物理的自触媒反応で実現する自己増殖アクティブマター
Project/Area Number |
22K14657
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 32020:Functional solid state chemistry-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松尾 宗征 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (90869025)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 自己駆動 / 物理的自触媒 / 滴 / 膜 / 張力 / フィードバック / 集団運動 / Systems Chemistry / 自己再生産 / 人工生命 / 生命起源 |
Outline of Research at the Start |
生物の自己組織化の繰り返しを可能にする要因は、自身の構成物質前駆体(エサ)を食べて増殖することにある。機能性材料の持続性を飛躍的に向上させるためには、この機能を材料へ付与することが有効であるが、これまで実例はない。これは、“エサからの構成成分の再生産”、“肥大・分裂(増殖)”、“エサを自ら獲得するための移動(自己駆動)”という3つの能力をマテリアルへ同時に付与できなかったためである。本研究では“物理的自触媒機構”を内在させた液滴の構成分子と駆動分子の協奏的生成反応系の構築により、世界初の「増殖する自己駆動液滴」を開発することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、物理的自触媒反応で増殖するアクティブマターの創製を目指している。本年度は、駆動物質が生成する駆動物質に昇華性をもたせることで、非平衡状態を維持し、自己駆動する新奇自己駆動液滴を開発した。 駆動物質のエステル化合物を構成生物とする油を、円形シャーレを満たした塩基性の水相表面に滴下すると、油は化学反応の進行ととともに油膜から油滴に転移した。滴下した油が膜か滴か、どちらの形態をとるかは、油と水、空気がなす3種の界面張力のバランスの指標である拡張係数によって決まることが知られている。反応生成物である駆動物質の水溶液の表面張力は、その濃度に比例して減少したことから、反応進行によって拡張係数が負から正に反転することで、膜から液滴への転移が生じたと考えられる。 転移で形成された液滴は、往復運動とは異なる駆動→停止を繰り返す振動運動を示した。この事実は、液滴の駆動メカニズムに正のフィードバックと負のフォードバックが共存していることが明らかになった。この振動運動は、水相に蓋をし、駆動物質の昇華を抑制した場合は観測されなかった。さらに、液滴は突起を形成し、突起伸長方向に駆動した。このことから、液滴の駆動が突起伸長をおこす局所的表面張力変化か対流形成によって誘引されていることが示唆された。 続いて、液滴の体積を固定し、液滴の個数を増やした際の液滴が消失するまでの反応時間を計測した。液滴数が多いほど比表面積は大きくなるため、反応時間は短くなると予想される。しかし、液滴数が多くなると反応時間は長くなった。さらに、液滴数が多いと液滴の駆動は抑制された。これらの集団効果は、昇華性駆動物質の生成反応により生じる自己駆動が反応を促進する正のフィードバックと、反応が速いと逆に反応が抑制される負のフィードバックが共存していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、駆動物質候補化合物の水溶性、昇華性、生成反応速度のバランスから、自己駆動という非平衡状態を維持することが可能と予想される化合物を用いることで、新奇液滴を構築した。さらにこの液滴は、化学反応が進行することで駆動し、さらに駆動は反応を促進することが強く示唆された。本系では、反応と駆動はお互いに促進し合う。生成分子の選択性に基づく化学的な自触媒と異なり、この反応促進は駆動という分子集合体の物理的挙動により実現されることから、この過程は1種の物理的自触媒とみなすことができる。 また、液滴集団において、反応時間の長期化という集団効果が観測されたことから、本研究の自己駆動液滴がアクティブマターとして振る舞うことが期待される。 先行研究の分子集合体の振動現象は、外部の周期的な摂動で無理に振動させる強制振動か、ししおどしのように空間情報をつかうことで振動を誘発させるものがほとんどであった。しかし、本研究で構築した液滴は自ら構造を創発することで、振動運動を示す。このような自発性は、非平衡や非線形科学のみならず、生物のような非平衡下での機能創発を目指すsystems chemistryの分野にも重要な示唆を与える。 以上の事項から目的の3分の2近くを達成しているため、本研究は計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の実現を目指す。 ・局所的張力やpHの経時変化の追跡による振動機構の解明 ・駆動物質の生産を介した液滴相互作用による集団パターン形成、集団運動の創発 ・駆動物質生産と駆動物質構成成分の生成のカップリングによる増殖の実現 これらを段階的に行い、物理的自触媒で増殖するアクティブマターの創製を引き続き志向する。
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Report
(1 results)
Research Products
(16 results)