キラルブレンステッド酸触媒によるアルケンの不斉異性化反応の開発
Project/Area Number |
22K14672
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 33020:Synthetic organic chemistry-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 信弥 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (30873575)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 有機触媒 / 不斉触媒 / ブレンステッド酸 / 炭化水素 / 計算化学 / 異性化 |
Outline of Research at the Start |
エチレンやプロピレンをはじめとしたアルケンを含む炭化水素化合物群は非常に安価に手に入る石油化学基礎製品であり、それらの化合物を直截的に医薬品等の有用化合物へと変換する反応を開発することには大きな学術的・産業的意義がある。今回、申請者はキラルブレンステッド酸を有機分子触媒として用いることにより、ヘテロ原子を持たないアルケンの不斉異性化反応の開発を目指す。本反応のように単純な炭化水素を基質とするようなカルボカチオン性中間体を経る不斉反応はこれまで殆ど例がなく、本研究の大きな目的はカルボカチオン中間体に対する精密な分子認識を達成することにある。
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Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒によるアルケンの不斉異性化反応は産業的にも用いられる優れた反応だが、一般的に基質適用範囲として配位可能なヘテロ原子を必要とすることに加え、高価な希少金属を触媒として用いなければならないという問題があった。本研究ではキラルブレンステッド酸を有機分子触媒として用いることにより、ヘテロ原子を持たないアルケンの不斉異性化反応の開発を目指す。 本年度の研究としては、引き続きシクロヘキサノン誘導体を基質として用いてアルケンの異性化反応について検討を行った。しかしながら、中程度の選択性は得られるものの、それ以上の選択性を得ることはかなわなかった。その低選択性の原因を反応機構と照らし合わせて考察した結果、反応自体の律速段階は恐らくプロトン化である一方で、エナンチオ決定段階が恐らくその後の速い脱プロトン化の工程であり、エナンチオマー間でのエネルギー差が出にくいのが原因であると申請者は推測した。 そこで、律速段階であるプロトン化をエナンチオ決定段階とするように基質を再設計し、対称なシクロプロパンの不斉プロトン化反応を検討することとした。種々の検討の結果、幅広い基質で高いエナンチオ選択性を得ることに成功した。とりわけ、完全な飽和炭化水素化合物を基質として用いても高いエナンチオ選択性を示すような反応は過去に類を見ないため、本反応の新規性は極めて高いと考えられる。本反応については既に計算化学的手法を用いた詳細な反応機構解析も行い、それらを併せて投稿の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りの基質を用いた反応については達成できていないものの、反応機構と速度論を踏まえて基質を再設計することにより、アルケンのプロトン化ではなくアルカンのプロトン化を目指すこととした。アルケンの不斉プロトン化自体は既に報告例があるのに対し、アルカンの不斉プロトン化反応は未だ報告例がなく、本年度は提案課題の範囲内で、より挑戦的な目標へと転じたとも言える。しかしながら、種々の検討の結果、そのような未踏の課題を申請者は実験的に解決することに成功した。加えて、本反応における反応機構解析も計算化学的手法を用いることにより、その中間体や遷移状態も含めて提唱することに成功し、半世紀以上議論されてきた五配位のカルボニウム種の制御が鍵であることを提案するにいたった。本課題においては当初の計画以上の付加価値の高い反応を開発することに成功し、その解析も含めた論文の投稿まで終わっていることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題で提案した反応開発の主要な部分については既に投稿済みである。それゆえ、本年度はそのレビュアー対応を行い受理されるよう追加実験を行うことを主目的とする。具体的には更なる基質適用範囲の拡大、および更なる高選択性を持つ触媒の合成などの検討を行う。また開発した反応について国内外で発表を行うことで、その研究結果を広く周知することを目指す。加えて、位置選択性等の議論を含めた詳細な反応機構解析についても検討を行い、こちらも論文化することを目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(16 results)