低次元ポテンシャルエネルギー面に基づく反応動力学解析法の開発と光化学反応への応用
Project/Area Number |
22K14640
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堤 拓朗 北海道大学, 理学研究院, 特任助教 (80930437)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | ポテンシャルエネルギー曲面 / 反応経路 / 反応動力学 / 次元縮約 / 反応空間投影法 / スチルベン / 光化学反応 / 組み合わせ最適化 / 励起状態 |
Outline of Research at the Start |
化学反応機構の理論的解析は反応経路や反応動力学を基盤としており、これらは多次元空間におけるポテンシャルエネルギー曲面(PES)を介して密接に関連している。これまでPESの谷底である最小エネルギー経路網に基づいた反応動力学解析法が提案されてきたが、不安定領域まで取り込んだエネルギー地形に基づく解析法は提案されていない。本研究では、次元縮約法によりPESを特徴づける少数座標軸を抽出する低次元PES構築法を開発する。さらに、複数の電子状態が関連する光化学反応へ適用し、多状態エネルギー地形に基づいた反応動力学解析へ展開することで理論先導による反応設計を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
主要な反応解析理論である反応経路解析法と反応動力学解析法はポテンシャルエネルギー曲面(PES)を介して密接に関連している。本代表者はこれまでに、反応経路に沿った分子構造データから本質的な座標軸を抽出する反応空間投影法(ReSPer)を開発し、少数座標軸によって張られた低次元反応空間に基づいた反応動力学解析を展開してきたが、複数の反応素過程を含むPESの形状に基づいた反応解析理論は確立されていない。本研究課題では、ReSPerを拡張することで低次元PES構築法を開発する。本年度は、ReSPerにより求めた主座標軸を元の分子構造に逆変換する手法を開発し、これまでに解析した種々の化学反応に対して適用することで、その有効性や限界を検証した。従来、主座標軸の物理的意味を理解するためには、全自由度の構造変化と照らし合わせる必要があったが、本手法により、1つの主座標軸方向に沿った構造変化をアニメーションとして表現することが可能になった。また、本手法は低次元PES構築法の根幹をなす技術である。 また、本年度はReSPerをスチルベンの光化学反応へ適用し、基底状態と励起状態のPESを同時に表現した「多状態エネルギー地形」を構築した。本研究では、スチルベンの競合する2つの光異性化反応に着目し、ππ*励起状態と基底状態における安定構造、遷移状態構造、反応経路を含むような低次元反応空間を構築した。さらに、第3軸としてポテンシャルエネルギー軸を追加することで多状態エネルギー地形を構築し、ππ*励起後の反応動力学を議論した。 本年度では、これらの他に、組み合わせ最適化アルゴリズムを利用したReSPer法の高速化や複数の生成物が生じるペリ環状反応の動的反応機構解析にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、目標とする低次元PES構築法の根幹をなす分子構造逆変換プログラムを開発し、これまでに開発したReSPerプログラムに実装した。本プログラムはReSPerに抽出された主座標軸を分子構造変化へ逆変換するプログラムである。本年度は、逆変換プログラムの有用性を確かめるために、これまでに主成分分析により低次元化および逆変換された化学反応系に対する適用を試みた。その結果、主成分分析と同等の性能を示しただけではなく、ReSPerは入力データの前処理過程に依存しないことが明らかになった。本年度は、低次元PES構築法の開発とは別に、ReSPerを用いて光化学反応を包括的に議論するために、基底状態と励起状態の分子構造情報を含むような多状態エネルギー地形の概念を生み出した。これらの研究は本研究課題で取り組む低次元PES構築法やその光化学反応への適用のための土台となる研究である。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続き低次元PES構築法の開発を進める。これまでに開発した分子構造逆変換プログラムにより、参照構造データ群を特徴づける重要な構造変化を取得することに成功した。これらの情報に基づき低次元PESを表現するためには、参照構造データ群に存在しない分子構造を少数の主座標軸から内挿的に求める必要がある。いくつかの主座標軸を用いて新しいデータ点を補間することができれば、データ外の分子構造を予測することができるが、分子構造が持つ座標パラメータは3N個(Nは原子数)あるため、少数の座標軸だけでは化学的および物理的に妥当な分子構造を予測することは難しい。そこで次年度は、低次元反応空間上の新しい分子構造を予測するために、拘束付き構造最適化プログラムを開発する。
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Report
(1 results)
Research Products
(14 results)