連続体CAMを用いた拡散時間スケールにおける原子シミュレーション手法の構築
Project/Area Number |
22K14462
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 26010:Metallic material properties-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 亮 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60883535)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 原子シミュレーション / 粒界エネルギー / 核生成・成長 / 粒成長 / 拡散時間スケール |
Outline of Research at the Start |
本研究では、離散的なモデルとして発展してきたcluster activation methodを連続空間に拡張することで、原子拡散と格子欠陥が絡んだ複雑な現象をシミュレートすることが可能な汎用性の高い新たな原子シミュレーション手法を開発する。またその計算手法を応用することで、これまでの計算手法ではシミュレートが困難であった溶質原子の結晶粒界への偏析過程や、それに付随する粒界上の化合物の形成メカニズムなどを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は拡散時間スケールの現象を記述可能な原子シミュレーション手法であるcluster activation method(CAM)を連続空間へと拡張することにより、分子動力学法や動的モンテカルロ法などの従来の計算手法では実質計算不可能な拡散時間スケールの現象をシミュレーション可能な原子シミュレーション手法である連続体CAMを開発することである。令和4年度は連続体CAMの計算の枠組みを構築することに重きをおいて研究を行った。まずは計算の信頼度を確かめるために純物質(レナード・ジョーンズポテンシャル)を仮定した系において、液相から固相への凝固過程や固相核の成長過程、凝固核の形成過程、多結晶粒の粒成長過程、粒界エネルギーの方位差依存性などの計算を行ない、従来の計算手法や理論モデルとの比較を行った。その結果、連続体CAMで得られる結果は概ね従来の計算手法(フェーズフィールドクリスタル法)や理論モデル(Read-Shockleyの関係式等)と整合する結果になることが明らかとなった。またそれらの結果をまとめ、二つの国際学会(15th World Congress on Computational Mechanics 8th Asian Pacific Congress on Computational Mechanics 2022、TMS 2023 AnnualMeeting)で発表し、連続体CAMで得られた結果を多くの研究者と議論した。また、研究結果の一部を学術論文誌(Physical Review E)に投稿し、受理された。これまでに同様の手法としてフェーズフィールドクリスタル法が提唱されているが、その手法においては入力パラメータがあいまいである。それに比べ、本計算手法はメインの入力パラメータが原子間の相互作用エネルギーという点において大きな利点を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに離散格子に基づくcluster activation method(CAM)を連続変位クラスター変分法で用いられている擬格子(quasi-lattice)の概念を用いて連続空間に拡張することに成功した。令和4年度では、連続体CAMの計算の信頼度を確かめるためにレナード・ジョーンズポテンシャルを用いた純物質を仮定した系において、液相から固相への凝固過程や固相核の形成・成長過程、多結晶粒の粒成長過程、粒界エネルギーの方位差依存性などの計算を行ない、従来の計算手法(フェーズフィールドクリスタル法)や理論モデルとの比較を行った。その例として、様々な原子密度で計算した連続体CAMの凝固組織はフェーズフィールドクリスタル法で計算されるものと非常によく似ていることが明らかとなった。また、粒界エネルギーの方位差依存性は理論モデルとしてよく知られているRead-Shockleyの関係式に整合する結果となり、結晶粒の粗大化過程においては結晶粒の半径の二乗が時間に比例するという曲率駆動を仮定した古典的モデルに対応する結果が得られた。これらの結果から、連続体CAMが液相や格子欠陥を含む材料における様々な物理現象を記述できる可能性があることが示唆された。これらは従来の離散格子を仮定したCAMでは記述することができない現象である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究により、連続体cluster activation method(CAM)が液相や格子欠陥を含む様々な物理現象を記述できることが明らかとなった。しかしながら、レナード・ジョーンズポテンシャルを仮定した純物質の状態図を計算した結果、モンテカルロ法で得られる結果とわずかに違いがあることが明らかとなった。そのため、より高精度な計算を行う必要があることがわかった。そのためには、原子と原子の間の距離が非常に近い場合にポテンシャルをある一定値に置き換えるという仮定をより厳密に取り扱う必要があることが想定される。さらに、これまでは純金属を仮定して連続体CAMの計算を行ってきたが、今後はその計算を多元系に拡張することで拡散時間スケールの様々な現象を記述できるモデルを構築することを目指す。具体的には、多元系合金の相分離や規則化過程を記述できるモデルを構築することが目標である。これにより、転位や結晶粒界が異種原子の相分離や規則化過程にどのような影響を与えるかを明らかにしたい。上述した「計算の高精度か」と「多元系への展開」に併せて、計算コードの最適化を行うことも考えている。具体的には、現在は小さな系に限定をして計算を行っているため、Python(Cupy)を用いて計算を行っているが、今後はfortran(pgfortran)を用いたコードを作成し、GPUでの計算を高速化させる予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)