世論状況を考慮した土木・交通分野の「働きがい」の形成要因
Project/Area Number |
22K14336
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 22050:Civil engineering plan and transportation engineering-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 皓介 京都大学, 工学研究科, 助教 (30793963)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | well-being / happiness / meaningful work / constrauction worker / construction worker / public opinion / public works |
Outline of Research at the Start |
深刻化する人手不足に対して給料や待遇面の改善が必要なのは論をまたない.一方で,AIによる仕事の代替が現実味を帯びる中,人間が仕事をすることの意味の理解と実感が求められる.特に土木・交通は単なる市場原理だけでは成り立たない「公共」の仕事であり,多様な価値基準からの社会的な評価が重要である.その際,日本において長年にわたり展開された土木バッシング的な世論の影響を踏まえることが必要となる. 本研究はインタビューやアンケート調査により,「土木仕事はいかにして意味ある仕事としての実感を得られるか」を理論的,実証的に明らかにし,仕事をする人々のモチベーションを支え,ひいては社会そのもの維持への貢献を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
土木・交通分野は公共的役割を担う仕事であるが,教育や医療などの他の公共部門と比べても,2000年代をピークとする土木バッシングなど,世論や政治の影響を強く受けてきた分野である.一方で,人工知能等の発展により各種の仕事の代替可能性が取りざたされる中で,個人の労働の意味もまた問われている. こうした状況の中で「土木・交通の仕事はいかにしてMeaningful workとしての実感を得られるか」を,世論認知状況等も考慮の上で,理論的,実証的に明らかにすることを本研究の目的とする. 1年目としてまず「意味ある仕事感」の多面的な要因の検討を行った.土木に限らず他分野における働きがい研究や既存の理論をレビューし,土木・交通分野の仕事の働いがいに影響しうる要因として,仕事観,土木・交通業界に関する認知,地域住民との関わりを抽出した.その上で,土木・交通ではたらく人の意識構造を明らかにする目的でWebアンケート調査を行った. 分析の結果,仕事観との関連について,仕事内容そのものに意義を見出そうとする人はスキル・キャリアアップを仕事の目的とする人よりも,スキル・キャリアアップを仕事の目的とする人は仕事を単なるお金儲けの手段と考える仕事観を持つ人よりも,それぞれ有意に幸せの実感が高く,また有意に不幸せの実感が低いことが示された.さらに,他者貢献実感は,業界に対する世間の評価の認知,業界への報道傾向の認知,住民の事業への態度認知,業界の将来性認知といった,業界特有の認知との関連が示された.さらに,地域住民との関わりの中で,「挨拶される」という受動的な関わりの有無は,幸せ・不幸せ実感と有意な関連が見られなかった一方で,「挨拶する」か否かは,幸せ・不幸せ実感との有意な関連が見られた.つまり,単に挨拶を交わすだけでなく,自発的に挨拶をするという行いが,幸せ増進・不幸せ低減につながり得ることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の当初の予定としては,既往研究のレビューに加え,実際の土木・交通分野の労働者へのインタビューも行い,その理論的な構造を想定することを予定していた.そして,そうした構造を2年目にアンケート調査により実証的に検証する予定であった.しかし,長引くコロナ禍の影響もあり,対面でのインタビュー調査を積極的に行うことがためらわれたこと,ならびにインタビュー調査をより具体的かつ有意義なものとするために,先に基礎的なアンケート調査を実施することで,現場の人々の意識をより具体的掘り下げていくことができるのではないかとの考えから,方針を修正した.すなわち,当初予定していたインタビュー調査については,準備のみで実施はできていない点については進捗が不足しているが,一方で,基礎的なアンケート調査分析がでたことは当初の予定以上の進展である.アンケート調査データを得られたことは,インタビュー調査のみならず,今後の研究方針を具体化するための足がかりとなる基礎的な情報として有用なものが得られたものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に得られた基礎的なアンケート調査の結果をさらに詳しく分析していくことで,当初想定していた問題がより具体的で詳細なものとなっていくことが期待され,今後の研究の推進につながっていくものと思われる,さらに,得られた結果を国内外の学会で発表し,議論を深めることで,新たな切り口を見出していくことを想定している.そして,得られた知見や問題点を踏まえつつ,そうしたデータを足がかりとしたインタビュー調査を行っていくことで,より現場に近く具体的な人々の意意識構造の仮説を見出していく. また,特に交通業界については,2024年問題など社会的な関心がより一層高まりつつあり,さらに,ChatGPTをはじめとする人工知能が世間を賑わすなど,人工知能が著しく進展し人口に膾炙していく状況についても,当初考えていた以上の劇的な変化が生じているため,そうした社会情勢の変化も踏まえて分析の方針を検討していく予定である.
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)