ナノ結晶が噴火ダイナミクスとマグマ物性に与える影響
Project/Area Number |
22K14111
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
無盡 真弓 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (60822004)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ナノ結晶 / スピノーダル分解 / 火山噴火 / マグマ / 爆発的噴火 / 結晶成長 / 噴火様式 / 高温その場観察 |
Outline of Research at the Start |
本研究ではマグマからのナノ結晶の結晶化メカニズムと結晶化条件、及びナノ結晶が火山の噴火現象に与える影響を明らかにするために、まず天然の火山噴出物中のナノ結晶とナノ結晶周辺のガラスの構造を調べる。次に加熱ステージを搭載した高分解能電子顕微鏡とラマン分光装置を用いて、マグマからのナノ結晶の結晶化とメルトの構造変化を高温“その場観察”する(高温ではガラスはメルトとなる)。明らかになったナノ結晶の結晶化条件をもとにナノ結晶を制御したマグマの粘性測定を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
火山噴出物の石基にはマイクロライトと呼ばれる微細な結晶がしばしば晶出するが、それよりもさらに小さいナノ結晶が晶出することがあり、それが火山の噴火様式に影響を与える可能性も示唆されている。しかし、その晶出メカニズムや晶出条件は明らかになっていない。2023年度は晶出メカニズムに関する成果が得られた。2022年度に観察・分析を進めた苦鉄質の火砕物に対して、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)に加えて、ラマン分光分析および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察、分析を進めた。FE-SEMの反射電子像(BSE像)において、特に斜長石の周囲で、輝度の高い膜やナノメートルスケールの斑点をよく観察することができた。TEM-EDS(エネルギー分散X線分光法)により、これらの輝度の高い膜や斑点は比較的鉄に富む層であることがわかった。これらは輝石の周囲では見られなかった。このことから、斜長石周囲で分相した可能性があると考えられる。つまり、苦鉄質の火砕物においても、斜長石の周囲ではナノメートルスケールのスピノーダル分解が生じている可能性があることがわかった。そして、TEMを用いた観察・分析の結果、その鉄に富む層において、ナノ結晶が晶出する場合があることがわかった。斜長石の近傍だと、樹枝状結晶になる場合もあった。分相が発達し、スピノーダル分解の波長が大きくても、ナノ結晶が晶出しておらず、たんに分相のみという試料もあった。スピノーダル分解が生じることで、ナノ結晶が晶出しやすいという側面もあるが、ナノ結晶の結晶化には、分相の発達とは別にイベントが必要であると考えられる。そして、分相がおこることで、火道内でマグマの物性が変化している可能性もある。今後、分相がおこる条件や物性、流紋岩質―安山岩質岩でも同様の現象がおこるのか調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の時点では、FE-SEMのBSE像で観察された斜長石周囲の輝度の高い膜やナノメートルスケールの斑点は結晶だろうと予想していた。しかし、ラマン分光分析やTEMを用いて詳細に分析することで、分相によって生じた可能性があることがわかってきた。さらに、ナノ結晶は、鉄に富む層において晶出している可能性がわかってきた。本研究の研究目的であるナノ結晶の晶出メカニズムを明らかにするという点で、重要な観察・分析を進められている。さらにナノ結晶の晶出条件を調べる上でも、まずは分相がおこる条件を調べる必要があることがわかったことで、実験条件を絞り込むことができている。当初の研究計画では、記載的な研究の後に実験を行う予定であり、当初の計画よりも記載的な研究に時間がかかっているものの、総合的に判断するとおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は大きく3つの課題(A, B, C)に分けられる。課題Aは天然試料の記載的な研究、課題Bは高温その場観察実験、課題Cは粘性測定実験である。これまで精力的に取り組んできた苦鉄質火砕物の記載的な研究に関しては論文執筆を進める。この課題Aから得られたナノ結晶の形成メカニズムを基に、分相が起こる条件およびナノ結晶の晶出条件を実験的に調べる課題Bに取り組む。最後に、課題Bで求めた分相が起こる条件およびナノ結晶が晶出する条件において粘弾性測定装置を用いて粘性の時間変化を調べる課題Cに取り組む。また、流紋岩質―安山岩質のマグマにおいても苦鉄質岩と同様の結晶化メカニズムでナノ結晶の結晶化が生じるかを、試料の分析と文献調査から調べる。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)