La系層状金属間化合物における電荷秩序と超伝導の相関関係の解明
Project/Area Number |
22K14006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
秋葉 和人 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (60824026)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 超伝導 / 電荷密度波 / 圧力 |
Outline of Research at the Start |
電荷秩序と超伝導の協奏現象に近年注目が集まっているが、外部から両方の物性を都合よく制御できる系は少なく未解明な点が多い。本研究では3つのLa系層状金属間化合物において圧力を制御パラメータとした系統的実験研究を行い、CDWと超伝導の相関関係を明らかにする。申請者独自の圧力セル回転機構を用いた量子振動測定により、これまで困難であった圧力下電子状態の正確な決定が可能である。この基盤的理解に基づいてCDW・超伝導共存状態が異なる3つの物質の相図と圧力下物性の比較対照を行い、CDWの臨界圧力近傍でTcの向上を引き起こす電子状態の条件を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度では主に、LaAgSb2において最大圧力7 GPa, 最低温度50 mKの範囲で超伝導特性を精査した。我々は前年度までに、LaAgSb2が常圧において0.3 K以下で零抵抗を示すことを確認していた。本年度はさらに極低温における磁化・比熱測定を行い、マイスナー効果に対応する磁化の異常・BCS理論から期待されるものと同程度の比熱の異常を0.3 Kで観測した。これによりLaAgSb2が超伝導体であることをはじめて発見した。さらに対向アンビル型圧力セルを用いた圧力下電気抵抗測定では、CDWの臨界圧力である3.2 GPa近傍のみで超伝導転移温度(Tc)が最大約1 Kまで増強される振る舞いを観測した。臨界圧力から離れるとTcは急激に抑制されることから、臨界圧力近傍のみで何らかの超伝導増強機構が働いていることを示す結果と考えられる。この振る舞いをより深く理解するために、最も基本的な超伝導機構であるフォノン媒介機構を仮定した場合にどの程度のTcが期待できるかを、第一原理計算に基づく電子格子結合計算によって精査した。計算によって得られる電子格子結合強度は小さく、その結果として得られる理論的Tcも数mKのオーダーであった。したがって実験で観測された1 KオーダーのTcは上述の枠組みだけでは説明できず、CDWの崩壊に関連する非自明な機構の存在を示唆する。また比較的大きな電子格子結合をもつキャリアは、正方格子を構成するSb原子のpx, py軌道からなる2次元的Fermi面に偏在していることも明らかにした。このことはSb正方格子がこの物質におけるCDWの形成・極めて易動度の高いキャリアの起源のみならず、超伝導においても重要な役割を担っていることを示している。また物性の比較対照に向けて、同一結晶構造を持つ関連物質の物性測定も進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではLaAgSb2と、同一構造を持つ関連物質のFermi面を決定することを本年度の達成目標とした。これに対してLaAgSb2に関してはすでに圧力下のFermi面形状に関する論文を出版している。また関連物質に関しても実験は進んでおり、電子構造に関する論文を準備している段階にある。このため当初設定した目標は順調に達成されつつあると考える。加えて当初は想定していなかったが、基本的なフォノン媒介機構であれば、第一原理計算からある程度定量的な情報が得られることが分かり、これを実験結果の解釈に用いた論文も出版することができた。以上のことから、当初の達成目標以上に研究が進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、同一構造を持つ関連超伝導物質のFermi面を決定し、LaAgSb2との共通点・差異を明確にする必要がある。そのために圧力下も含めたフェルミオロジー研究を引き続き遂行する。またLaAgSb2で行った超伝導特性の数値計算を他の関連物質にも適用することで、電子格子結合に関する定量的な情報を得られるとともに、各物質の超伝導特性においてフォノン媒介機構で説明できる点とできない点を浮き彫りにできると期待される。次年度ではこれらの実験的・計算的知見を総合し、CDW臨界点において超伝導の増強を引き起こす必要条件は何か・その具体的メカニズムは何かを明らかにしたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)