られた結果は論文「Metzler/Zeta Correspondence」にまとめられ2023年にDiscrete Mathematicsに掲載された。本研究は井手勇介氏(日本大学)、今野紀雄氏(立命館大学)、佐藤巌氏(小山工業高等専門学校)との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の一つである、「被覆グラフ上のグローヴァーウォークとゼータ関数との対応関係」に関する結果は出ている。しかし、量子ウォークの諸性質を利用した「ネットワークのコミュニティ抽出への応用」への研究進度は遅れている状況にあり、進展は少なかった。以上を総合して、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の課題として、次の三つを考えている。一つ目は、被覆グラフ(無限グラフ)上の量子ウォークとグラフゼータ関数との対応関係を調べることである。引き続き、今野紀雄氏(立命館大学)、佐藤巌氏(小山工業高等専門学校)、三橋秀生氏(法政大学)との研究打ち合わせを続けていく。二つ目は、ウォークの側面からリーマンゼータ関数やL関数などの特殊値を調べることである。これは、2022年にQuantum Information Processingに掲載された論文「Mahler/Zeta Correspondence」の続きの内容である。三つ目は、量子ウォークの諸性質を利用した「ネットワークのコミュニティ抽出」への応用を行いたいと考えている。ネットワーク科学の専門家に助言をもらい、研究を推進していく予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)